表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/23

⑦鍋

「あああ、しみるううう…………」

麻理恵は鬼たちの振舞ってくれた鍋のうまさに、思わず声をあげた。

 その海鮮鍋が最高に美味だったのは、もちろんのことだが、何より生まれてきてから今までで、こんなに空腹になったこともなかった。

 鬼たちは親切だった。村人たちよりはるかに。特に、あとから走ってきた青鬼は、気を失った祐奈を介抱してくれて、自分たちの家のベッドらしきものまで運び、寝かせてくれた。そして今も、ベッドに横になっている祐奈に、鍋の中身を小分けにして持って行ってくれている。

「…………んじゃ、ほんとに、俺たちを懲らしめに来たんじゃないんだな。」赤鬼が確認するように言った。

「ほんなころないれす、らいいち、あらしらち、へふらひゃないれすかあ(そんなことないです、だいいち、あたしたちてぶらじゃないですか)」

 麻理恵は鍋の具を口いっぱいにほおばりながら答えた。

 男子二人はまだ鬼達に出会った時の恐怖が去っていないようで、もくもくと具材を口に運んでいた。

 赤鬼は麻理恵の答えに納得したようで、「ま…………喰え。どんどん、喰え」そう言って立ち上がりながら司の肩を、「悪かったな、乱暴して」と言いながらたたいた。

 司は本当に漫画のように飛び上がり、その拍子にむせてしまった。

 その様子に、「ちょっと大丈夫? 」「大丈夫か、おい? 」とみんなで声を掛け合いながら笑った。

 笑いながら麻理恵は、笑ったことで、ずっと張りつめていた緊張の糸が切れてしまい、どっと疲れを感じ、安心した一方で、不安で、切なく、そして悲しくて、皆に気づかれぬように、そっとため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ