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第36話 王都到着 〜巨大な学問の都〜

村を発って数日――。


広大な平原を抜け、いくつかの町や中継地を経て、ついに王都の外門が視界に現れた。


 


「……あれが、王都……」


 


馬車の座席から身を乗り出すようにして眺めたレンは、思わず息を呑んだ。


遠くからでもわかる高く堅牢な石造りの城壁、巨大な扉が並ぶ複数の出入り口、そして門前に列をなす行商人たちの馬車や旅人たちの列――。


 


(すごい……これが、この世界の首都……!)


 


隣に座るラネアが、静かに微笑む。


「圧倒されますわよね。ですが、王都の凄さはこれからですわ」


 


門を抜け、街の中に入ると、レンの想像はさらに上書きされていった。


石畳の道を行き交う馬車、人の群れ、賑わう露店。商人の呼び声や子どもたちの笑い声、道端の楽団が奏でる笛の音に至るまで、全てが活気に満ちていた。


 


(音も匂いも空気も、全部が違う……まるで別世界だ)


 


「王都の人口は十万を超えると言われておりますのよ。ここは文化と交易の中心ですわ」


ラネアの説明を聞きながら、レンはキョロキョロと周囲を見回していた。


彼が育った前の世界の都市とは違う、魔法文明特有の異様な活気があった。


水を噴き上げる魔導式の噴水、空中をふわりと漂う光の案内表示、魔法で浮かぶ看板など、技術と魔力が融合した生活がそこにはあった。


 


《魔力密度、都市平均値の約4.5倍。高度な魔法都市構造を示唆》


耳元のイヤーデバイスから、クロエが淡々と報告してくる。


 


「……やっぱり、すごいところだな」


 


馬車は人混みを抜けてさらに奥へと進み、やがて街並みの中でもひときわ異彩を放つ巨大な建造物群が視界に入ってきた。


 


「――あれが、王立魔法学園ですわ」


 


ラネアの言葉に、レンは無言で頷いた。


そこには、まさに”都市”と呼ぶにふさわしい大規模な学術区域が広がっていた。


中央には荘厳な本校舎。まるで王城のように精緻な装飾が施され、塔の先端には王家の紋章と魔法陣が輝いている。


その周囲を囲むように、実技演習棟や各種専門校舎、寮、研究棟などが整然と配置されていた。


 


「……まさか、学園都市が本当に“都市”だとは思わなかったよ」


 


《王都中央機能区の約一割を学園が占有。国家予算の約8%を教育および研究に配分。魔法技術は国力に直結する国家戦略分野です》


クロエの追加説明に、レンは小さく笑った。


「まさに国を支える“頭脳”ってことか……」


 


馬車が学園正門前に到着すると、他にも何台かの馬車が並んでいた。

学生らしき若者たちが入学手続きの列に並んでおり、初々しさと緊張が入り混じった空気が漂っていた。


 


「ここから先は、いよいよ学園生活の始まりですわね、レンさん」


ラネアがそっと微笑み、声をかけてくる。


 


「うん……ありがとう。ここまで本当に助けられたよ、ラネア」


 


レンは馬車から降りて、目の前の巨大な門を見上げた。


(村を出て、こうしてここに立っている。それだけでも、信じられないくらいだ……)


 


小さく深呼吸し、手にした鞄を握り直す。


 


「さあ、行こう」


 


静かに、しかし確かな意志を持って、レンは王立魔法学園の門をくぐった――。




入学手続きは整然と進んでいた。

正門から新入生たちが案内役に導かれ、次々と受付へ向かっていく。


ラネアに付き添われ、レンも受付の建物へと足を踏み入れた。制服姿の職員がにこやかに出迎える。


「レン=シライシ様ですね。年齢はやや上になりますが、入学資格は確認済みです。基礎課程からのご入学となります」


レンが少し驚いた顔をすると、職員は続けた。


「当学園は年齢制限を設けておりません。どなたも基礎課程から一から学んでいただきます」


「……なるほど。分かりました」


手続きは流れるように進んでいった。

書類への署名、健康確認、魔力適性の簡易チェックなどが順に行われていく。


魔力適性については、村での診断通り、全属性への適性ありという結果が登録された。


手続きを終えたレンは、寮へと案内される。

王立魔法学園では、全ての新入生が学園寮で生活することが義務付けられていた。


広大な敷地に立つ近代的な建物──男子寮と女子寮がきっちり分かれており、それぞれに厳重な管理が施されている。


「こちらがレン様のお部屋です」


案内された部屋は個室で、清潔なベッドに机と本棚が備え付けられている。

窓からは、手入れされた中庭が見えた。


「……ひとまず、ひと段落だな」


荷物を下ろし、レンは深く息を吐いた。


《新たな生活圏、環境確認完了。学園エリアの地図作成中》


「頼りにしてるよ、クロエ」


クロエの落ち着いた声が、イヤーデバイスからいつものように響く。


そしてその夕方。ラネアが最後の挨拶にやって来た。


「これで本当に、お別れですわね」


「……ここまで、本当にありがとう、ラネア」


「いえ。むしろ、教える喜びを教えていただきましたわ」


そう言ってラネアは、小袋を差し出す。


「村長様から預かりましたの。『学園生活の足しにしてくれ』と。皆、あなたの努力を応援しております」


レンは驚きと共に袋を受け取った。

中には銀貨と銅貨がぎっしりと詰まっていた。


「……本当に、ありがたいです。村のみんなによろしく伝えてください」


「もちろんですわ。学費は国家が負担しますけれど、生活費や教材費はそれなりにかかりますもの。この資金があれば、しばらくは困らないでしょう」


ラネアは少し微笑んで続けた。


「そして、基礎課程を終えて専門課程に進めば、学園内でアルバイトをすることもできますのよ。店舗の手伝いや、魔道具制作の実習販売など、実力次第で収入を得られますわ」


「学生でも魔道具を売るんですか?」


「ええ。市場品ほどではありませんが、簡単な実用品は学内で重宝されておりますの。あなたなら、唯一無二の魔道具師として名を上げる日が訪れるかもしれませんわね」


「……さすがに、それはちょっと言いすぎですよ」


思わず笑ってしまったレンに、ラネアも柔らかく微笑む。


「ふふっ、冗談半分ですわ。けれど、それだけの素質はお持ちですのよ」


レンは、真剣な眼差しに背筋を伸ばして頷いた。


「頑張ってみます」


「お身体には気をつけて。何かあれば、いつでも手紙をくださいませ」


ラネアは一礼し、静かに寮を後にした。


レンは彼女の後ろ姿が門の向こうに消えるまで、ずっと見送っていた。


こうして──

王都でのレンの新たな生活が、本格的に始まった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ついにレンが王都に到着し、新たな生活が始まろうとしています。

初めて目にする大都市と学園の景色に、彼も少し緊張している様子……。


これからどんな仲間や出来事が待っているのか、私も書きながら楽しみにしています。


ブクマや評価、感想などとても励みになります。

これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!

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