魔法少女は、異世界に召喚された様です。
「……………。」
「魔導師隊!撃ち方よーい!」
「我が名により!燃え盛れ!」
「うてぇー!!」
「フレイムランサー!!!」
「グルキューアァァァ!!!」
辺りが炎に包まれ、襲い来るモンスターらしきものを焼き尽くしている。
〝うわぁー…。私の出番ないねー。
あの人達、私より凄いなぁ……〟
と、夢香は立ち尽くし、その光景をただ見守る事しか出来なかった。
「さぁ!ユメカ!
この争いを愛と希望で!」
「出来るわけないよー!!
これ!もう戦争じゃない!!!」
「そこの君!危ない!!!」
「へっ?
きゃあぁぁぁ!!!」
「ユメカっ!」
振り返れば、大きな棍棒を振り上げ、今にも私を叩き潰そうとしているオークの姿。
私は、身構える事しか出来ず、ただ叩き潰されるのを待つしか無かった。
「くっ!はぁぁぁぁ!!!」
「えっ?」
私の前を一陣の風が吹き荒れる。
私は、その姿を見た。
銀色の甲冑、赤いマントの少年の姿。
そして、神々しく輝く剣と棍棒が交じり合う。
「くらえ!交牙龍剣!!」
〝なにこれ……夢?〟
そう叫びながら、少年は、大きな棍棒を切り飛ばし、オークの喉元に剣を突き立てる。
「くっ……うぉーー!」
「ひっ!」
肉を突き刺す鈍い音と共にオークの喉元から吹き溢れる紫の体液を浴び、私は、恐怖に引きつった顔で、腰を抜かし身動き一つ出来ずにいた。
「グッ!!ダァァァ!!!!」
少年が剣をねじり、オークの首を飛ばす。
オークの胴体が、首から紫の体液を吹き出しながら、声をあげることもなく倒れていった。
「ハァハァハァ……。
君、大丈夫かい?」
と、紫の体液にまみれた少年が、微笑みながら私に手を差し出してくる。
「ひっ!うーん。」
「おい!きみっ!おい!」
「ユメカ!しっかり!ユメカ!!」
私は、その手を取ることも無く、気を失っていた。
「ユメカ…」
「うーん。」
「ユメカ起きてっ!」
「んー。休みくらい寝かせてよー。」
「ユメカ!ヤバイ!起きるんだ!!」
「あー!!もう何よ!!」
「ぐげっ!?」
と、飛び起き、目覚ましを叩く様にマルクの頭をパコンと叩く。
「うるさいなぁー!
どうしたの!?また事件!?」
「何を言ってるんだい?
ユメカ!まずいよ!どうやら、僕達は異世界に召喚されてしまったらしい。」
「はぁ?異世界?」
私が見た世界は、まるでRPGの世界にでも迷い込んだ様な一昔前の文明。
私がいた近代世界とは、まるで違い、暖炉のある木造一軒家が立ち並び、人々は、酪農や鍛冶を生業としており、何処か落ち着いた雰囲気を漂わす世界であった。
「えっ?ちょっと!?
どういう事!?
ハッ!?」
そして、私が着ている服装まで、村娘の様な格好をしている事に気がついた。
「こっ?!これはっ!!?」
「気づいたかい?
これは、この村の民……」
「エッチー!!!」
「ぶへぇー!!?」
寝ている間に、卑猥な事をされ、着替えさせられたと思った私は、マルクを思いっきり引っ叩き、マルクの口から赤い体液が噴き出す。
「ぶへぇー……
ふぅ。ユメカ。勘違いも甚だしいよ。
着替えさせたのは、僕じゃない。
あの人さ。」
マルクが差す方を見ると、そこには30代半ばくらいの女性が、長く綺麗な茶色の髪をなびかせ、洗濯物を干している姿があった。
「あの人が?」
「ん?
あらー。あなた。
目を覚ましたのねっ!
ベル!来なさい!
彼女が目を覚ましたわよ!」
「本当かい!母さん!
良かったぁー!
戦場で倒れた時はもう駄目かと思ったんだよ?」
「えっ。あ……。」
私の脳裏にあの時の光景がよぎり、再び恐怖が襲ってきた。
「いやぁぁぁぁぁ…!?」
「どっ!どうしたんだい?」
「いやっ!」
「っ!」
私は震え、その場にうずくまってしまい、再び差し伸べられた手を払いのけてしまう。
「無理もないわ。戦場のど真ん中にいたんでしょ?
相当怖い思いをしたのよ。
今は、そっとしてあげましょう。」
と、少年の肩をよせ、しょげる少年をなだめる様に言った。
「特に、ユメカはあんな凄い戦場を体験した事無かったからね。
大量の血に免疫がないんだよ。」
「あらっ!この子。
面白いペットを飼っているのねっ。」
「ペット?」
「そうだね。
喋るフライングもちもどきは初めて見た。」
「フライングもちもどき?」
ペット扱いされた上に、もちもどき扱いされたマルクは、不機嫌そうに2人に突っかかっていく。
「僕は、マルク!
これでも、魔法少女を育成するサポーターなんだよ!」
「魔法少女?
んー。あー!そういう事か!
母さん!この子は、魔法士見習いなんだよ。
君は、この子のしもべなんだねっ!」
「しもべ………。」
もはや、何を言っても伝わらないと悟ったマルクは、そのまましょぼくれた様に、夢香の肩に止まり、いじけ出した。
「どーせ、僕なんて……。」
「あらあらっ。
あなた達、お腹空いてない?
今日は、良いバッファローミルクが手に入ったから、シチューにする予定なんだけど、」
「やったぁー!シチューだ!!」
「行こう。ユメカ。」
「うん。」
私は、少年から距離を取り、ゆっくりと後をついて行った。




