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第71話 マルゴじいさんの元へ行こう〜最適な温度と湿度を探せ〜

放課後、レンは温度計と湿度計の試作品を手に、マルゴじいさんの工房を訪ねた。


「おお、来たか!」

扉を開けたマルゴじいさんが、笑顔で出迎える。

「さっそく豆の仕込みを始めようかの」


「ちょっと待ってください、マルゴじいさん」

レンは慌てて鞄から温度計と湿度計を取り出す。

「今日はこれを試してみたいんです。今この箱の中の温度と湿度を測ってから、仕込みをしてほしいんです」


「おっ、それがこの前言ってた“なんとかメーター”か? ようわからんが、なんかすごいな」


レンは笑いながら、工房の壁に温度計と湿度計を取り付ける。

「これで今の環境を“見える”ようにしました。たとえば、この温度と湿度の状態で仕込んでどうなるか、失敗するか成功するか。そうすれば、どの環境が一番適してるのか、見当がつけられるんです」


「ふむ、確かにそうじゃな。わしは長年の勘でやってきたが、それがわかれば確かに失敗は少なくなるじゃろう」


「マルゴじいさん、前に言ってましたよね? 寒くても暑くてもダメだって。湿気が少ない日もうまくいかないって。だったら、最適な温度と湿度を見極めれば、毎回安定した仕込みができるはずなんです」


「なるほどのう……。こうして“見える”となると、確かに納得しやすいわい。わしの勘に、裏付けができるというわけじゃな」


「それに、これはマルゴじいさんのためでもあります。誰でも簡単に真似できるようにするというより、じいさん自身がもっと楽に、確実にテンペを作れるようにしたいんです。せっかく何十年も培った経験があるのに、失敗なんてもったいないですから」


マルゴじいさんはしばらく何かを思い出すように目を細めてから、笑った。

「坊主……優しいのう。そんなふうに言ってくれると、わしもちと頑張る気になるわい。これがあれば、わしの勘も補強されて、ええ豆ができる気がしてきたぞ」


「じゃあ今日は、この環境で仕込んでみましょう」


「おうとも!」


二人は並んで作業台に立ち、テンペの仕込みを始めた。

温度と湿度が数値で管理される初めての仕込みだったが、マルゴじいさんの手つきは変わらない。

しかし、レンはふと気づく。


(この“変わらない”手つきが、数値で裏付けされたら、いずれ誰かに技術を伝えるときにも役立つかもしれない)


「ようし、これで終わりじゃ。あとは発酵を待つだけじゃの」


「この環境がうまくいけば、次はその温度と湿度を保つマジックバックを作ります」


「楽しみにしとるぞい、レン坊!」


小さな工房の中で、静かに新たな挑戦が始まっていた。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


今回は、レンが作った温度計と湿度計を使って、実際につけ豆の仕込みに取り組む回でした。マルゴじいさんの勘と経験に、数値という「見える」形での裏付けが加わることで、少しずつ魔道具の可能性が広がっていく様子を描いてみました。


理屈っぽくなりすぎないよう、じいさんの素朴な反応も交えながら、レンとのやりとりに温かみを出せていたら嬉しいです。


次回はいよいよ、理想的な環境を保つ“マジックバック”の本格開発に入ります。

どうぞ引き続きお付き合いください!


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