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俺は決して丸い性格じゃない

作者: 愛松森

ある日、俺はある置手紙を見つけた。それは、白い封筒に入れられ、教室の机の上に置かれていた。手に取って、裏を見ても差し出し人の名前は無い。とりあえず開けて、中身を確認することにした。


「ふざけんな。死んじまえ」


と太字のマッキーでそれだけ書かれていた。それほどまでに憎まれることをした覚えはなかった。でも、この手紙の置いて行った人物は俺相当怒っているのだろう。


とりあえず、このことを友達に相談することにした。仲の良い友達にメールにして、今日の放課後話を聞いてもらえることになった。


放課後になり、中庭にあるベンチに何人かの友達が集まってくれた。手紙を見せると、全員が苦笑いを浮かべた。


「お前って、こんなに憎まれることしたんか?」


「身に覚えがないから、こうやって相談してんだろ。この手紙どうしたらいいかな」


「とりあえず先生に報告して、証拠品として保存するのが無難じゃね」


ということで、さっそく先生に報告に行った。先生に手紙のことを話すと、驚いて「急いで生徒科の先生に相談しますね」と言って走って行ってしまった。あとは、先生に任せることにして帰ることになった。


翌朝、朝礼にてこの事件が公のものとなった。(もちろん、どの生徒が被害を受けたのかは明かされなかった)犯人は名乗り出るようにと生徒科の先生が言った。だが、そんなことで犯人が出てくるはずもなかった。


俺は、放課後先生に呼ばれて事情聴取を受けた。いつ?どこで?犯人の心当たりは?様々な質問に答えた。


それから、帰宅するために駐輪場に行った時、後ろから声を掛けられた。


「あの・・・」


後ろを振り向くと、見覚えのない男が立っていた。名札からして、先輩である。


「なんでしょうか?」


「あの手紙、読んでもらえましたか?」


(は?)


「あの手紙って何のことですか」


「いや・・、あの・・・・、今日朝礼で言ってたやつ」


長岡(名札から判断して)という先輩は、いかにも意気地なしで、陰気な人だと一目でわかった。今も俺と目を合わすことさえできていない。


「長岡先輩が置いたんですか?」


長岡と聞いて、先輩は驚いたような表情を見せた。


「なんで君が僕の名前を知ってるんだ。まさか、もう先生に報告したとか、待てよだとしたら今頃僕は先生に囲まれて・・・うわー」


急に独り言を言って、頭を抱えて叫び始めた。これには、さすがの俺も引いた。


「で、俺になんの用ですか?俺に恨みがあるんですよね」


「あ、そうだった。あの手紙返してくれ」


「いやです。あれは証拠品ですから。というより、俺先輩と関わったことないから恨まれる理由もわからないんですけど」


「君は彩夏と仲良くし過ぎなんだよ。いつも横に並んで僕の前を歩きやがって。おまけに一緒に、弁当まで食べてやがる。彩夏の奴は、弁当まで用意して。恨むのには十分なことだろ」


(そんなことで・・・・。馬鹿だな)


「彩夏とは、幼稚園に行くまえからの仲で、ほぼ家族同然の関係なんで。別に付き合ってるとかじゃなくて、幼馴染で姉ちゃん的存在ってだけなんで気にしないでください。そんなことで、恨まれても困ります」


俺は、鞄を開けてプリントファイルを出した。中から白い封筒を取って、長岡に渡した。


「犯人も分かったので、それもういいです。焼くなり、切るなりしてください」


それを受け取った長岡は、それをポケットにねじ込んだ。


「あと、金輪際俺と関わらないでください。彩夏にも迷惑かけたくないし」


「わかった・・・」


もううっとおしくなって、俺は足早に長岡から離れた。


次の日、先生に犯人が謝罪をしてきたからもう穏便に済ませて欲しいとたのんだ。学校側としては、その生徒を指導したいということだったが、俺が頭を下げると、今回だけはという話になった。


そのことを、友達連中に話すとさんざんに言われた。「お前は、アホか。証拠品まで返して、先生にも頭下げて、ホントに呆れるわ」「長岡ってやつも頭おかしいけど、お前もどこかネジが抜けてるぞ」「どんだけ、お人好しなんだよ。どうせまた、面倒なことが嫌だから、自分が折れて話を丸く収めたんだろうけど」

「ばあちゃん並に、丸い性格だよな」


終始罵倒されてしまった。でも、俺をそれを笑いながら聞いていた。


「皆、俺の本当の狙いが何なのか分かってないな」


そういうと、罵声は止んだ。


「やっぱなんか隠しとったんか」


皆の注意が俺に向けられた。


「俺は、手紙を返したんじゃないだよ」


「どういう意味だ」


「だから、俺は返したんじゃなくて、渡したってこと」


「分かるように説明しろよ」


「あの手紙になんて書かれてたか覚えてるよな。俺は、それをそのまま渡した。返したんじゃなくて、渡したんだよ。俺も長岡に長岡が俺にしたことをしたってことだ」


「つまりは、お前は『ふざけんな。死んじまえ』って長岡に言ったってことか?」


「まあ、そうなるな」


場は大爆笑に包まれた。中庭に笑い声が響く。


「先生に頭下げたのも、やり返して気が済んだからか。お前はやることが違うな」


「でも、絶対長岡はそんなの気が付いてないし、返してもらって思ってるだろ」


「まあ、それもそれでいいよ。笑い話にはなるからな」


放課後、笑い声がうるさいと先生からのお叱りを受けたが、俺たちは上機嫌に下校した。

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