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第9話 魔法観察 〜法則を探す科学者〜

蓮は村人たちの協力を得て、日々様々な魔法を観察させてもらっていた。

魔法は、火・水・風・土――基本的な属性が存在するようだった。

だが、その仕組みはまったくの未知だ。


**


「蓮、次はこれを見てくれ!」


村人のひとりが叫び、手をかざす。

小さな炎が空中に現れ、ゆらゆらと踊るように揺れる。


「火の魔法だよ」


蓮はうなずきながら、その動作をじっと見つめる。

動作の前に、必ず短い詠唱のような言葉が入ることもわかってきた。


(発動時に必ず"意識の集中"と"短い発声"……何らかのトリガーとして機能している?)


クロエもまた、映像と音声を記録し続けている。


《魔法動作パターン:火属性・簡易操作型 映像記録追加》


「クロエ、今のエネルギー流れは観測できたか?」


《はい。空間内の熱量変化は検出されましたが、発生源は不明です。

エネルギー保存則に照合不能。未知の供給源が存在すると推定します》


「……やっぱり、既存理論は通じないか」


だが、そこに不安はなかった。

むしろ蓮は静かに笑みを浮かべる。


(だが全くの無秩序ではない。発動条件は一定している。ならば必ず法則はある)


**


別の日には、水の魔法を見せてもらった。

地面に置かれた壺の上に、空中から水滴が集まるように流れ落ちていく。


「これは周囲の水分を集めているのか?」


《周囲湿度の一時的上昇を確認しました。

ただし、凝集過程に既知の重力・気圧変化は伴っていません。》


「空間制御……なのか? それとも物質変換か……」


**


さらに浮遊魔法の実演では、村の青年が小石をふわりと浮かせてみせた。


「これが……重力制御?」


《質量に変化はなく、支持力発生源を特定できません。重力以外の未知の力場を推定中》


**


毎日、新しい魔法を見るたびに、蓮の中で仮説が積み上がっていく。


(これは……)


(世界そのものに流れる"魔力"というエネルギー体系が存在している。そして、人はそれを媒介して現象を引き起こしている……)


(ならば――理屈は必ずある)


**


村人たちは最初こそ蓮の観察ぶりに不思議そうにしていたが、次第に「少し変わった旅人」という認識で受け入れ始めていた。


「本当に魔法を見るのが好きなんだなあ」


「ははは、本当に変なやつだな」


**


その夜。

蓮は焚き火の前で小さく呟いた。


「……この世界の法則、全部暴いてやるさ」


クロエが静かに応答する。


《未知の体系ですが、学習は順調に進行中です。ご安心ください》


「頼りにしてるぞ、クロエ」


蓮の異世界挑戦は、着実に一歩ずつ進み始めていた。

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