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ラーメン・ハイ・モンキー

作者: 綿部五剣
掲載日:2026/10/23

 1匹の山猿は、空腹に喘いでいた。

 山猿は知らない。干ばつによって木の実も作物も実らず、山全体が飢えていることを。

 そのため、ここ数日、何も口にしていなかった。


 食べ物を求め、山猿は山をさまよう。


 やがて道端で、かすかに食べ物の匂いを嗅ぎ取った。

 弾かれたように駆け寄ると、水に濡れた細長い何かがいくつも転がっている。

 それらは、楕円形の筒から飛び出していた。


 山猿は、それを食べ物だと判断し、一本を口に入れた。


 ――その瞬間。


 体に、電撃のような衝撃が走る。


(……な、なんだ今の!?)


 理解できない。だが――もう一度欲しい。

 山猿は再び細長いものを食べた。


 しかし、二度目は来なかった。


 ならば、と地面に染みた水を舐める。


 ――再び、電撃のような衝撃。


(なんだ、これ……今までで一番うまいぞ……!)


 山猿は夢中になり、細長いものと水を貪った。


⸻


 それ以降、山猿は群れの中で頭一つ抜けた存在となった。

 木の実を誰よりも多く獲り、素早く木を登る。


 だが、それでも足りない。


 あの“衝撃”が忘れられなかった。


(……あれは、近縁種が作ったものだ……ならば――)


⸻


 山猿は山を下り、人の街へと足を踏み入れた。

 匂いを頼りに探し続ける。


 ――あった。


 以前と同じものを見つけ、すぐさま掴んで逃げ出す。


「待て、このエテ公!」


 近縁種たちが追ってくる。


 だが今の山猿は違う。

 小柄な体と異常な身体能力を活かし、あっさりと振り切った。


 安全な場所まで逃げ延び、筒を乱暴に開け、中身にかじりつく。


 しかし――来ない。


 あの衝撃が。


 山猿は落胆した。


 だが、諦めなかった。


⸻


 再び街へ下りる。


 今度は近縁種のメスに近づいた。

 警戒されるかと思ったが、餌を与えられる。


 確かに美味い。だが違う。


 ――“アレ”ではない。


 山猿は視線を走らせ、膨らんだ包みを見つけた。


 一瞬の隙を突き、その中身を掠め取って逃げる。


 中には、薄い四角い紙と、丸くて硬いもの。


 それが取引に使われていたことを、山猿は覚えていた。


⸻


 山猿は布切れをまとい、近縁種のふりをして街を歩く。


 そして――あの匂いのする店へ入った。


「……いらっしゃい」


 薄暗い店内。奥にはオスが一人。


 山猿は適当に指を差す。


「……はい、醤油ラーメン一つ」


 どうやら通じた。


 数分後、それは運ばれてきた。


 湯気を立てる器。

 熱い汁に浸った細長い麺。

 野菜と肉。


 山猿は見よう見まねで棒を使い、麺をすくう。

 そして、啜る。


 ――その瞬間。


 再び、あの衝撃。


 しかも、以前よりも強烈に。


⸻


 店主は黙って見ていた。

 奇妙な客だった。


 一口食べるや否や、勢いよく食らいつく。

 食べ方は汚く、熱さに顔を歪めながらも止まらない。


 だが、店主は何も言わない。


 ――うまそうに食っている。それで十分だった。


⸻


 やがてスープまで飲み干し、山猿は紙を一枚叩きつける。


「ありがとさん」


 そう言われて、店を出た。


⸻


(やはり、これだ……この紙で“アレ”が食える……)


 山猿は笑う。


 もっと欲しい。


(もっとだ……もっと近縁種に作らせる……そして――)


 ――世界を、支配する。


⸻


 これは、ラーメンによって覚醒した山猿――

 エテ・ラーメンマンが、三度目の衝撃を求め、

 同胞を覚醒させ、“猿の惑星”を築こうとする物語。


 ……To Be Continued

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