第47話 王立魔法学園 図書館へ 〜古代文字と精霊伝承〜
授業が終わり、生徒たちがそれぞれ寮や自習室へと向かう中、レンは静かに図書館への道を選んだ。
(……古代文字と呪文の関係、やっぱり気になる)
昨日の授業での説明が、レンの頭の中でずっと引っかかっていた。古代文字が呪文と何らかの関係を持っている可能性——科学者として、その仮説を確かめたくなるのは自然な流れだった。
王立魔法学園の図書館は、石造りの大きな建物だ。アーチ型の入口をくぐると、重厚な書棚が幾重にも並び、天井近くまでぎっしりと本が詰まっている。これが一般生徒が利用できる区画。禁書区や特別書庫は別の許可が必要だと聞いている。
レンは受付に簡単な登録を済ませ、館内に足を踏み入れた。
《レン様、この空間の情報量は膨大です。視覚認識によるサポートを行いましょうか?》
「頼むよ、クロエ。蔵書目録なんてないから、探すのは骨が折れそうだし」
《了解。棚の分類ラベルを読み取り、該当ジャンルを抽出します》
レンが歩きながら書架を確認していくと、クロエはカメラ映像を解析し、背表紙や分類票の文字を順次読み取っていった。
やがて、ある棚の前でクロエが報告する。
《呪文学、古代文明、文字学——該当ジャンルの書架を特定しました》
「よし、ここだな」
古代文字の入門書と思われる分厚い本を引き抜き、レンは席に腰を下ろした。
内容は、現在わかっている古代文字の構造や音の仮説についてまとめたものだった。
(なるほど……音韻の一部は判明しているが、未解読の部分がまだ多いのか。やはり簡単には進んでいないようだ)
ページをめくり続けていたその時——ふと、隣の棚の一冊が目に留まった。
『精霊と古き契約』
そんなタイトルが刻まれている。
「精霊……?」
思わず手を伸ばして本を引き抜いた。
そこには、かつてのこの世界の古い伝承が綴られていた。
――かつて、人は精霊と共に暮らしていた。
火の精霊が焔を灯し、水の精霊が水を湧かせ、風の精霊が大地を潤した。
人は精霊に祈り、願い、精霊たちがその力を貸してくれていたという。
(……まるで、今の魔法現象と同じだ。けど、古代人はそれを自分の力ではなく精霊に頼っていた……?)
さらに読み進める。
――しかしいつしか、精霊の存在は忘れ去られた。
人は呪文を唱え、自らの力で魔法を操るようになったという。
(……精霊の力を借りていたものを、今は人が自力で行っている?)
ふと、村で聞いた「精霊箱」という言葉が思い出される。
(……精霊、か。まさか本当に、そんな存在が?)
《レン様。》
「ん?」
《この情報は、今後の魔法理論研究に有益な示唆を含む可能性があります》
「だろうな……少なくとも、今の授業では教えてくれない内容だ」
——新たな仮説が、静かにレンの胸に芽生え始めていた。
(これが……魔法の本質に近づくヒントになるかもしれない)
こうしてレンは、学園での学びの中で精霊という新たな謎と出会ったのだった。
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