ようやく来た戦士と貴婦人との面会
続きを投稿します。今回も楽しんで下さい。
コジローの冒険者ランクがアップしてから二週間が経った。
その間コジローは討伐任務や近くの町までの護衛任務などを行っていた。
屋台のソースや氷の補充はバモントに帰った際にその都度行うことで品切れを何とか食い止めることが出来ていた。
そんな生活を続けていると、ようやくダークエルフの村から派遣された戦士がバモントまでやって来た。
「コジロー様、ダークエルフの戦士リーファです。これからあなたの盾となれるよう努力する所存です」
「リーファ、そんなに気張ることは無いよ。これから仲良くしていこう」
「……は、はい。よろしくお願いします」
コジローの言葉に緊張が解け笑顔でそう言うリーファ。こうしてようやくコジローのパーティーメンバーが全員揃うこととなった。
そんな時宿屋にビーヴァのメイドクラレがやって来た。
「コジロー様、ビーヴァお嬢様がお呼びです。屋敷へ御越し下さい」
「例の件ですね。準備しますので少しだけ待って下さい」
パーティーメンバーに貴族と面会する旨を説明しつつ軽く身支度を整える。
準備が出来たのでクラレさんと共にオール邸に向かうことにした。
「お待たせしました」
「では、こちらへ」
促され馬車に乗りオール邸に着くと庭へと案内される。
緊張しているコジローにクラレが声を掛けた。
「あのお嬢様に気に入られたあなたです。他の貴族の方にも余程の事が無い限り悪い印象は与えないはずです」
そう言って緊張をほぐしてくれた。それを聞いたコジローは
(ゴミを見るような眼をしていたクラレさんが……優しい言葉を!!)
初対面からどんどん印象が変わるクラレに戸惑っていた。
そのおかげか緊張感はすっかり解けて無くなっていた。
庭園の中を進んで行くとテーブルを囲む三人の貴婦人がいた。
「ビーヴァ様、コジロー様をお連れしました」
「うむ、ご苦労なのじゃ」
「ビーヴァ様、お久しぶりです。そちらの二人が……」
「うむ、そうじゃ紹介しよう」
とビーヴァが紹介しようとした瞬間に一人の女性がコジローの前に歩み出る。
胸元を強調した青いドレスに身を包んだ金髪ロングヘアーの女性は無駄のない動きでコジローに礼をしてコジローに話しかける。
「コジロー様、漸くお会いすることが出来ましたわね。私はクレア・カスター、カスター家の次期当主となる女ですわ」
笑顔でそういう女性の美しさに見とれて反応が遅れるコジロー。目線が胸に行きそうになるのを堪えて視線を逸らすと何とか言葉を繋いだ。
「始めましてクレア様、コジローと申します。お会いできて嬉しいです」
そう言って頭を下げるコジロー。クレアは先程のコジローの反応を見つつ思いを巡らせていた。
(……この方あまり女性慣れしていませんわね。胸元を見ようとして視線を逸らす所も好感が持てますわ。)
女性に囲まれるようなパーティーを組んでいる情報を掴んでいたクレアは、コジローが誰彼構わず女性に手を出す男かどうかを気にしていた。さすがにそんな男をカスター家に迎えるわけにはいかなかったからだ。
「私もそう言っていただいて嬉しいですわ。今度是非カスター家に遊びに来てくださいな」
「ええ、機会が有れば必ず」
「きっとですわよ。でないとギルドに指定依頼をしてしまいますから……ね」
冗談とも本気とも取れる様なことを言うクレアにコジローは何と言って良いか戸惑う。
そこにビーヴァが助け舟を出す。
「クレアよ、コジローをいじめるでない。さて改めて紹介するぞ、コジローよこちらはドラン夫人じゃ。そなたと同じ迷い人らしいぞ」
「コジローさん、始めましてヨー・ドランよ。仲良くして下さいね」
「はい。宜しくお願いします」
ドラン夫人は小柄な印象の可愛らしい姿をしていた。こちらは黒のドレスを着ており、布地できっちりと肌を覆っている。コジローは早速質問してみた。
「ドラン夫人は迷い人とのことですが、何処からこっちに飛ばされたんですか?」
「私は日本旅行中に転移した特殊な例みたいです。実は台湾人なんですよ」
「そうだったんですか?地震の際に力になって戴き感謝してます」
そう言って東北出身者であるコジローは頭を下げる。対してドラン夫人は胸の前で手を左右に振った。
「いえいえ、私は大した力になれず当時も日本を気ままに旅行していただけですよ」
「そんなあなたの行動で元気付けられた人が必ず居た筈です。だからお礼を言わせてください」
「そう言っていただけると嬉しいですわ。これからも良い善意のリレーが行われると良いですわね」
二人の仲に温かな空気が流れる。逆に二人の会話について行けない二人は何のことかわからない。
ビーヴァが疑問に思ったことを聞いてみた。
「コジローよ、気になったのじゃが地震とはなんじゃ?」
「地面が激しく揺れる現象の事ですよ。あっちの世界では頻繁に起きていたんです」
コジローの説明にビーヴァやクレアは驚いた顔をする。
「それはなんじゃ、どこぞの輩に呪術で呪いでもかけられているのか?」
「足元が揺れる感覚がいまいち想像出来ませんわ。常に揺れ続けていますの?」
二人の疑問にコジローが答える。
「いえ呪術的なものは無く、火山のエネルギーや地面の起伏の影響で起きる現象ですね。なので常に揺れることは有りません」
なるべく簡単な説明をしようとしてこう言ったが、二人はそれでも納得できない様だった。
暗い話になりそうだったのでコジローはある提案をする。
「ビーヴァ様、この話はここまでにしましょう。気分を変える意味で皆さんに振る舞いたい料理があるんですが、厨房をお借りしてもよろしいですか?」
「それは構わんが……いったい何をする気なのじゃ?」
「実は屋台で出すつもりの新メニューの試食を皆さんにして頂こうと思いまして……」
コジローはかき氷だけではいずれ飽きられると考え、簡単に作れるメニューを追加しようと思っていた。
許可を貰って厨房に入り小麦粉、玉子に牛乳と砂糖を鍛冶ギルドで作ったボウルに入れて掻き混ぜる。
しっかりと混ぜ終わったら鍛冶ギルドで作った縁を厚くしたフライパンに油を引いて火加減を調整しつつ両面をふっくらと焼き上げていく。きつね色に焼き上がったそれを一枚づつ丁寧に皿に移して作ってある練乳やイチゴソースなどをかければパンケーキの出来上がりだ。
温かいうちに全員の元に持って行く。
ドラン夫人以外は驚いた様子でそれを見つめていた。
「まあ。パンケーキなんて久しぶりですわ」
ドラン夫人が嬉しそうにそう言う。ビーヴァが再びドラン夫人の言葉に反応する。
「この料理はパンケーキというのか?」
不思議そうに眺めているビーヴァとクレアにコジローは説明をしながら試食を促す。
「このパンケーキは小麦粉、牛乳、玉子、砂糖を使った生地にかき氷で使っているソースを合わせた物です。怪しい素材は使ってませんので食べてみて下さい。ナイフで切ってソースを付けながら食べるのがおすすめですよ」
ドラン夫人は慣れた様子で口を付け始め、ビーヴァとクレアは恐る恐るフォークを口に運ぶ。 口に入れた瞬間ビーヴァが叫んだ。
「な、なんじゃこれは……こんなに厚みがあるのに食感がふわふわではないか」
そう言いながら口に運ぶ勢いは止まらない。一方クレアはぶるぶると震えていた。
(口に合わなかったのかな? ……改良の余地ありか?)
そんなことを思いつつ感想を聞こうとクレアの前に立ち顔を傾けた直後クレアにがしっと顔を掴まれる。そしていきなり唇を奪われた。
クレアは貴族としての教育を受ける際に睦事に関する教育も受けていた。つまり経験が無くとも知識だけは豊富なのである。そして、その知識をフル動員した口撃がコジローを襲っていた。
混乱状態のまま成す術無く口内を蹂躙され続けていたコジローは、意識に靄が掛かったままそれを受け入れていた。
一方それを見ていたビーヴァ、ドラン夫人は唖然としていたが少しして正気に戻ると急いでクレアを注意する。
「クレアさんはしたないでしてよ」
「クレアお前はいったい何をしているのじゃ!!」
クレアに引きはがされ名残惜しそうにするクレア。コジローはまだボーっとしている。
(……駄目ですわ。この方を手放すなんて考えられない。待ってて下さいましね……私の旦那様。)
そう思いながらもクレアは弁明の言葉を口にする。
「このパンケーキがまさに衝撃的な味でしたので体で表現してみましたの。驚いたでしょう?」
「何じゃその理屈は。意味が分からんわ」
「クレアさん、貴族として次からは慎んで下さいましね」
そんなやり取りをしてその場は流れた。その間にコジローは漸く正気に戻った。
「とりあえず好評のようで何よりでした。機会がありましたらまた提供させて戴きますね」
その言葉にパンケーキを堪能したドラン夫人が言葉を返す。
「コジローさん、今度は私の領地にも遊びに来てくださいな。あちらの世界の話を出来る相手が欲しかったのよ」
「ええ、そうですね。こちらも初めて迷い人の方とお会いできて楽しかったです。近くに寄る機会が有れば立ち寄らせてもらいます」
「お待ちしていますわ」
こうして貴婦人との面会が無事に終わりコジローは笑顔で宿へと帰って行った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は修正作業に手間取りこの時間の投稿となりました。
PV回数が5000回を突破しました。投稿し始めて一か月しない内に達成できるとは思いませんでした。
皆さんのおかげです。これからも応援よろしくお願いします。
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