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序章
人は後悔なしには生きることが出来ない。
例え後悔しない道を望んでいたとしても、何かを選べば何かを捨てることになり、捨てることによって未練が生まれる。
そうして、ふと振り返ったときに道の隅でごみのように捨てられているそれに目が留まる。
あの時ああしていれば。あの時ああしなければ。
あれを選べば。これを選んでいなければ。それを選んでいたら。
そんなもしもの塊を一度捨てたはずのものを未練がましく見つめるのだ。
「過去には戻れない」
ありきたりなそんな台詞も真実だと知る。
過去には戻れない。どれだけ望もうと、戻ることは叶わない。
一度選んだ道を引き返すことは許されてはいないのだ。
それでも、それでもと人は振り返る。
在りし日の自分を見つけ、届かないと知って叫ぶのだ。
それは、先を知っているから理解できること。
『今』を生きている彼らには理解できないこと。
そう知っておきながら、ただ過去に追いすがり泣き叫ぶ。
どうか届けと、願いを込めて。