第31話 行商人との出会い 〜空間魔法という謎〜
村の広場は、久々に少し活気づいていた。
山を越えて訪れた行商人が珍しい品々を並べ、村人たちが集まっている。
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「行商人が来るのは珍しいんですね」
広場を歩きながら、レンがラネアに声をかけた。
「ええ、山道は険しく危険も多いですから。
ですが、たまにこうして珍しい品を持ち込んでくださいますのよ」
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露店の前には、村では見かけない品々が並んでいた。
金属細工の道具、宝石が埋め込まれたアクセサリー、そして――
レンの目を惹いたのは、革でできた小さな袋だった。
だが、ただの袋とは違い、かすかな魔力の気配を放っていた。
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「これは……?」
レンが興味を示すと、商人がにこやかに説明を始めた。
「お目が高い!
これは『魔法袋』――中に入れた物が重さもかさもなくなる不思議な袋でさ。収納用の魔道具ですぜ」
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(収納魔法……?)
レンの科学者としての好奇心がざわめき始める。
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「どんな仕組みなんです?」
「へへ、お客さんも変わってますなあ。
これは"空間魔法"ってやつが組み込まれてるんでさ。
詳しいことは職人の秘伝でしてねぇ。ま、中に入れた物を別の空間に保管してるって寸法です」
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「空間魔法……?」
レンが繰り返すと、ラネアが軽く説明を添えた。
「空間魔法とは、距離や広さといった空間そのものを操作する魔法ですわ。
遠く離れた場所への瞬間移動や、別の空間に収納したり――高度な魔法でございますの」
「なるほど……なかなか面白そうな魔法だな」
レンはしばし考え込む。
(……これもまた、理屈を探りたくなる分野だな)
ふと、疑問が浮かぶ。
「空間魔法って、どうやって学ぶんだ?」
「それは――王都の魔法学園で正式に学ぶ必要がございますわ。
空間魔法は高等魔法に分類されておりますもの」
「魔法学園……?」
レンの目が一瞬輝いた。
(学園か……! 学ぶのは嫌いじゃない。むしろ、面白そうだ)
ラネアが優しく微笑む。
「もし入学をご希望でしたら、私が推薦いたしますわ」
「本当に?」
「もちろんですわ。ですが、入学には条件がございますの。
魔法の初歩が使えることと――最低限の読み書き能力が必要ですのよ」
「読み書きか……なるほど、そりゃ必要だよな」
「ふふ、大丈夫ですわ。私がお手伝いしますもの」
(新たな学びの扉がまた開いた……!)
レンは静かに拳を握り、決意を新たにした。




