⑬小屋へ
「いつもならもっと真夜中近くなんだが」
この闇夜の中、どこから現れたのか、気が付いたら麻理恵たちの隣に来ていたレンラが言った。
そして祐奈に「じゃあ、前に頼んだ通りにやって」と言ってまた闇夜に消えていった。
「頼んだ通りって? 」と状況が呑み込めない麻理恵が祐奈に問うと、祐奈は、
「以前レンラに相談されたことがあって。私たち四人はとにかく夜目が利かないから、もし今度村からの襲撃があったら、間違いなくやられてしまう。その時は、みんなを連れてある場所へ逃げ込んで欲しいって頼まれていたの」と明かした。
その言葉に麻理恵は少なからずショックを受けていた。
確かに四人は暗がりが苦手で、日が落ちると作業どころか、歩く足元もおぼつかないところがあった。明るさに慣れすぎた現代人の宿命かもしれない。命がけで村人と戦う鬼達にとっては足手まといになるだけなのだ。
だが、今、麻理恵がショックを受けたのは別の点だった。
それは、なぜ、みんなを守る役目が、一番弱弱しい祐奈に託され、自分は蚊帳の外だったのだろう、ということだった。
麻理恵は首を振ってその考えを追い払った。今はそんなこと考えている暇はない、司と拓斗を探さねば。
司と拓斗はいつもの寝場所の洞穴にいた。村人が襲ってきた事を話すと拓斗は、俺も戦うよと言ったが、言ったそばから、足元の石が見えずに転んだ。
「今回は任せよう。俺たちは足手まといだよ」司が言って、祐奈にみんなでついていくことにした。
場所を知っているからだけではなく、祐奈は四人の中では比較的暗がりでも物を見ることができるので、先導してもらうことになった。
薄暗がりの中、つまずいたり転んだりしながら森の中を進んだ。麻理恵と祐奈は鬼たちに借りた着物を羽織っていた。
森の真ん中あたりだろうか。暗がりの中、闇に慣れてきた目に、小屋のようなものが見えてきた。
「この中に入れば絶対安全だって言ってました」と祐奈が言った。そして扉を開けた。