表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/74

第48話 静かな夜の思索 〜古代と現代の矛盾〜

寮の部屋に戻ったレンは、制服を脱ぐのも忘れたままベッドに倒れ込んでいた。


天井を見上げながら、先ほどまでいた図書館の静謐な空気が、まるでまだ鼻先に残っているかのようだった。


(……かつては精霊がいて、精霊たちが“現象”を起こしていた……)


今日、クロエと共に探し出した一冊の古びた伝記──そこには、火を灯し、水を湧かせ、風を吹かせ、大地を豊かにする存在として“精霊”が語られていた。


人の願いに応じて現象を起こしていた、というのだ。


(じゃあ……その時代の人間たちは、自分の力では魔法を使えなかったのか?)


眉間に皺を寄せながら、レンは思考の糸をたぐり寄せる。


(でも、それはおかしい。ラネアが教えてくれた教会の歴史でも、種としての“人”が変わったなんて記録はなかった。古代人も、俺たちと同じ“人間”のはずだ)


肉体的な構造が変わっていないのであれば、魔力の本質──魔力を持つ器官や構造も、大きくは違わないはず。


(だったら、なぜ古代人は魔法を“使っていない”ように記されていたんだ?)


精霊の力を“借りていた”という表現ばかりで、魔法を“使っていた”という記述は一切ない。それが、レンにはどうしても引っかかっていた。


(そもそも今日読んだ本も、どこか曖昧だった。まるで神話や伝承のような、史実かどうかははっきりしない記録だった)


けれど、そこに記されていた文の一節──


《人の声は、精霊に届く》


その言葉だけが、レンの心に残り続けていた。


(……やっぱり、呪文って“言葉”の命令なんだ)


もしも、呪文の原点が古代文字──精霊に語りかける“言葉”だったとしたら?

魔法という現象は、かつては精霊との“対話”によって起きていたのではないか?


(じゃあ今の魔法は……誰に命令してる?)


その問いは、今日の複合詠唱訓練でも浮かんだ疑問と繋がっていく。

現代の魔法は、まるでプログラムのように構文化され、誰かに命令を出して現象を発動させる。


だが──その“誰か”が、いったいどこにいるのか。


(精霊がいた時代、人は願いを届けるだけで良かった。

でも今は、人自身が構文を組み立て、魔力を通して“発動させる”)


まるで、“精霊”という中間者が消えた世界に、仕組みだけが残されたかのようだ。


(精霊の存在と、魔法の発動。その関係は、今とは全く違っていたんじゃないか……?)


頭の中で浮かんでは消える仮説たち。それらを無理に整理することもせず、レンはただ黙って、考えるままに任せた。


(……明日、もう少し調べてみよう)


この世界の魔法が、どう成り立っているのか。


自分はどこまで、それを理解できるのか。


ゆっくりと目を閉じる。学園の夜は静かに、深く、時を刻んでいく。


──やがて、遠い記憶の地層を掘り当てる日が来るとも知らずに。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


もしよろしければ、ブックマークや評価、感想などもいただけると大変ありがたいです。今後の執筆の参考にもなりますし、何よりモチベーションになります。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ