表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/23

⑮帰還

 10月6日 午前7時。

 気が付くと麻理恵は自分の部屋にいた。制服を着たままだった。

 机の上の時計を見ると日付はあの日、事故にあった日の、午前7時に戻っていた。

 

 今日は10月と思えないほど朝から暑い一日となりそうだった。


 7時半。

 麻理恵は家を出ていつもの通学路を歩いた。あの日と同じように、いつもより少し早い時間に。スマホは見ないことにした。

 あの日、事故にあった道に差し掛かった。道路の端に寄り、緊張で体を固くしてながらもトラックをやり過ごし、無事学校につくことができた。

 麻理恵は胸を躍らせた。『やった、やった! あたしは危機を乗り越えた! 命の危険を通り超えた! 』と。

 だが、ふと何か大切なことを忘れているような気がした。なんだろうこの胸騒ぎは?


 麻理恵は横を追い抜いて行く顔見知りの生徒に「おはよう! 」と声をかけられても気づかないほど、その不安感の正体をつかもうと考え込んでいた。

 …………なんだろう、なんだろう、なんだろう……………。


そして、それは突然降りてきた。

 …………祐奈。祐奈!

 麻理恵は走り出した。校内にいるはずの司を探すために。



 10月6日午前7時。

 拓斗はサッカーの試合のために行っていた遠征先のホテルのベッドの上で目を覚ました。

 ロビーに向かい、朝練のランニングのため集まっているほかの部員に合流した。

 その中の一人が訊いた。

「先輩、なんでランニングなのにボールもってくんですか? 」


 7時半。川沿いを全員で走っていた。叫びが聞こえた。

「誰か、誰か、助けてください! 」

 拓斗はネットに入れて持っていたサッカーボールの塊を川に投げ入れ、浮として使い、男の子の命を救った。


 10月6日 午前7時。

 気が付くと司は学校の屋上にいた、いつものように。

そしていつもと違っているのは、いつもならそこにはいない、一年生らしい女子の集団が、輪になってバレーボールを打ち合っていることだった。司は場所を移動した。

7時半。「アターック! 」という声が聞こえ、そのあとに「もーう、愛理ぃぃ」「あーあ、ボール、下まで落ちちゃった」「誰か下にいない? 」「当たってたら大変だよ」「…………大丈夫みたい」という会話が聞こえてきた。

 司は胸をなでおろした、危機は脱した。

 司は、胸の動悸とうまくやり遂げたことによる高揚感を感じながら、しばらくそこに佇んだ後、ゆっくりと、屋上を後にし、階段を下りて校舎の二階の自分の教室へ向かっていった。

 そして教室にたどり着き、扉を開けると、 

「司! 」血相を変え、息を切らしながら、司を探して校内をかけまわって来た麻理恵がそこにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ