⑤登場
縛り上げられたままその夜をすごし、翌朝、「起きろ! 」という乱暴な声に目を覚ますと、昨日の村人たちの、その中でも屈強な体つきの男たちがすでに小屋に入り込み、四人を取り囲んでいた。四人は不自由な姿勢を続けたための体の痛みやしびれを感じながらも、なんとか、しばられたままで身を起こした。男たちは四人を手漕ぎの船に押し込み、海に漕ぎだした。そして船を対岸の島につけ、そこに放り込むとまた船に乗り込み、帰っていった。縄はほどいてくれたが、ほかは何にも持たせてくれなかった。
「手首しびれれてるよ、ひっでええ…………」みんな体がガチガチでほぐすのにしばらく時間がかかった。
「無人島かな…………」拓斗が言った。
「…………どうしようか、これから」麻理恵が言った。
しばらく間をおいて司が、
「とりあえず、向こうの森に何か食べ物無いか探してくるよ。何か、木の実とかあるかもしれないから。昨日干し柿もらったろ、柿の木か何かあればいいんだけど」
そうだな、と拓斗もつぶやいて男子二人は立ち上がった。周りの様子から、何となくだが、今は秋なのだと四人は悟っていた。季節は変わっていないようだった。秋ならば確かに、木の実のようなものが見つけられるかもしれない。
「女子、ここにいてよ。二人でちょっとその辺、見てくるから」
その後ろ姿に、たのもしー、ありがとう、と麻理恵は声をかけた。
麻理恵は祐奈と二人になると祐奈に向き合い、
「大丈夫? 」と声をかけた。
「はい、大丈夫です」と祐奈は小さな声で答えた。
麻理恵は、
「大変なことになっちゃったねえ」と海を見ながらつぶやいた。
麻理恵はしゃべり続けた。
「でも、変だよね、あたしたちみんなバラバラな場所にいたのに、何でここに集まっちゃったのかな」
麻理恵は裕奈が黙り込んだままであることも意に介さず、
「本当に死んだのかな。あたしたち」と言った。
そして、波が寄せては返す海を見ながら、
「毎日前に進んでいくだけだと、思っていたのに。昨日の続きが今日もあって、明日もあって、ずっと続いていくだけだと思っていたのに…………」と続けた。すると、
「私、そんなの嫌です! 」思いがけず祐奈が強い口調で言った。
「嫌だ、そんなの。昨日の続きが今日もあるなんて。ずっと続くなんて…………」驚いて祐奈を見ると泣いていた。
「中山さん…………。ごめん…………。泣かすつもりじゃ…………。ごめん」
何とか麻理恵が祐奈をなだめようとしているその時、森に食料を探しに行った司と拓斗が戻ってきた。
二人の二倍ほどの体格の、いや、縦と横とが二倍×二倍、つまり…………はるかに二人よりでかくて、ガタイのいい…………鬼、二人に、それぞれ首根っこをつかまれて。