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第29話 再構築の始まり 〜魔法は命令体系なのか?〜

土魔法訓練を終えた帰り道、レンは珍しく黙り込んでいた。

今まで積み上げてきた"科学的理解"が、根底から崩れ去った衝撃がまだ抜けきらない。


**


「お疲れ様ですわ、レンさん。少し休まれますか?」


ラネアが気遣うように声をかける。


「……いや、大丈夫だよ。ただ、少し考えたくてね」


**


("魔法"とは結局なんなのか……)


**


火、水、風――

すべての魔法が「存在しないものを生み出す」現象だった。

エネルギー変換ではなく、現実改変。

そして土魔法で、それが決定的になった。


**


(でも……そうなると、新たな疑問が浮かぶ)


**


「ラネアさん。少し、変なことを聞いてもいいですか?」


「もちろんですわ。なんでもどうぞ」


「魔法を使うとき、なぜ呪文を唱えるんです?」


「え?」


ラネアは一瞬だけ不思議そうな顔を浮かべる。


「それは……魔法の術式を正しく発動させるため、ですわ」


**


(やはり……)


**


「呪文そのものは、意味がある言葉なんですか? それとも単なる音?」


「意味は……あるといえばありますが、一般的には『定められた形』を正しく唱えることが重要なのですわ。

たとえ意味を理解していなくても、正しく発声すれば魔法は発動しますのよ」


**


(……まるでプログラム言語だ)


**


コンピュータのコマンド入力のように、正しい構文で命令を送れば動作する。

意味を完全に理解していなくても、文法さえ守れば処理は実行される――それに似ている。


**


「呪文は……魔法発動の命令コード、というわけか」


「命令……コード、ですの?」


ラネアは首をかしげたが、レンの目はどこか光を帯びていた。


**


クロエが静かに補足する。


《仮説更新:

魔法行使プロセス = 呪文(構文)+イメージ入力(出力指定)+魔力供給(実行リソース)》


「そうだ……!呪文は構文、イメージはパラメーター、魔力は演算エネルギー……!」


**


世界を構成する法則そのものに、既に用意された"API"のようなものが存在している。

術者はそれを呼び出し、イメージで細部を指定し、魔力で実行する――

魔法はまるで"世界法則にアクセスする命令体系"そのものなのだ。


**


(……まだ全容は見えない。けれど道は続いてる)


科学者レンは新たな「理屈の扉」を開き始めていた。

お読みくださり感謝です。

引き続き、どうぞゆるりとお付き合いいただけたら嬉しいです。

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