3/12
戦争
この図書館には少女と少年しかいないはずなのに、少年は少女にすっと近付いて小声で言った。
「戦争に関する内容だよ」
「戦争?」
戦争という単語は聞いたことがある。戦と争だから、いいことではないのは分かっていた。
しかし、なぜ、少年はすすめないのか。
「よく分かんないけどさ、国と国が領土や地位を奪い合うために戦うんだよね。図書館にある戦争の本は親切にも当時の写真がいっぱい写ってるからさ、刺激が強いかなって」
そう言って、少年は図書館の一番奥の棚から分厚くて大きい1冊の本を持ってきた。ホコリだらけだった。
「ほら」
少年は適当なページを開いた。
「…っ!」
そこには、沢山の遺体の写真があった。
思わず口を塞いでしまった。
少女の反応を見た少年は、本を閉じて、少女に謝った。
「ごめんね、たまたま悪いページ開いちゃった」
「いやいや、大丈夫だよ」
しかし、少女の目にはあの写真が焼き付いて消えなかった。