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No.19 クロックパンクス・オブ

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第十九弾!

今回のお題は「時計」「インターネット」「フェチ」


12/29 お題出される

1/2  お正月ボケから覚める

1/3  プロットをひねり出そうと努力する(この時のプロットでは異能バトルものだった)

1/4  どうしてこうなったという作品になりながらも投稿


うーん、今のところ一番の駄作……

 学校の宿題とはいえ、どうして僕はこのおっさんの長話に付き合っているのだろう?

 小さな画面上でひたすらに熱心に語り続ける興味のない話に僕はひたすら付き合わされていた。


「……加速度を提起するにあたりこれを光速度とハッブル定数から考えると少々のズレ、つまり、そこにはロマンがあるんだよ! だからこそそこに着目をして……」


 正直……興味が無い。設置された“ゼンマイ時計”はまだ1/3以上の時間が残っていることを示していた。



 この一日前の話だ。小学校の宿題が済んでいないことに気づいた。

 宿題の内容は「身近な英雄に話を聞く」つまり、身近な大人に仕事の話を聞いて来い、というやつだ。身近に話が聞ける大層な仕事をしているような大人が居るだろうかと両親に相談したところ、明日にでも叔父さんから話しを聞けることになった。なんでも、叔父さんは『宇宙ゼンマイ師』らしい。

 人類が宇宙に上がってから早120年。地球が住めなくなったものの、人類にはエネルギーが必要だった。石油やガスといった地球資源を扱えなくなった人類は、太陽光に手を出すも制御ができず、最終的にたどり着いたのが“ゼンマイ”だったらしい。つまり、ネジ巻きした歯車による動作で電力や熱を生み出し、それをエネルギーに変換するということらしい。

 で、叔父さんの仕事はそのゼンマイを巻く仕事らしい。確かに、叔父さんの仕事が無ければ僕らは生活に困るだろう。しかも、この仕事は宇宙ゴミ、スペーズデブリなどとの衝突の危険もありなかなか命がけでハードだ。なるほど。確かに身近な英雄だ。

 遥か遠方で仕事をしていて、非常に忙しくてやまない叔父さんから話しを聞けるのは約二時間。そして宿題の締め切りは明日。だからこそ、叔父さんの発言なら何でもいいとは言ったが……言ったけどさぁ……だからと言って小学生相手に専門物理の話を一時間以上ぶっ通しで語るかね……普通。

 思わずあくびを一つ。と、ふと叔父さんの目せんが刺さる。


「あ、ごめんなさい」

「いや良いよ。すまないね。叔父さん、この手の話が大好きでね」


 叔父さんは僕を笑って許してくれた。叔父さんはすこし考えた後、よし、と話題を変えて話し出した。叔父さんがなぜこの仕事に就いたのか、という話だそうだ。


「知ってるかい? 人工衛星の話なんだがね。その昔、まだ人類が宇宙に住んでいなかった頃、宇宙に打ち上げた観測機が予定と進み方をした話なんだがね」


 叔父さんは“ゼンマイコンピュータ”の通信画面を二分割して“ゼンマイ脳ネットワーク”を使って、映像を見せてくれる。

 そこにはパラボラアンテナの様なものがついた箱が、ゼンマイも無しに宇宙空間に居る画像だった。しかもイメージと書かれている。……この頃はまだ人類は宇宙に居なかったのだから当たり前と言えば当たり前なのか……。


「ぱっとネット検索かけて出てくるのはこういう画像だね。このヴォイジャーと呼ばれる探索器で起きた謎の現象、それが『パイオニア・アノマリー』あるいは『パイオニア現象』だ。予定より遅れて進んでしまった話だよ」


 叔父さんは映像を見せながら言った。

 僕は改めて気合を入れなおして話を聞く姿勢を作る。


「ガス漏れだとか熱暴走だとか色々な説が有ったが、叔父さんは『AIが目覚めた説』が一番好きだ」

「はぁ……」


 何を言い出すんだ? このおっさんは。

 などと考えている僕の目の前で、叔父さんは切なそうな眼をした。遠く去った友人を見るような哀愁のある眼で……。


「それってどういう説なんですか?」


 僕は少しだけ興味が出てきたのもあり、叔父さんにその話を促した。


「ヴォイジャー探査機はね。太陽系の星々を撮影すること、その後人類からのメッセージを積んで、太陽系の外へ行くことが目的とされてたんだ。その間、地球から発信された信号をキャッチして、宇宙の写真を撮って地球に送り返すことをしていた」


 僕はなんとなくその話に心当たりが有ったが、そのまま話を聞くことにした。


「だけど、どんどん離れて行ってしまうわけだから、そのうち写真のやり取りもできなくなってしまうんだよ。もう最後の最後にね、地球の女性オペレーターがヴォイジャーにこう言うんだ『お願い、ママにもう一度声を聞かせて……』って。遥かギリギリ、届いたかも怪しいほどの距離を沈黙が表わす中、それを受けてヴォイジャーが最後に送ってきたのは、遠い故郷の……太陽系の写真だった」


 叔父さんは静かに話を続けた。


「そして、そんなヴォイジャーが太陽系の外へ行こうという時に見せた謎の減速、それが『パイオニア・アノマリー』だったんだよ。ひたすらに呼びかけ続けられたヴォイジャーにAIが芽生えた……私はこの話を聞いた時そう思ったね。宇宙の神秘を感じた。以来、私は宇宙にメロメロになった。だから、宇宙を感じられる職に就こうと思った。だから、宇宙ゼンマイ師になったんだ」


 良い気持ちになって語っている叔父さんだったが、僕はこの話の落ちを微かながらに覚えている。そして眠気と疲れから、つい魔が差してしまった……。

 僕は思ったことを口にした。


「確かそれって、写真の偽装の話が有りましたよね。実はカメラを壊す為に太陽を撮影したとか、当初の目的から太陽系の写真を撮る予定だったとか。減速現象も積んでる燃料のせいだって先生が言ってましたし、そんな夢も何もない話だったと思いますよ」


 そして自分の口が何を言ったのかを理解した。咄嗟に謝ろうとしたが、叔父さんはにっこり笑いながら僕を指さした。


「それ、昔の私と同じ意見だ。確か……ああ、あった」


 そう言って叔父さんがまた“ゼンマイ脳ネットワーク”でネット検索して出してくれる。なにやら昔の論争が元らしい。


「どうやら、写真が申告された枚数より少ない、取られてない惑星が有る、とかでそういう話になったらしいね」


 叔父さんはそう言いながら、画面の向うに居る僕に、正面に向きなおり続ける。


「まぁ、実際はカメラが壊れるのは予測されてたとも言われてるね。でも写真が一枚足りないなら、そこには一体何が映っていたんだろうね? あるいは撮ってなかったんじゃないかな」


 僕は叔父さんの質問の意味が分からなくて首を傾げた。


「それってどういう……?」

「叔父さんは、きっとヴォイジャー取りたかった写真が有ったんだろうね。撮れと言われても撮らないほど撮りたい写真が……」

「いや、それはそう命じたからで……」


 叔父さんは意に介さないという風に更に言う。


「減速したのは、後から来る弟を待っていたのか、それとも人類を待っていたのか……故郷から離れたくなったのか……」

「それも故障や不具合だって言われてるじゃないですか」

「それなら、どうして信号が途絶えた後に写真を……しかも故郷の写真を送ってきたんだろうね」


 偶然でしょう? と言いそうになったが、そこで僕は叔父さんのさっきの質問を思い出した。“足りない一枚には何が映っていたんだろうね。あるいは撮ってなかったんじゃないかな”


「……叔父さんは、ヴォイジャーが……わざと一枚撮らなかった、と? それが、AIに目覚めたからだと?」


 叔父さんは後頭部をかきながら苦笑する。そして、子供っぽい考えだろうと言った。


「でもね。人類は今確かに、彼ほどの速度ではないけれど宇宙に出始めてる。ゼンマイがあれば、人類はもっと遠くまで行ける。……そこにはロマンがある。いや、もう信奉しちゃうぐらいに……興奮する。はは、まるでフェティシズムだね」

「宇宙フェチ……いや、AIフェチですか? ああ、だから独身と……」

「え!? じょ、冗談だよ。というか、フェチって分かるの? 最近の小学生は……。いや、そもそも、フェティシズムって言うのは信奉とかいう意味も本来は……」


 とここで設置されていた“ゼンマイ時計”が、けたたましい音と共に残り時間がもうないことを告げる。

 叔父さんは咳払いをして僕に向きなおる。


「とにかく、叔父さんはそんなわけで、宇宙のロマンを求めて今も仕事をしています。君も、ご両親の言うことを良く聞いて、健康に育つように。あと健全にね」

「叔父さんみたいに変な性的趣向には目覚めませんから安心してください」

「いやだから違うって!」


 叔父さんが頭を抱える様を僕は笑いながら見ていた。そして、残り僅かの時間しかないことを示す“ゼンマイ時計”を僕は見た。


「もう時間ないですね。……あ、そうだ。おばあちゃんからの伝言です。『次の休暇は帰れるのか』だそうですよ」


 叔父さんは困ったように笑いながら言った。


「んー、なんとか帰れるように申告してみるよ。ゼンマイ式の航法じゃ数年かかっちゃうから期待はしないでくれ、と言っておいて」

「はい。分かりました。……お体に気を付けて」

「うん。みんなによろしくね。では……通信を終了」


 そう言って、叔父さんの姿は消え“ゼンマイコンピュータ”の画面には通信終了の文字が映し出されていた。

 遥か遠方、人類でもっともヴォイジャーに近い場所に居る夢見る大人から聞かされた話は、僕の中に不思議な……夢見る気持ちを残していった。


「撮らなかった一枚……ヴォイジャーは自分を撮りたかった、と?」



ヴォイジャー計画に関してはウィキペディアや諸々のサイト廻りで集めた情報です

一応

『通信が切れた直後に女性オペレーターがヴォイジャーに対して最終通信「どうか応答してください、ヴォイジャー」……ヴォイジャーは小さくなった太陽系の写真を送ってきた』

は有名な話ですね


ちなみに

宇宙でゼンマイを巻いてその力で発電とか現実味は皆無です

その辺はSFですね……いや、現実味が薄いからSFと言っていいのだろうか?

なんとなく、完全に宇宙に出た人類は太陽光をエネルギーに出来なさそうな予感がしまして

そんな時知ったのが『クロックパンク』……スチームパンクの蒸気じゃなく歯車やゼンマイバージョン

ツカイタカッタダケー という(苦笑)


ちなみに

前のプロットでは「フェチに応じた能力を持つ者同士の戦い」でしたがいかんせん気持ち悪さがぬぐえなかったのであえなく計画段階でこけましたw


ここまで読んでいただきありがとうございました

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