アイーダの行方と驚きの光景
続きを投稿します。今回も楽しんで下さい。
コジローはオール家に辿り着いた。直ぐに面会の取次ぎを頼み待つこと数分で応接室に通された。
ソファーに座って待とうかを迷っていると直ぐにビーヴァが現れる。
「コジロー緊急の用件とのことじゃが何があった?」
「ビーヴァ様、アイーダさんが貴族に連れていかれました。居場所を突き止めて欲しいんです。何とかできませんか?」
そう言って頭を下げるコジローに対してビーヴァが声を掛ける。
「コジロー頭を上げてくれ。コジローやアイーダは我にとっても大事な友人じゃ。その友人に手を出した貴族を我も黙って見過ごすようなことはせん」
ビーヴァのその言葉にコジローは安堵する。
その様子を見たビーヴァは軽く笑い、すぐさまメイドに指示を出した。
「クラレ情報を集めよ」
「はっ畏まりました」
クラレは素早い動きで目の前から消え、応接室はまた二人のみが残ることとなった。
長く感じる時間を紛らわせるようにコジローはビーヴァに話しかける。
「あのメイドはクラレさんと言うんですね」
「うむ、あれの父親が我が家に騎士として仕えておっての。わらわの警護も含めた優秀なメイドの一人じゃ」
そう言ってクラレを褒めるビーヴァ。そんなビーヴァの言葉にコジローは自分の認識を修正する。
(クラレさん。Sっ気たっぷりの変態と思ってごめんなさい。便りにさせてもらいます。)
そんな思いが通じたのかクラレが戻って来てビーヴァに耳打ちする。
「コジロー犯人が分かった」
「誰なんですか?」
「犯人の名前はチユー・ペット。ペット家の跡取りじゃ」
(貴族のボンボンか……駄菓子みたいな名前しやがって。もしも軽い気持ちでアイーダさんを弄んでいたなら……。)
コジローの背中に黒い炎が浮かぶ。
それを気配で感じ取ったビーヴァが緊張した様子で言葉を続ける。
「噴水広場から北西に向かった先に奴の別荘がある筈じゃ。我が領民に手を出したことを後悔させてやろうぞ」
そう言うビーヴァに対してコジローが手で制する。
「待って下さい。ここは俺一人で行きます。これ以上は迷惑をかけられません」
「じゃが友人のために力になりたいと思うのはいけない事なのか?」
そう言われてコジローは考えた後でこう提案する。
「それなら帰ってきた後で揉めるようなことが有った時にビーヴァ様に守って貰う様にします。それで構いませんか?」
「うむ。それならばこちらも文句はないぞ」
こうしてビーヴァに納得して貰えたコジローは急いでペット家の別荘に向かう。
ペット家に来たコジローは門番を弾き飛ばして中に突入する。騎士や冒険者が30人程度警護としている様子だったが、迷わず突き進みアイアンロッドで横薙ぎにして壁に激突させ気絶させたり肩に強烈な突きを放って骨折させがら無力化していく。
そうして一つの部屋の前に辿り着いた。待ち伏せを警戒してゆっくりと扉を開く。
「そこは多くの檻がある異様な空間だった。中にはパンダの獣人の娘・エルフの娘・ダークエルフの娘・村から連れて来られたと思わしき人間の娘に魔族の娘まで居る様だった」
(こんなに女性を檻に入れて自由を奪うなんて……。種族も手当たり次第じゃないか。)
激しい怒りに襲われながらアイーダが居ないことを確認しながら奥に進む。すると何か音が聞こえてくる。
(……何の音だ?)
疑問に思いつつゆっくりと歩みを進めて奥へと突き進む。更に音が大きく聞こえる様になってきていた。
(これは何かが激しく打ち付けられるような音……か?)
頭の中に嫌なイメージが流れ込み激しい警告音が木霊する。コジローが意を決して扉を少しずつ開き中を開けると衝撃の光景が広がっていた。
「早くあたしを此処から帰しておくれよ。さもないと痛い目を見るよ」
「ふん、貴族をなめるな。その言葉を後悔するよう心に刻み込んでくれる」
コジローはそーっと扉を閉めて呆然としたまま考え込む。目の前の光景が受け入れられなかったためだ。
(俺は確かアイーダさんを助けにここに乗り込んできたはずだ……。だが現実には)
コジローは最悪の状況ではなかったのに安堵したのだが現実は残酷だった。囚われのお姫様を救いに来たはずがお姫様が女王様状態だったのだ。
(……どうしてこうなった?)
コジローは額を押さえて天を仰いだ。
話は少し遡る。チユーはアイーダを別荘に連れて帰り、自慢のコレクションを見せながら新たに加わるであろう女の存在に気持ちが高ぶっていた。
(貴族の権力をもってすれば平民の女など簡単に屈服させられる。全く貴族様様だな。)
自らの生まれに感謝しこれから起こる光景に歓喜するチユー。一方そんなチユーが見せるコレクションの数々にアイーダは嫌悪感で目の前の男を見ることすら苦痛に感じる様になっていた。
(なんでこいつはこんなに奴隷のような女を檻で囲ってるんだい?貴族の考えることはとことん分からないね。)
アイーダがそんなことを考えていると二人は一番奥の部屋までやって来た。
ここはチユーが拷問や折檻をするために用意した部屋であり、多くの奴隷がアイーダの様に脅迫めいたやり口の後に心を折られてきた場所だった。チユーが話しかける。
「これからお前も私のコレクションの一部になって貰うぞ」
「そんなものにあたしがなると本気で思っているのかい?」
「なるしか無いのさ。店が営業できなくては困るだろう?」
「くっ、卑怯だよ」
「覚えておくと良い貴族にとって卑怯とは褒め言葉なのだよ」
(貴族社会は騙し合いと裏切りの連続なのだ。どこかで吐き出さねばこちらが狂ってしまう。)
チユーは子爵家という身分であり、多くの貴族の顔色を窺わなければならずストレスの捌け口を探していた。それが奴隷コレクションという行為に繋がっていたのだ。
「ではまずは動かないでもらおうか」
そう言うと動かないでいるアイーダの周りを回り体を舐める様に見回す。
そんなチユーの視線を受けたアイーダは嫌悪感をはっきり表情に現した。
(気持ち悪い男だね。吐き気がするよ。)
そんなアイーダをお構いなしにご機嫌なチユーが鞭を手に取った。そしてこうした様子でこう話しかける。
「今日はあそこにハーピーを見に行ったのだがな。代わりにお前を手に入れたわけだ。しかし、お前の男は無力だな。お前を助ける力も身分も持っていない」
その瞬間アイーダの体を激しい怒りが支配する。
(……こいつは今なんて言った。あたしの男が無力? 身分が無い? あたしが一生を捧げた男を馬鹿にしやがったのか……こんな男が。)
そんなアイーダの心の変化に気付かないチユーは他の奴隷たちにしてきたように鞭を激しく振り下ろす。
だがその一撃はアイーダに当たらずに空を切る。
「なっなんだとっ……!!」
エウノミアーに授かった能力アップをフルで使い素早く距離を詰めたアイーダが鞭を奪い取ると同時にチユーを蹴り飛ばす。
蹴りの衝撃に一瞬息が出来なくなり悶えているとアイーダが声を浴びせてきた。
「あんたは言っちゃいけないことを言ったよ。あたしが一生を捧げた男をあんたは激しく馬鹿にしたんだ。それを許すわけにはいかないよ」
「そんなこと知るかっ。とっとと鞭を返して平服しろっ。今なら平手打ちで許してやるぞ」
立場が分からずそんなことを言うチユーにアイーダが激しく鞭を振り下ろす。蛇のように撓った動きをした鞭がアイーダの腕の力をのせてチユーに襲い掛かった。
「あーーーーーーーーーーーー」
灼ける様な熱さを衝撃を受けた背中を中心に感じ悶えるがアイーダの攻めは終わらない。
「ほらほら、あたしの怒りはこんなもんじゃないんだ。もっと踊っておくれよ」
怒りに支配されているアイーダの攻めは止らない。再びチユーの悲鳴が木霊した。
「あーーーーーーーーーーーー。熱い。痛い。いい加減止めんか!!」
「あんたはあの檻に入ってる奴らに同じ様にしてきたのかい? ならせめてあたしの怒りが収まるまでは相手してもらうよ」
「ぎゃーーーーーーーーーーーー」
そうして三十分、一時間と時間が経つにつれてチユーに変化が起こり始める。
(感覚が麻痺してきて痛みが心地良くなって来た気がする。だが貴族の誇りにかけてこの女に屈する訳にはいかん。)
そう思いアイーダを挑発する。
「お前がそこまで思う男は今頃ハーピーと甘いひと時を過ごしているのだろうな。悲しい女だ」
鎮火しかけたアイーダの怒りに再び燃料が投下された。
「あんたにコジローの何が分かるのさ。あいつはあたしを抱きしめて誓ってくれたんだ。家を持って暮らすまでそういう行為は控えるってね。そんな男だからこそあたしは一生付いて行くって決めたんだ」
そして更に一時間鞭を浴び続けたチユーは
「……もっとよこせ。もっと刺激を。はやく鞭を」
完全に新たな扉が開いたチユー。逆にその姿を見てアイーダはドン引きしていた。
(こいつ何幸せそうに笑みを浮かべてるんだい? ……ほんと気持ち悪いよ。)
そうして鞭を求めるチユーとそれに呆れるアイーダのやり取りの中にコジローが駆け付けたのだった。
コジローは額を押さえて現実逃避していたが状況に変化が無いので、意を決して女王様を迎えに行く決意をした。今度は勢い良く扉を開ける。
「アイーダさん無事ですか?」
(我ながらちょっとわざとらしいかな?)
そう思っていたのだがアイーダの反応は違った。それはそうだろう。自分の愛する男が単独で自分を救いに乗り込んで来てくれたのだ。アイーダの女としての名誉と幸福感は最高潮を迎えた。
「コジロー、私は無事だよ。会いたかった」
その言葉を聞いたコジローは直ぐにアイーダを優しく抱きしめる。
一瞬うっとりとするアイーダ。しかし、チユーがコジローを馬鹿にしていたのを思い出すと怒りが込み上げて
「そら見な!! あたしの愛した男はあたしを助けるために単独で乗り込んでくる男さ。あんたみたいな男に推し量れる器じゃないんだよ」
そう言ってチユーに対して鞭の一撃を放つ。
「あひん。ありがとうございます」
平民に鞭の一撃を食らうという貴族にとって屈辱的な行為も今のチユーには魅惑的な行為として変化していた。
そんなチユーにコジローは憐れみの視線を向けながらアイーダに話しかける。
「アイーダさん、聞いてください。ボーダーとしての役割もあります。ここに囚われている人を開放したいので力を貸して貰えますか?」
愛する男の頼みを断るアイーダではない。まして今のアイーダは幸福度100%なのだから。
「ほらクズ!! とっとと檻の鍵を出しな!!」
「貴様、貴族に対して……」
「良いのかい? 鞭をあげないよ」
「く……屈辱だ」
言葉だけは強気なのだが……机の引き出しを漁りながら時折こちらを振り返り笑みを浮かべるチユー。
(……この人はもう元には戻れないだろうな。)
そんな確信に近い感覚に襲われながら鍵が見つかるのを待つ。
やがて檻の鍵が見つかるとコジローは全員の肩に触れてディーケから授かった解呪スキルを発動させる。
すると奴隷状態になっていた人を全員解除出来た。
チユーもアイーダからご褒美を貰うと満足そうに気絶する。
チユーが気絶している隙にコジローは奴隷だった女性たちを全員引き連れて宿屋に戻る決断をする。
こうして今回の騒動は一人の犠牲? の元に無事に解決するのだった。
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