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第8話 科学者の好奇心 〜未知の法則に挑む〜

蓮は焚き火の前で静かに夜空を見上げていた。

見慣れない星々の並びが、改めてこの世界の「異質さ」を突きつけてくる。


(やっぱり、ここは――異世界なのか)


昼間、目の前で魔法を見せられてから、否応なく現実を突きつけられた。


けれど、まだわずかに希望も捨てきれていなかった。

科学者である以上、まずは可能性をひとつずつ潰していくのが習慣だ。


**


翌朝――


蓮は村人たちと話している中で、意を決して切り出した。


「……実は、私は――」


クロエが慎重に翻訳を始める。


『私は、とても、とても遠くから来た。

たぶん……この世界の外、別の世界から。』


村人たちは一瞬ぽかんとした表情になった。

だが、次の瞬間にはにこやかに笑い出す。


「ははは、何を言ってるんだい。冗談が上手だな!」


「さすがにそんな作り話は信じられないよ」


蓮は淡く微笑みながらも、内心では静かに整理を始めていた。


(――そうか。彼らには“異世界”という概念すらない。

この世界には、他の世界と行き来する手段は存在していないらしい)


(少なくとも、一般人の知識の範囲では――)


ほんのわずかに期待していた希望が、ふっと消えた。

予想していたはずなのに、胸の奥が鈍く痛む。


**


その様子に気づいたのか、隣にいた青年が声をかけてきた。


「……大丈夫か?」


蓮は、少し間を置いてから微笑んだ。


「大丈夫だ」


もちろん、大丈夫ではない。

だが今は、沈んでいる暇はなかった。


**


しばらく沈黙が続いた後、蓮はふと顔を上げた。


「……魔法を、もっと見せてくれないか?」


クロエが即座に翻訳する。


『もっと魔法、見たい。』


村人たちは驚いたように顔を見合わせ、やがて誰からともなく笑みを浮かべた。


「もちろん! 見せてやるよ!」


「じゃあ、私の火の魔法も!」


「水は任せて!」


**


その後、蓮は村人たちの協力のもと、様々な魔法を見せてもらった。

水を操り、火を灯し、風を呼び、簡単な浮遊魔法まで披露される。


(これは……エネルギーの流れ? 質量移動? 圧力制御? それとも……)


科学の常識では理解不能な現象の数々。

だが――


(いや、必ず法則はあるはずだ)


むしろ不安よりも、蓮の中に強烈な好奇心が湧き上がってくるのを感じていた。


(ここからだ。未知の法則を――解き明かす)


科学者としての白石蓮の、新たな挑戦が本格的に始まろうとしていた。

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