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商人護衛と初めての野営

続きを投稿します。今回も楽しんで下さい。

 顔見せが終わった翌日の朝、レーヌ村の入口に全員が集まったのを確認してラウールが声を掛ける。


「そろそろ出るとしようか。バモントまでよろしく頼む」


 馬車の両脇を二人が守り、馬車の前方と後方を中から二人が見張る様なスタイルで護衛する。

 御者が護衛の速度に合わせて馬車の足を進める。

 先ずはコジローとアイーダが馬車の中での護衛となり、緊張感を持ちながら周囲に目を配っていると誰かがコジローの手を握ってくる。振り返ってみるとハモンがすぐ隣に座っていた。


「坊や。そんなに気を張っていたらだめよ。いざという時に動けなくなるわ」

「実は護衛任務は今回初めてなんですよ」

「何事も初めては緊張するものよ。なにごとも……ね」


 そう言うと、意味有り気にコジローの(あご)を触り鎖骨の下あたりで人差し指でのの字を描くように(くすぐ)る様な仕草をする。

 こんなハモンの過剰なスキンシップにドギマギしながらコジローは何とか言葉を絞り出す。


「からかわないでください」

「あら残念。でも緊張は取れたでしょう?」


 そう言うとハモンはウインクをしてコジローから離れて元の場所に戻り休む。

 その後は特にこれといった異常は無く、その日の夜を迎える。

 ホフマンがパンをスープに浸し食べながら話し始める。


「しかし、野宿の時のパンって硬いよな? スープが無きゃ食べづらくてしょうがないぜ」

「けど、硬くなるまで水分を飛ばさないとすぐにカビて保存が効かないと思うぞ」


 コジローの言葉にハモンがすぐに反応する。


「あら、坊やはパンを作ったことがあるのかしら? 詳しいのね」

「好きの物好きでたまに焼かせて貰う位ですよ」


(思わず口にしてたけど今現代の知識を広めすぎると色々トラブルになりそうだな。)


 ハモンの思わぬ切り返しを思い付きでかわしてその場はうまく誤魔化す。

 その後は火の番をしながら二人づつ交代して眠りにつき、一日目は無事に終わることになった。


 日が昇ってくるのを合図に二日目の移動を開始する。

 昨日と逆で今日はコジローとアイーダが馬車の左右を固めることとなった。

 順調に進み続けているため日がちょうど真上にある頃に、食事休憩を取ることとなった。メニューは干し肉と温めたスープだった。和やかな空気の中食事を楽しむ。




 そんな食事を楽しむ煙を発見し、動き始める三つの影があった。


「デニム隊長、煙が見えるぜ」

「よし、距離を保ったまま後を付けるぞ。ジーン、スレンダ-付いて来い」

「了解」「了解」


 三人は気付かれないように一定の距離を取りつつ後を付けた。



 夜になり、今日もパンとスープの食事を楽しむ。

 ムードメーカーに成りつつあるホフマンが最初に声を上げた。


「いやー順調に行き過ぎてなんか怖いな。ひょっとして俺って持ってる?」

「何言ってるんにゃ。お前が持ってる男ならあたしはこんな苦労はしてないにゃ」


 浮かれたホフマンを冷静に突っ込み食事を楽しむ二人。

 そんな二人のやり取りに空気が和む。

 そんな気心の知れたやり取りにコジローは気になったことを口にした。


「ホフマンとニヤーさんはパーティーを組んでどのくらいになるんですか?」

「ちょっと待て。なんで俺は呼び捨てでニヤーはさん付けなんだよ」


 少し納得がいかない様子でホフマンが聞いてくる。コジローは冷静に答える。


「そればっかりはしょうがない。ニヤーさんは女性だし。何より話しやすいようにホフマンが最初の会話でハードルを下げてくれただろ? それで気軽に話しかけていい奴だって判断したんだよ。そっちも狙ってたろ?」


 試すように聞いてみるとホフマンも笑顔で返す。


「なかなか見ているな。気に入ったぜ。バモントで困ったときは声を掛けてくれ」

「ああ。頼りにさせてもらうよ」


 ホフマンと熱い握手を交わし、コジローはこの世界で最初の友人が出来た喜びを噛み締めていた。呆れた様子でニヤーが話しかける。


「男同士の友情はそれくらいで良いかにゃ。ニヤーがこいつと組むことになって二年ぐらいになるかにゃー。大森林から腕試しに旅を続けているうちにバモントに来てそのまま居ついちゃった感じにゃ」

「そうそう。こいつ来た当時は誰彼構わずに突っかかっていく奴でさ。一緒に戦ったり一緒に殴り倒されたりしてるうちに何となくコンビになってそのままかな」

「ふーん。やっぱりそういう積み重ねが大事なんだな」

「俺たちのこともいいけどそっちはどうなんだよ」

「俺とアイーダさん? パートナーとしてはまだ全然浅いよ。これからってところかな」

「そうさ。あたしたちはこれから……なのさ」


 焚き火の炎で顔が赤くなっているのが分かりづらいが見る人が見れば分かるのだろう。だがコジローやホフマンからは遠い位置のためそれは分からなかった。


「そうか、まあアイーダさんは通り名を持つぐらい優秀な冒険者だからしっかり経験を積ませてもらえば早く成長できると思うぜ」

「そうなるように頑張るよ」


 食事が終わると一日目の様に交代で眠り、護衛は火の番もしながら時を過ごす。

 今回コジローは先に眠る順番となった。眠れずにごろごろしていると、同じように眠れなかったのかハモンが近付いて来た。


「坊やも眠れないのかい?」

「はい。何か目が冴えちゃって」

「ふふ、なら子守唄でも歌ってやろうか?」


 そう言うとハモンは足を崩して膝枕を促すようにコジローの方に傾ける。恥ずかしがるコジローの手を引くと膝の上に倒れこませる。


「いいから。私たちを守ってくれるんでしょう? 少しでも休んでもらわないとね」

「分かりました。甘えさせて貰いますね」


 コジローはそう言ってゆっくり(まぶた)を閉じる。やがてコジローから寝息が聞こえ始めてハモンは笑顔を浮かべる。そして起こさない様に膝をずらすと、外套(がいとう)を畳みコジローの首の下へ滑らせた後に唇へお休みのキスをしてその場を後にするのだった。


 夜が更けてコジローが見張りに立ったころ三人組に動きがみられる。


「隊長、あいつら商人みたいだ。護衛も優男に女だし、夜で多くが眠りについてる。やるなら今だぜ」

「止せ、ジーン。俺たちの任務は偵察だ。偵察が上手くいけばそれで充分報酬が貰える」

「あんたは保守的だ。そんなんじゃ何時まで経ってもでっかく儲けることはできないんだよ」


 そう叫ぶとジーンが一人でコジローのいるところへ奇襲をかけるため走り出す。


「止せ。ジーン」


 慌てて叫ぶがジーンは止らない。慌てたスレンダーが指示を仰ぐ。


「隊長、どうします」

「仕方がない。俺もジーンを連れ戻すために突っ込む。スレンダーはここで待機して俺たちが戻れないと判断したら逃げろ。その場合はこの馬車を狙うことは避ける様に言い含めろ」

「分かりました。お気を付けて」


 デニムは部隊の全滅という最悪を避ける選択をして、仲間を助けるためにジーンの後を追った。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

読み返したりして修正するする作業で時間を取られてしまう今日この頃です。

ご意見・ご感想もお待ちしています。

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