表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/74

第73話テンペ魔導具、始動! レンの新たな一歩

幾度となく通い慣れた道。今日も放課後の鐘が鳴ると同時に、レンは学園を出てマルゴじいさんの店へと向かった。


「マルゴじいさん、テンペ制作用の魔導具、できました」


そう言って、レンは箱型の魔導具を取り出した。見た目は、マルゴじいさんがいつも使っているテンペ用の箱によく似ている。


「ほう……これが魔道具か? 確かに、わしが使ってるのとよう似とるな」


マルゴは興味深げに箱をのぞき込んだ。


「使い慣れた形の方が戸惑わないと思って、外見はなるべく近づけました。使い方も、いつも通り豆を仕込んで入れるだけです」


レンは魔導具の側面を指差しながら説明を続ける。


「中は常に最適な温度と湿度を保つように調整してあります。やることといえば、魔石の魔力が切れたら交換するくらいです。魔力が少なくなると、ここのランプが光って知らせます」


「それと、ここに現在の温度と湿度が表示されます。数値が異常に高かったり低かったりしたら、故障の可能性があるので、そのときは魔石を抜いて僕に知らせてください」


マルゴじいさんは、ふむふむと頷きながら熱心に説明を聞いていた。


「よし、それじゃあ早速試してみるとするか」


そう言って、漬け汁につけておいた豆を取り出し、平らにならして魔導具の中に敷き詰める。そしてスイッチを押すと、ほのかに魔導具が温かくなり、内部の調整が始まった。


「ふはは、こりゃ楽しみじゃのう」


「僕もです。計算上では完璧なんですが……やっぱり実地で試さないと分かりませんから」


ふたりはしばらく和やかに談笑し、やがてレンは「また明日見に来ます」と言い残し、寮へと戻っていった。


レンは寮に戻ると、机の引き出しから使い慣れた手帳を取り出した。テンペ制作用魔導具の設計図と、今日の作業手順を確認しながらペンを走らせていく。


「温度と湿度の調整は問題なかったはず……冬場の乾燥にも対応できるようにしてあるし、うまくいってほしいな」


魔力の消費量、センサーの反応速度、内部の気流設計――すべて綿密に計算したはずだが、発酵は生きた現象だ。理屈通りにいかないこともある。手帳に「一日目、稼働確認済」と記して、レンは軽く息を吐いた。


『初期稼働は安定していました。魔力残量、想定内です』


「ありがとう。とりあえず明日、もう一度様子を見に行こう。ちゃんと動き続けてるかが重要だからね」


確認を終えたレンは、道具袋の点検をし、布団に入った。成功への期待と、ほんの少しの不安を抱えながら――。



翌朝。


レンはいつもより早く目を覚まし、支度を済ませると真っ直ぐマルゴじいさんの店へと向かった。


扉の前に着くと、ちょうど中からマルゴが出てきた。


「おお、レン坊か。待っとったぞ」


「おはようございます。魔導具、ちゃんと動いてました?」


「ばっちりじゃ。夜のうちも、表示がぴくりとも動かん。温度も湿度も安定しとる」


マルゴは奥の作業台へ案内しながら、魔導具を指差した。表示パネルには昨日とほぼ同じ数値が並んでおり、警告ランプも点灯していない。


「内部の豆も、ちゃんと温かい。湿気もほどよい感じじゃ。わしが普段苦労してた調整が、何もせんでも勝手にうまくいっとる」


「よかった……。稼働状態が安定していれば、あとはこのまま数日待つだけですね」


「ふふん、出来上がりが楽しみじゃのう。うまくいけば、わしの人生で一番楽なテンペ作りになるかもしれん!」


レンは表示パネルの数値を念のためメモに取りながら、満足そうに頷いた。


「もう少ししたら、途中経過として菌のまわり具合を確認したいですね。異常がないかも含めて」


「うむ。そのときはまた呼ぶから、いつでも来てくれ」


晴れた朝の光が店の窓から差し込み、穏やかな空気が流れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ