プロローグ
桜が舞い散る春のことであった。
僕は運命に必然的に遭遇した。僕の意思とは関係なく、僕たちを巻き込んで。
それは、神のいたずらかそれとも...
僕はいつも通り学校へと続く上り坂(通称さくら下り)を淡々と登っていた。
今日は春休みが明け初日の登校日、要するに始業式である。春休みのだらだらしていた時間から脱出するには少し時間がかかりそうだが、新鮮味はこれっぽっちも感じられない。
それは僕が所属している部活のせいである。生徒会のお願いで新入生歓迎の手伝いをするために春休みの全ての時間を費やし手伝いを全うしていた。しかし、運がいいのか悪いのか入学式での会長スピーチの製作であった。
力仕事ではない分肉体疲労は少ないが...先輩、いや元生徒会長と毎日二人きり...二人きり、思い出しただけで吐き気がする。
ま、そんなことは放っておいて、一人きりというこの状況を存分に楽しもうではないか。先の言い方だと今のこの時間以外は一人になれないという風に受け取られるかもしれないが...
別にそういうことではない。いや、一人になれない!!!
こうなったのも全部先輩のせいだ、あの人が僕を無理やり巻き込むからだ。
僕は遠くから見ているだけで良かったのに、それだけで満足だったのに先輩が...
「先輩がどうしたの?凛君」
「せ、先輩っ!どうしてここに、というかもしかしてもれてました?」
「どうしてとは些か疑問だな...ま、それよりも君の恥ずかしい独り言を聞けたからチャラにしてあげる。でーも凛君もう少しレディーに対する言葉使いは気を付けなよ。あ、それとも私のところに婿入りしてくれるなら別にかまわないけど」
んぐっ。声にならないうめき声が僕の恥ずかしさも物語っている。
「先輩、僕をいじるのも大概にしてください!いい加減に怒りますよ。ほんとに...」
「あらら、怒っちゃうのね。いいわよ凛君に怒られるなら本望よ!それに私はいじってなんかないわ、弄ってるだけよ。」
「あなたって人はほんとに手に負えません。もうお手上げです。」
「うふふ。それじゃわたしは元会長としての最後の仕事をしてくるから先行くわね。また学校でね凛君。あ、それとスピーチ原稿!そしたら、私のところに届けてほしいからクラス確認したら体育館にいる私のところに直行居てきてね」
「は、はい」ほんとにせわしない人だ。あれで生徒会長を務めてたなんて大したものだ。
これで優雅な登校時間のほとんどがつぶれてしまった。
こんな日々がもう半年も続けば段々となれてくるものだなぁ。しかも先輩のいるのが僕の日常になっているし。人生はわかったものではないな。ところで、先輩は僕のことどういう風に思っているんだろ、ただのいじりがいのある後輩としか思ってないんだろうな。半年前と何も変わってないなら、悲しいな
学校に着いた僕は唖然とした。「人がごみのようだ」もとい「ごみが人のようだ」ん?なんか違和感を感じるが、まぁ、そのくらい人がいたのである。
「あ、そうか」うちの学校は県内でもトップクラスの新学校私立春美ヶ丘高校で在籍生徒は三学年合わせて1500人を抱える超弩級学校で有名だ。だから仕方ないかっ。生徒が群がる原因になっているのは学校の玄関前に大々的に張り出されているクラス分けの紙らしい。遠くからみるとみな和気藹々としているが、近くでみるとほぼ乱闘のようになっている。自分がどのクラスに割り振られるかは気になるし知っておかなきゃいけないが、今の自分にはそんな世界に割って入ることは出来なかった。
そんな、たじろいでいる僕が気になったのか一人の女子が声を掛けてきた。
「おはよう、宍戸くん。」
彼女は僕のことを見知っているようだが、僕には見知らぬ人であった。いや、見たことあるような...きのせいだな。
「お、おはよう」
ここでそのことがばれると少し厄介になりそうだ。しかたないここは適当に合わせながら相手の情報を収集しよ...
「今年も同じクラスだよ、よろしくね。」
ということは昨年度ずっと一緒だったのか。まじかっ!人生何があるかわからん!
「今年も同じクラスか!それは良かったな。それで他にはだれかいるのか?」
「ほんとよかった。今年も一緒なんて運命感じちゃうね。それでね、宍戸くん...。ちょっと話があるんだ。今時間ある」
完全に持って行かれた。それに話って、まずいぞまずいぞ。展開が早すぎる。あり得ないだろ。人生何があるかわからん。それに、始業式まで残り40分程度。失礼だけどもこんなのに付き合っている暇はないのである。先輩に頼まれた用事があるっていうのに。
「今か、もうすぐ始業式だし...そのあとじゃ」
「だめ。いまなのっ!ほら早く」
「拒否権ないのか」
「何かいった?」
「いーえ何も。」昔何かの本にこう書かれていた。~右頬を殴られたら左の頬を差し出しなさい~と先輩に左頬を差し出す自分が見えてきた。そんな無駄な思考を回している間にも彼女は行動に移していた。
彼女が腕を引っ張り校舎裏へと連れて行こうとしている。おもっているよりも彼女は力が強く抵抗した際に変に怪我させるのも嫌だった僕は抵抗するのを諦めた。引っ張られている間僕は玄関前にたむろっていた女子グループに見入っていた。理由は様々あるが、一番の理由は幼馴染の美穂がいたからである。美穂は昨年までイギリスに留学しており、帰国したなんて一言も聞いていなかったからである。そんなことを思っている間にも引っ張られている僕は美穂の姿をすぐに見失った。
「どうしてあの子がここに...」
そんな思考も彼女の腕力によってすぐに寸断されてしまった。
彼女の力が強いおかげで校舎裏にはすぐに付いた。掴まれていた手首が真っ赤になっている。偶然にか彼女の顔も真っ赤である。すこし目を泳がせながら吐息を吐くように言った。
「好き」
豆鉄砲を食らった。僕はきっと目をまんまるにして口をポカンと開けてしまっていたとおもう。いらない自信をもっている。それに、その言葉が周りの音を全て消したかのように一瞬にして静まり返った。怖いくらいに静かだった。そのせいで、僕の顔はきっと際立っていたと思う。怖いくらいに。
彼女はくすっと笑いにこっとわらった。ドキッとした。
1分だろうか10分だろうか。彼女が次の言葉を口にした時間はとてつもなく長く、実際はとてつもなく短い時間だった。
「好きです。半年前のあの日からずっと好きでした。よ、良かったら付き合ってください」
半年前...?そのキーワードと彼女の顔が一瞬でリンクした。
「あ、あの時の...」
僕は自然に半年前の先輩との一日の一場面を思い出していた...
――― やばい、遅刻だ。せっかくの先輩からのデートのお誘いなのに1時間も遅刻するなんて最悪だ。どう言い訳したものか。そのまんまあったことを話すか...いや、信じてもらえないだろうな。ここは、謝罪に謝罪を重ね先輩のご機嫌ととるしかないか...。うわ、あそこに明らかに怒りがあらわになってる人がいるよ。ここからでも十分見てとれるな。きっと先輩だな。ほんと最悪だ。
「先輩、ほんとにごめんなさい。もうなんでも言うこと聞くんで許してはもらえませんでしょうか?」
はぁ、顔を上げるのが怖い。まじ怖い。殺気がびんびん伝わってくるよ。もしかして僕今日死ぬ?先輩やりかねないし、そんなことを考えたら冷や汗が脂汗がどっと出てきた。
「宍戸君。顔をあげてください。私はそんなに怒ってはいませんよ。あなたが遅れた理由は存じています。なので全く怒っていません。これっぽっちも、少々も、ぜーんぜーん怒ってませんよ」
いぜん消えない殺気に怯えながら顔をあげると先輩は黒い笑顔を満面に浮かべていた。
「せ、せ、せ、先輩。まことに申し訳ございませんでした。」自然に土下座していた。
すると先輩から発せられていた殺気はすっと消えうせた。僕は安心して軽く涙を浮かべながら先輩を見上げると顔を赤らめながらそっぽを向いてしまった。まだ怒っていると思い僕がうつむくと同時に、先輩はこういった。
「宍戸君。私は先に言ったようにあなたが遅れた理由は知っていて怒ってはないの。だって、あなたはいたいけな少女をいかにも悪そうな男子3人組みから助けていたのだからね。で、私が怒っているのは、宍戸君あなたがその少女とイチャイチャしていたからよ。ほんと鈍感ねバカ」
「先輩見ていたなら助けてくださいよ。あんなに全力で走り続けたことなんて初めてですよ。それにイチャイチャなんて、連れて走るときに手を握ってしまったのは仕方ないかと...」 ――――
少女を連れて逃げる。やっぱりあの時の少女!
僕は彼女に思考回路をもどし確信した。
先輩とのデートに遅れた原因の少女に今こうやって告白されるなんて、夢にも見なかったよ。
確信のためにも彼女に聞かなくてはならなかった。
「ねぇ、半年前に僕と男組から逃げた少女ってもしかして君?」
「はいっ!宍戸くんも覚えててくれたんだ。わたし凄くうれし...ほ、ほんとにうれしくて...」
彼女は僕が覚えていたことに感動したらしく少し涙を浮かべ、顔を伏せて恥ずかしそうに笑って見せた。その笑顔はとても僕の心の奥底になんの抵抗もなく入ってきた。
そんなことにも気付かず僕は会話を続けた。
「あのときは大変だったね。ほんとにね、でも互いに無事でよかったよ。もう、あんな暗い人気のない裏道にはいっちゃだめだぞ。それよりもなんで、あのときはあんな場所に...?」
彼女はすこし困った表情をうかがわせた。僕はその一瞬を見逃さなかった。しかし、そこを問いただすのはなぜか地雷のではと思い踏み込めなかった。
「ま、今はそんなことはどうでもいいか。もうすぐ、始業式が始まる。急ごう。」
「あの、宍戸君。なにかわすれてない...?」
完全に忘れていた。彼女の告白のことを。しかし、どうしよう、仕方ない本当のことを話すか。
「ごめん。半年前のことは思い出した。でも肝心の君のことは何も知らないんだ。君の名前も何も。ほんとにごめん」
彼女は完全に戸惑っていた。でも、少ししたら落ち着いたらしく笑顔でこういった。
「そうだよね。宍戸くんと喋るのこれで2回目だし。わたし影薄いし仕方ないよね」
笑顔ではあったがそこはかとなく寂しそうだった。
「そうだ。お詫びと言っちゃなんだけど。今度お茶でもどうかな?」
「はいっ!楽しみにしています。それと私、ちょっとあれなので先行きますね。ではお先に」
その直後に彼女がそそくさと立ち去る理由をしる
「あ、うん。それじゃ」
まだまだわからないことばかりでほんと趣味として書いています。アドバイスなど助言をたくさん頂けると嬉しいです。




