エキストラ
掲載日:2019/07/27
緑色のさざ波が起こるたび、無意味な予感が押し寄せる。
体が浮かび上がりそうな青空。
だけど、置き去りにはできない主人公。
足下に描くのは、もて余した錆びた足枷。
緑色のさざ波が遠のくと、無秩序な希望が舞い降りる。
祝福の証のような青空。
だけど、書き換えることができない大団円。
頭上に描くのは、黄金色の長い髪。
存在しない波間を揺蕩うから、真昼の幽霊の名乗りを挙げる。
聞かれてはいけない言葉を絡めるから、主人公の台詞が消えていく。
幼少の思い出が血肉に変わるとき、主人公のいない物語が忘れ去られる。
青空のもとで繰り広げられる大団円。
枯れた海を泳ぎきれるなら、不恰好な暗号で最後に相応しい台詞を教えてあげる。
たった一人だけの被写体のその廻りには、その他大勢の主人公たちが完成を待ちわびている。
たった一人だけのエキストラ。
青い空と黒い影。
枯れた海に連れて行ってくれるなら、不都合な即興で大団円に相応しい思い出を作ってあげる。
たった一人だけの、帽子を目深に被ったエキストラ。




