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ショートコント・サーガ

作者: 特ルリ

「そして、誰かがあなたの事をきっと思い出してくれるでしょう」


普段版権ギャグSSばかり書いている人が近年主流になっている「異世界転生・転移」風にチャレンジしてみようとした書きたい事だけ書いた1回完結エセ「なろう系」なケモノ+人間コントSSでございます。こんなものでよろしければ短いですが片手間にレベル上げでもしながらお読みいただければ幸いです。 今回も、見てくださった全ての方に感謝を!ありがとうございます…… もしよろしければ、感想などいただければ幸いです。

※同名小説を同内容でpixiv小説にもアップロードさせていただいております。宜しければそちらもご覧ください



第一章目覚めし勇者


精霊:「目覚めなさい……目覚めなさい勇者よ」

勇者:「……?!何だこの格好、それにここは一体?!」

精霊:「やっと目覚めましたね……私は守護の精霊、ペガサスです」

勇者:「何だ夢か……馬が喋ってるし夢だな」

精霊:「いいえ、夢ではありません……私の顔をよく見るのです」

勇者:「お前鼻息凄いな?!いや馬だもんな、当たり前か!……って、このリアルな毛並みと馬にあるまじき白い翼……夢じゃないってことか?」

ペガサス:「その通りです。あなたはこの世界を救うために別の世界「地球」より呼び出されし戦士なのです……」

勇者:「……あれか、今流行の異世界転生ものか」

ペガサス:「あなたが為すべきことは4つ。ひとつは……」

勇者:「待て待て待て、どんどん話を進めんなこっちの話も聞け!……んで、異世界っていうのが現実にあるとしてなんで呼ばれたのが俺なんだ」

ペガサス:「あなたが選ばれし理由ですか?それは、大いなる罪を顧みず善行を積むことが出来た人間だからです」

勇者:「なんだよ「大いなる罪」って……俺が何したって言うんだよ地球で」

ペガサス:「あなたはかつてお腹を空かせていた野生の犬にえさを与えました。それは道義的には正しいですがいたずらに野良犬を増やしてしまう故に社会では許されないこと……それこそがあなたの「大いなる罪」、そして善行なのです」

勇者:「ちっちぇえ!いや確かに悪いことだとはわかってたよ、でも可哀そうだったから!」

ペガサス:「罪を背負ってでも誰かを救える、そんな勇気を持つ勇者の到来を私はずっと待っていました……」

勇者:「いやいっぱいいるわ!探せば子供とかそこら中にいるわ同じことしてる奴!なんで俺なんだよ」

ペガサス:「あなたが為すべきことは4つ……」

勇者:「いや無視すんな!……で、何なんだその四つは、魔王討伐とか世界を災害から救うとか異世界転生でよくあるものか」

ペガサス:「ひとつは世界に散らばるあなたの仲間3人を探すこと。もうひとつは人間の知識をこの世界に伝える事。そして最後に、動物を助けることです」

勇者:「まだ動物ひっぱるのか?!いや大いなる罪なんだろ、やっちゃいけないじゃねえか!」

ペガサス:「さあ、旅立つのです勇者ヤマダ!私はあなたをいつも見守っていますよ」

勇者:「俺サトウだから!名前も分からず呼ぶな!」

ペガサス:「その名前はこの世界の人間に発音不能なのです……ゆえに真名を知られることもなく、ほぼあらゆる魔術からその身を守られます」

サトウ:「しょぼい理由で凄い守りが得られた?!どうなってんだこの世界は?!」


第二章 狐の巫女と凶星

勇者:「……でもフィクションの異世界転生ものっていったらなんせハーレムものが多いらしいし、これが現実なら女っ気が全くなかった俺にも運が向いてきたかもな……」

狐:「コンコン、そこの旅のお方!どうか私たちの里をお助けください!」

勇者:「(キツネを助けると恩返しに人間になって旅についてきてくれるパターンかな?)ま、任せてください!俺がこの勇者の槍で」

狐:「このままでは天から降る隕石で里は崩壊です!どうか元凶たる凶星を鎮めてくれないでしょうか……?」

ペガサス:「勇者よ、あの空に浮かぶ要塞に乗り込むのです……そして動力源を潰せばこの里は救われます、さあこのジェット機で!」

勇者:「ジェット機?!なんでジェット機があるんだよ操縦できねえよ!」


狐:「里の皆も大変感謝しています!まさかあの星を滅ぼしてしまうことが出来る人間が本当にいたなんて!」

勇者:「……おい、ミサイル一発で乗り込む必要もなくきょうせいとやらを壊せたのはどういうことだ、異世界転生によくあるちょろい世界の危機かそうなのか」

ペガサス:「あのミサイルは聖なる勇者の槍と同じ力を持つもの……罪を背負う勇者のあなただからこそ使いこなせたのです」

勇者:「それってその辺の犬猫にえさやった子供でも使えるってことじゃねえか!どういうことだよ!」

ペガサス:「この世界にあなたの世界でいう犬や猫はいません」

勇者:「そんな理由で異世界から呼んだのか?!」

狐:「……勇者様は全能の主神ペガサス様のご加護を受けており、世界をより良くするために人間の知識を伝える旅をなさっていると昨晩夢枕に立たれたペガサス様よりお聞きしました……」

勇者:「おいお前盛ってるだろ自分の信者にだいぶ設定」

ペガサス:「さて勇者よ、彼女の話をよく聞くのです」

勇者:「ごまかすなよ!……まあいいか、彼女ってことはあれだろヒロインなんだろこの子が……どんな女の子に化け」

狐:「私は優狐族の巫女、リオスと申します。種族は違えどその志に私は心を打たれました、どうか勇者様の旅にご一緒させてください!」

勇者:「狐のまま仲間になった?!いやかわいい女の子だけどかわいいの意味が違う!俺ケモナーじゃないしケモノ興味ない!」

リオス:「私は癒しと料理の力に長けております、旅の途中傷つくようなことがあっても必ず勇者様を守ってみせますわ!」


幕間

勇者:「……四足歩行の巫女服ってどうやって着てるんだ?」

リオス:「こうやって布に念を込めますと……この通りでございます!」

勇者:「服がただの葉っぱ1枚になった?!それやるのむしろタヌキじゃねえのか?!」

リオス:「勇者様にであれば私は裸体を見られようとかまいません……これから辛苦を共にする殿方なのですから……」

勇者:「毛皮あるのに裸になるのが恥ずかしいのか?!と、とりあえず俺後ろ向いてるから早く着てくれ!」



第三章 魔王フラール 

謎の商人:「おや、これはこれは狐の里の巫女様……と旅人らしきお方、お揃いでどこかにおでかけですか?」

勇者:「(町で船を手に入れると聞いてついて来たけど船着き場で本当にタヌキが出てきたよ……なんだよこの世界ケモノばっかりなのか)」

リオス:「……時は来ました!魔王よ、今こそ私たちの決着をつける時です!」

魔王:「……!……ふむ、その時が来たのだな……よかろう、かかってくるがよい巫女よ!」

勇者:「えっ」

リオス:「あなたたち「魔の一族」が異世界の人間の遺した技術を独占する時代は終わりです!これよりあなたも勇者様の軍門に下り、共に世界をより良い場所にすべきなのです!」

魔王:「……時代が誰に味方しようとも、我こそは「魔の一族」の王!その誇りと魔の繁栄のために負けるわけにはいかぬ!『シュラリーア』!」

リオス:「『アトロポス』!……さあ勇者様、今私が尻尾での攻撃を全て防ぐ防護呪文をかけました、今こそ魔王を討ち果たし世界に平和を!」

勇者:「こういうの魔王の城とかでやるもんだろ、その辺の船着き場の兄ちゃんが魔王?!ええいままよ、槍が軽くてよかった!」

                      *

魔王:「グワアアアア……わ、我は「魔の一族」の世継ぎ……決して敗北は許されない……」

勇者:「……!な、なんかやばそうな呪文が来るぞ、こいつ自爆するつもりか?!リオスさん下がって―」

魔王:「……ぐふっ……」

ペガサス:「……危なかった、私がこっそり魔力を奪い取っていなければ古の自爆呪文が発動していたはずです、しかしここまでよく成し遂げましたね勇者よ」

勇者:「お前戦闘に参加できるんかい!じゃあなんで今までアドバイスしてただけなんだよ!」

リオス:「……魔王よ……いいえ、フラールちゃん……既に決着はついたわ、一部の種族だけが富と技術を独占する時代は終わったの」

魔王フラール:「我は……我は、またしても代々続いてきたものを失うのか、そのふがいなさゆえに……リオスちゃんよ」

勇者:「ちゃん付け?!」

リオス:「魔王フラールは私の茶飲み友達です。何度も貧しい者のため特権独占をやめるよう説得しようとしたのですが……」

フラール:「いくら友の頼みといえ、こればかりは聞けぬ……聞けぬのだ!かくなる上は!」

勇者:「……馬鹿か?!待て、魔力が残ってないのに呪文を唱えたら身体が……」

フラール:「勇者とやら、御前について行くとしよう。……この港の皆の通称である「魔の一族」が異世界の新しい知識を学び、古いものを今と変わらず使えるならば独占が崩れたとしても先祖に申し訳が立つ……」

勇者:「この人ついてきちゃった?!いや人じゃなくてタヌキだけど!」

リオス:「フラールちゃんも軍門に下る気になったのね!よかった……!さあ勇者様、海の向こうへ人間の知識を伝える旅に出発しましょう!」

勇者:「これ単に船着き場のお兄さんから無理やり船借りただけの話じゃないのか?!何なんだ魔王って名前負けじゃねえか!」


幕間

フラール:「……ふむ、これが人間の知識……素晴らしい、素晴らしいぞ!身体から力が溢れてくるようだ!」

勇者:「……」

フラール:「勇者とやら……面白い、貴様にも興味がわいた。知識と技術を与え続ける限り―そして我が友リオスの名に免じ、汝も我が友となることを命ずる」

勇者:「花占い教えて新しいパワーを身に着けるってどんだけこの世界スピリチュアルなんだよ?!いや和解できたならいいけどさ!」


幕間2

リオス:「……勇者様は、わたしを命懸けで守ってくださいました」

リオス:「今こそその恩に報いる時だと……そう思うのです、どうかお慈悲を……」

勇者:「いや困るから!寝ているときに女の子から夜這いされるなんて夢だけど狐だからかわいいだけだから!ああ尻尾がもふもふであったかい……」

リオス:「勇者様はわたしがお嫌いでしょうか……」

勇者:「めんどくせえ!いや自分の寝床に帰ってくれ!そういうのは好きな人としなさい!」



第四章 秩序への挑戦

勇者:「でもわかったわ、これ異世界転生でもあるけど「RPGのお約束を笑う」ってひと昔前によくあったタイプの作品だろ、違うか?」

モブ犬ケモノ:「勇者様!様々な場所に文明をもたらし邪悪を退けたとお噂はかねがねお聞きしております、この街に現れる邪竜を退けてはくださらないでしょうか!」

勇者:「はいはい、わかったわかった多分邪竜じゃなくて蛇で実はいいやつだろ、引き受けた」

フラール:「魔王は困っている民を見過ごすわけにはいかぬ……」

リオス:「勇者様が引き受けるとおっしゃるのであれば、世のためわたしも死の覚悟はできております!」

勇者:「お前らが俺よりよっぽど勇者だよ!」

                   *

リオス:「ゆうしゃ……さま……どうか、あなただけでも……」

フラール:「逃げろ……希望を失うわけにはいかぬ……」

邪竜メビウス:「もはやお仲間は倒れ伏し、お前の魔力も風前の灯火のようだな……世界の文明をいたずらにかき乱す「勇者」は殺さねばならぬというのに、仲間が邪魔をしてくれて……」

勇者:「いやこれなんでこうなったの?!すごいピンチっていうか普通に恐ろしいドラゴンっていうか……リオスさん!魔王!しっかりするんだ、俺につかま……重っ?!普通の動物に見えるのに見た目ものすごく重い?!」

メビウス:「クックック、もはや身体に力も入らぬようだな……死ねい!」

勇者:「いや力はいらないんじゃなくてこいつらが重……くっ!……うあああっ!」

メビウス:「……?!」

勇者:「俺の槍が、光ってる?!」

ペガサス:「下ネタですか勇者よ」

勇者:「な、何だ、まぶし……?!」

ペガサス:「(無視ですか)」

聖なる槍:((……立ち上がるのだ、「大いなる罪」を背負い平和を求めるものよ))

勇者:「……お前なのか?!槍が喋ってるのか?!」

聖なる槍:((いかなる状況でもやさしさとお人よしさを失わず、誰もが憧れる美しい巫女の据え膳も跳ねのける高潔なものへこそ、我が真の力を……))

勇者:「全部見てたんかい!恥ずかしいわいっそ!」

聖なる槍:「これこそ我が神髄、神器「旭光の槍」!光をその手に取るがよい!」

勇者:「な、なんだかわからんが槍が物凄く煌びやかになった!これで勝負だ、メビウス!」

メビウス:「こ、この光……!目を開けていられぬ……!!」

勇者:「覚悟しやがれ!どりゃあああああっ!」

                     *

メビウス:「見事であった勇者よ……なんじの力、見届けたり」

リオス:「……ど、どういうことですか?」

メビウス:「勇者に付き従い恋する巫女よ……わらわの名は「正龍メビウス」―古に伝えられし秩序の蛇―」

フラール:「『正龍』?!世界の滅亡を防ぐ力が龍の形になったものであるというそれか?!」

メビウス:「いかにも、勇者の盟友である魔王よ……汝が「人間の知識」をいたずらに広めてもこの世が崩壊しないか、その実力を試させてもらったぞよ」

勇者:「……っていうのは建前で実際は面倒になるから消しちゃえと思ったけどかなわなかったから適当にごまかしているとかじゃねえだろうな」

メビウス:「……さて、旅を続けるなんじらに……」

勇者:「今このメスヘビ目を逸らしたぞ!絶対そうだ、そうに決まってる!」

メビウス:「新たな力としてわらわが分身たる蛇の人形を与えよう」

勇者:「……なんだよ、かわいいぬいぐるみじゃねえか。これがさっき俺たちを苦しめた氷の炎を吐いてくれるとかか?」

メビウス:「わらわは秩序の番人、軽々しく誰かに与するわけにはいかぬ……しかし、その力だけをこの洞窟に残し、意思は人形に宿すことによりなんじらの旅を守護するとしよう」

勇者:「結局与してるじゃねえか!いやそのすごい力のほうをよこせよ意志とかいいからさ!……まあいいや、道連れが何匹だろうと変わらんだろう……狐に、狸に、蛇……日本昔ばなしか俺は!」

                    *

幕間

モブ犬兵士:「すみません、ちょっとこの関所は……」

メビウス:「『わらわは秩序を守る者、わらわに滞りなく大地を巡らせたまえ』」

モブ犬兵士:「ははーっ」

リオス:「さあ勇者様!メビウスさんのおかげで道は開けました、先を急ぎましょう!この先の村では狐がその木の下で愛を誓うと永遠に……」

フラール:「いや、北の王国へと向かおう。あそこの国王はなぜか最近乱心を……」

勇者:「通行手形替わり?!」


最終章 勇者の冒険

ペガサス:「……目覚めなさい、目覚めなさい勇者よ」

勇者:「うるさいなあ……野宿なんだしもうちょっと……?!」

ペガサス:「……気が付きましたか。ここは「あなたの世界」です。……旅は終わりました、あなたのおかげであの世界は今後末永く豊かな時を過ごすでしょう」

勇者:「パジャマになってるし、元いたベッドにいる……もう、全部終わったのか」

ペガサス:「あなたは常に様々なツッコミを入れながらもその優しさと強い心で様々な者を幸せにしました……今こそ、自分の世界で同じことをする時です」

勇者:「自分がボケてたのは自覚してたんだな?!羽引きちぎるぞ精霊?!……でもそうか、さよならさえ言えないのはちょっと寂しいかもな」

勇者:「……」

ペガサス:「……」

―なあ、

あいつらって―あの世界の住人って、魔王って、巫女って、すごい蛇って、旅の後どうなったんだ?


―幸せになったものもあれば、再びその身に降りかかる禍に命を落としたものもいます。ですが世界が豊かになった今……


―おい、今すぐ連れていけペガサス。ゲームで言えば真エンディング見ずやめるようなもんじゃねえか


―げーむ?


―いいから連れていけ!槍や服もちゃんと返せよ!


『かつて、別の世界から来た人間という種族がいました。

 彼は世界を豊かにし、魔王を救い、巫女を救い、秩序を不滅のものとしました。

 いったいかの勇者がどのような冒険をしたかは、今ではよくわかっていません。

 でも、彼は……

とても優しくて、そしてよく叫んでいたと狐の巫女の間では古から伝えられています』


                               おしまい




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