決戦の果てに、誓う永遠
人間の軍勢が戦意を喪失する中、上空でそれを忌々しげに見つめていた天界の女神が、最後の手段に出た。
「……汚らわしい。人間同士の愛などという不確定な力で、天の理を乱すとは。ならば、その力ごと、虚無へ消し去ってあげましょう!」
女神が掲げた漆黒の宝具から、世界を飲み込むような暗黒の穴が開き始めた。 それは周囲の物質だけでなく、魂そのものを吸い込み、消滅させる禁忌の魔術。
「いけない、琥珀様! あの穴に吸い込まれたら、あなたの魂まで……!」
「紗良、私の後ろへ! ……くっ、魔力が足りぬ……!」
心臓を分かち合った代償として、琥珀様の出力は以前の半分以下になっていた。 彼は必死に防壁を張るが、暗黒の力は無慈悲にそれを削り取っていく。
私は琥珀様の背中にしがみつき、必死に願った。 私、私ね……ずっと、あなたに守られてきた。 でも、最後くらい、私があなたを助けたい。 この命、この力、すべてを捧げてもいいから――。
その瞬間、私の胸の中にある琥珀様の心臓が、今までで一番激しく輝いた。
「――紗良、ダメだ! お前一人でその力を使えば、お前の体は……!」
「大丈夫です、琥珀様。私たちは、二人で一人でしょう⁉」
私は彼の制止を振り切り、自らの魂を魔力に変えて放った。 黄金の光が、暗黒の穴を内側から押し広げていく。 それは私の命を削る行為だったけれど、不思議と恐怖はなかった。 あなたの隣にいられるのなら、消えてしまっても構わない。そんな想いが、光をさらに強く、鋭く変えていく。
「あああああああ‼」
眩い閃光が世界を白く染め上げ、女神の悲鳴とともに、暗黒の穴は消滅した。 天界の兵たちも、その圧倒的な愛の波動に耐えきれず、光の彼方へと消し飛ばされていった。
……すべてが終わった。 私は、重力から解放されたように、ゆっくりと空から落ちていく。 意識が遠のき、視界が霞んでいく中で、私は自分の名前を呼ぶ、泣き出しそうな声を聞いた。
「紗良! 紗良、しっかりしろ! 目を開けてくれ!」
温かい腕が、私をしっかりと受け止める。 見上げると、そこには涙を流しながら私を抱きしめる琥珀様がいた。 あなたは、神様なのに、どうしてそんなにボロボロになって泣いているのですか⁉
「……琥珀、様……。私、守れました……か?」
「ああ、守れた。お前が私を、そしてこの世界を救ったのだ。……だから、もういい。もう頑張らなくていい。戻ってこい、紗良!」
彼は私の唇に、魂を分け与えるような深い口づけをした。 分け合った心臓が、再び共鳴し、私の冷え切った体に熱を運んでくる。 彼の愛が、消えかけていた私の命を、この世に繋ぎ止めてくれた。




