黄金の庭で、あなたと笑う
激しい戦いから、数ヶ月が過ぎた。
龍の里は、かつての静けさを取り戻していた。 いや、以前よりもずっと賑やかになったかもしれない。 黄金の光によって浄化されたこの山には、今では多くの精霊たちが集まり、花々は一年中咲き誇っている。
私は庭に咲いた色とりどりの花を摘み、小さな花冠を作っていた。 手首にある銀の鎖の痣は、今では淡い桜色の花の紋様に変わっている。
「紗良、またそんなところで遊んでいるのか。冷えるぞ」
縁側から声をかけてきたのは、私の愛する旦那様……琥珀様だ。 今の彼は、完全に人の姿で、村の若者と変わらない穏やかな格好をしている。 角もなければ、髪も少し短くなったけれど、私を見つめる眼差しだけは、出会ったあの日から変わらず、熱い情愛に満ちていた。
「琥珀様! 見てください、上手にできたんです。はい、あなたに似合うと思って」
私は駆け寄り、彼の頭に花冠を乗せた。 かつては畏れ多い龍神様だった彼が、少し照れくさそうに微笑む。 その姿があまりにも愛おしくて、私は彼の首に腕を回して抱きついた。
「……お前は本当に、怖いもの知らずだな。神を捕まえて、花冠とは」
「もう神様じゃないんでしょう⁉ 今の琥珀様は、私の大切で、たった一人の旦那様なんだから」
私が甘えるように言うと、琥珀様は降参したように私を抱き上げた。 そのまま、縁側に腰を下ろし、私の体を自分の膝の上に乗せる。 これは、私たちの毎日の日課になっていた。
「……なあ、紗良。お前は本当に、後悔していないか? 神の血を半分受け継ぎ、人間でも神でもない存在になってしまったことを」
「後悔なんて、一度もしたことありません。私、私ね……あなたと同じ時を刻めることが、何よりも嬉しいの。一緒に年を取って、一緒に白髪になって……。それって、最高に素敵なことだと思いませんか⁉」
私の答えに、琥珀様は私のこめかみに優しく口づけた。
「……そうだな。私も、お前と過ごすこの穏やかな日々が、何千年の永劫よりも価値があると感じている。お前が笑うたびに、私の心には黄金の花が咲くのだから」
彼は私の手を握り、その指先を一本ずつ愛おしそうに絡めた。 あなたは、どうしてそんなに甘い言葉を、呼吸をするように囁けるのですか⁉ 私は赤くなった顔を彼の胸に埋め、幸せな鼓動を聴いた。
里の下界では、あの預言者が村の子供たちに昔話を聞かせているという。 『生贄として捧げられた少女が、孤独な龍神の心を溶かし、世界を救った』という、お伽話。 それが私たちのことだとは、誰も知らない。
けれど、それでよかった。 私たちはもう、伝説の存在である必要はない。 ただ、愛し合い、寄り添い合う、どこにでもいる夫婦として生きていければ。
「大好きですよ、琥珀様」
「ああ、私もだ。愛している、紗良。……死が二人を分かつまで、いや、魂が消滅するその時まで、私はお前を離さない」
空からは、祝福の春の光が降り注いでいた。 黄金の乙女と、彼女を愛した龍。 二人の物語は、これからもこの美しい庭で、永遠に続いていく。




