第33話 読み書き修行の日々 〜学びは続く〜
魔法学園入学に向けた準備が始まって数日――
レンの読み書き修行は、順調に進み始めていた。
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「……これは"セイレム"、国名ですわ。こちらが"グラーデン"、有名な山脈の名前ですの」
ラネアは地図帳を指し示しながら、読み上げていく。
読み書きだけでなく、この世界の地理や国の名前も教えてくれていた。
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「地名まで覚えるのは大変だな……」
苦笑しつつも、レンはノートに書き写していく。
もともと学ぶこと自体は嫌いではない。
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《記憶補助プログラム、同時並行学習モードを維持中》
クロエのサポートもあり、学習は着実に進んでいた。
「ありがとう、クロエ。君がいてくれて助かるよ」
《お役に立てて光栄です》
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(この世界の文字は意外と規則的だ。音と文字がほぼ一致してる。発音の違いは多少あるが、まぁ実用上問題ないだろう)
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ラネアは微笑みながら、ふと話題を変えた。
「ちなみに、現在のこの国の王はアレストリア陛下ですわ。……まあ、当然ご存じでしょうけれど」
「……ああ、もちろん」
レンはわずかに苦笑して答えた。
もちろん、初耳だった。
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(さりげなく常識まで教えてくれてるな……)
ラネアが優しくレンの事情を察していることは、なんとなく感じていた。
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そして、ふとラネアは少し考えた後に尋ねた。
「ところで、計算の方はお得意ですの?」
「え? ええ、できますよ。むしろ得意なくらいです」
「それは安心しましたわ。王都に行けばこことは違い、お店で必要なものを自分で選んで、お金を払って買う必要がありますの。計算ができないと困ったことになりますから」
「……えっ、あの……お金?」
レンは思わず固まった。
お金の制度については、これまで深く考えたことがなかったのだ。
ラネアはその反応を見て、やはり――と微笑んだ。
「ふふ、やはり王都に行く前に少し教えておきますわね。貨幣の種類や相場を知らないと、騙されることもございますのよ」
「あ、ああ……ぜひ頼むよ」
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こうしてラネアは、読み書きと一緒に
「王都生活に困らないための常識講座」も加えてくれるようになった。
新しい学びの扉は、着実に広がっていく。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
日々少しずつですが、物語をお届けできることが何よりの喜びです。
また次回も、お付き合いいただけたら嬉しいです。




