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第64話 術式構造考察編 〜現象を体で理解する〜

 実習で完成させた簡易マジックバッグを前に、レンはじっと考え込んでいた。


 


(空間を折りたたむ? 座標を接続? ……いや、正直まったくイメージが湧かない)


 


 隣では、いつものようにクロエが淡々と補足を始める。


 


《補足説明。折りたたみとは空間構造の高次元展開および接続処理を指します。空間連結は副次元座標情報の固定──》


 


「……ストップ。余計にわからなくなる」


 


 苦笑しつつ、レンは改めてマジックバッグの入り口をじっと見つめた。


 


(でも──現象は確かに起きている。物がこの入り口を通って、どこかに収まっていく)


(なら──一度現象に”触れて”みるのが一番だ)


 


 小さな金属棒を用意し、ゆっくりと入口に差し込む。

 するりと吸い込まれていくが、途中でほんのわずかな感覚が指先に伝わってきた。


 


(……何だ?)


 


 それはまるで、何か柔らかな層を抜けたような微かな抵抗。

 見た目には何の変化もない。ただ、たしかに境界の存在を感じ取ることができた。


 


 レンはゆっくりと棒を引き戻す。


 


(視覚では確認できないが、たしかに今の空間と内部の空間の境界は存在する。この入り口を境に、別の空間が繋がっている──そんな感覚だ)


(穴が開いてるわけでも、何か破れてるわけでもない。不思議な感覚だ……)


 


 ふと、レンはマジックバッグ自体を移動させてみることにした。

 机の上から床へ、さらに横へと位置を変えながら、再び同じように金属棒を差し込む。


 


(……やっぱり、どこに移動しても同じ感覚だ)


 


 今度は最初に置いていた机の上の空間を確認する。

 そこには何の違和感も残っていない。


 


(なるほど──境界は空間の一点に固定されてるわけじゃない。このバッグ自体が常に別空間への接続情報を保持していて、持ち運びできるようになっているのか)


 


 クロエが静かに記録を告げる。


 


《観測記録完了。座標境界面に微弱な座標安定化干渉を検出》


 


 レンは静かに頷く。


 


(仕組みはまだ全然わからない。だけど──少しずつ整理は進んでいる)


 


「頼んだぞ、クロエ」


 


 こうして、レンの空間魔法探究はまた一歩、静かに前へと進んでいった。

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