親切心について
「イケメンってずるいよな」
「妬み?」
「違うっての。最近さ、雨で傘を持ってなかった女の子に傘をさしてあげた男性がその子の母親に怒られる、っていうことがあったんだって」
「あぁ、そういうことね」
「きっとその人が不審者に見えたんだろうな」
「見た目って大事よね」
「親切心に対して過度な警戒心はなんか相性悪いよな」
「元々紙一重じゃないの。怪しい人だって最初は甘い言葉で話しかけてくるのよ。怪しい意味で『お嬢ちゃん、飴あげるからあっち行こうか』と親切心で言った『飴あるからあげようか?』って言うのは、聞く側からしてみればどちらも一緒でしょ?」
「言われてみれば。でも親切心っていうのが無くなってくると、日本の古き良き文化っていうのが廃れてく気がするよな」
「まぁそうだけど。でも親切な言葉をかけられた時には、聞く側もその相手の言葉が親切心からくるものなのか、それとも怪しいものなのかを見極めないといけないのよ」
「見極め方とか難しいだろ。昔だったら、近所のおっちゃんとかからなんかもらったりとかはできたけど、ここ最近の人らがそれをしたら一発通報だよな」
「過度な親切心はともかく、漫画みたいにはうまくいかないのがリアルの世界なのよ」
「漫画が原因ってことか?」
「そうかもしれないけど、それ以外にだってあるわよ。ドラマとか」
「テレビに出てる人達はみんな美男美女で、そんな人から甘い言葉を囁かれたら、自分も言われてみたいって思うもんな。あっ! ってことは、想像力が膨らみすぎて、イメージしたものと現実が違いすぎたから警戒心が余計に強まるってことか!」
「おぉ。それもいい考えね」
「……」
「……どうかした?」
「なんか、今日すごい上から目線で言われてる気がするんだけど、気のせい?」
「それも過度な警戒心よ」
「……さいですか」