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Fランク異能力者だった俺が異世界でSSSランク認定された  作者: 結城 からく


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第50話 終結

「あー……さすがにもう疲れ――」


 俺はぼやきの途中で勢いよく吐血する。

 加えて全身の激痛が猛威を振るう。


 骨が砕けた感覚が走った。

 俺は堪らず呻く。

 痛みで転げ回りそうになるも、壊れた壁から落下しそうなので耐えた。

 このままクジョウと同じ末路を辿るのはさすがに笑えない。


 俺はすぐさま発現中の異能力を残らず解除した。

 それだけで随分と楽になる。

 深々と息を吐いた俺は、外の景色を望む。

 城内の騒動など無縁のように、澄んだ青空がどこまでも広がっていた。


(まったく、我ながら随分と派手にやったな……)


 異世界に来てから様々な重傷を負ってきたが、ここまで酷いのも滅多になかった。

 再生能力と拮抗する損壊スピードって、割と洒落にならないね。

 とは言え、死に至るほどじゃないのは感覚で分かる。

 いつもみたいに数秒で全快というわけにはいかないが、しばらく安静にしていれば問題なく行動できそうだった。

 念のためにステータスを確認してみても、変な状態異常などは見られない。


「スドウさん、大丈夫ですか!?」


 ぼんやりと外を眺めていると、シルエが駆け寄ってきた。

 彼女は横になった俺のそばに寄り添って、外傷の有無を診てくれる。


 真剣な表情のシルエは、顔色があまり良くない。

 これといった怪我はないものの、MPが枯渇寸前まで減っていた。

 クジョウとの戦いであれだけ魔法を連発していたのだ。

 本当なら疲弊して休みたいに違いない。

 それにも関わらず、真っ先に俺の心配をしてくれる優しさには感謝せざるを得なかった。


「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」


 俺は上体を起こして礼を言う。

 軋む筋肉を無視して笑みを作った。


 正直、今すぐにでも寝たい。

 だけどまだやることが残っている。

 此度の騒動の原因であるタウラとクジョウが死んだからといって、すべてが解決することもないのだ。

 むしろここからが本番と言えよう。


 やるべき仕事に備えて、俺とシルエは少しだけ休息を取ることにした。

 二人で並んで壁に寄りかかる。

 動けるようになったら、仕事に取り掛かるつもりだ。

 無論、誰かが襲撃してくる可能性もあるので気は抜かない。


 肉体の回復を待つ間、ステータスをチェックすることにした。

 クジョウとの死闘を経て、称号欄にいくつもの見慣れないものが増えているのだ。


 まず目に付いたのは【SSSランク異能力者】の文字。

 効果がちょっと変わっており、異能力者との戦闘でのみ能力値に大きな補正がかかるらしい。

 かなり限定的だが、それだけ効力も高いものと思われる。


 最後にクジョウに告げた"自称SSSランク宣言"が取得のきっかけになったのだろうが、あれはもちろん本気で言ったわけじゃない。

 あれは意趣返しというか皮肉のつもりだった。

 結局は他人の異能力をフルで使った上で辛勝したような有様だったし、とてもSSSランクなんて名乗れない。


 それでもこの称号を拒否する術などなく、役に立ちそうなので受け入れることにした。

 一種の勲章と思っておこう。

 この称号に恥じない行動を心掛けねば。


 次に気になるのが【救国の勇者】だ。

 なかなか大層な名称だが、俺のやったこととは符合するのか。

 国を乗っ取った異能力者を打倒したのだし。


 こちらの効果は非常にシンプルで、純粋に全能力をアップしてくれるそうだ。

 さらに何かを救う際に追加で補正がかかる。

 言うまでもなく強力な称号だろう。


 代わりに【陰の勇者】が消えていた。

 勇者称号は一人につき一つと決まっているのだろうか。

 よく分からないが、上位互換の称号がゲットできたのでさしたる問題ではない。

 始まりが【仮初の勇者】だったことを考えると、結構な出世と言えるのではないだろうか。


 他にもスピードを劇的に上げてくれる【電光石火】に、竜を素材とした武具に性能補正を施す【竜骸戦士】や、鎮圧行動の成功率を上げる【動乱を鎮めし者】など、有用そうな新規称号ばかりが目白押しだった。

 身体を張った甲斐はあったようだ。


 一方、シルエの称号欄もすごいことになっていた。


 幻影魔法の性能を大幅アップさせる【翻弄者】は、クジョウを相手に超絶的な回避を連発したからだろう。

 相性最悪の敵なのに、よくもあそこまでの立ち回れたものである。

 一歩間違えれば即死という状況でも発揮された判断力は、まさしく尊敬に値する。


 【動乱を鎮めし者】は俺と同様のものだ。

 彼女も最終決戦まで同行して戦ってくれたのだから、取得していることに驚きはない。

 【平和を愛する者】も似たような効果だった。

 シルエな真摯な想いが取得に繋がったのだろう。

 俺も平和は好きなんだけどね。

 気持ちが足りなかったか。


 ラストの【救国の魔術師】は、俺の【救国の勇者】の亜種みたいだ。

 効果はほとんど一緒で、能力アップの内訳が魔法使い寄りになっているのが違いである。

 割と前から無双状態だったシルエが、これによってさらに強くなってしまった。

 純粋な戦闘能力は、俺よりもよほど高いのではないだろうか。

 とにかく頼もしすぎる仲間である。


「さて、そろそろ大丈夫かな……」


 休憩を始めて数分。

 俺は慎重に立ち上がる。


 手足を動かしてみて、問題なく行動できるのを確認する。

 まだ軽い筋肉痛のような違和感はあるものの、ピーク時よりは遥かにマシだった。


 シルエも体調が改善した様子だ。

 顔色も良くなっている。

 様々な称号や高い能力値によって魔力の回復速度も上がっているようだ。


 これならば、そこらの兵士が殺到しようが十分に対処できるだろう。

 たとえ高ランクの異能力者が来ても、俺には【SSSランク異能力者】があった。

 身体能力で圧倒できる。

 シルエのサポートもあるのだから不安なんて皆無だ。


「さっさと後始末をつけに行こうか」


「はい!」


 俺はシルエを促して広間の外へと向かう。


 その後、シルエの魔力感知により、幽閉された国王と有力貴族を発見した。

 やはりと言うべきか、彼らは狭い部屋で奴隷のように拘束されていた。

 外面では国王の協力するというスタンスのタウラだったが、裏ではやはり主従関係が逆転していたようである。


 そこからは実にスピーディーに事が進んだ。

 タウラの死で洗脳が解けた国王に事情を説明して、拡声の魔法による一喝で城内の騒ぎを止めてもらった。

 自らの意思でクーデターに加担していた異能力者も、大多数が敗北を悟って投降した。

 極一部の諦めの悪い連中が暴れ出したり逃げ出そうとしたが、そいつらは俺とシルエの手でまとめて捕縛させてもらった。

 クジョウとの戦いに比べれば、簡単な仕事である。


 ――こうして俺たちは、異能力者に支配された王国を救い出した。

本作はあと数話で完結いたします。

最後までよろしくお願い致します。

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