第28話 科学の限界と魔法の本質 〜創造の世界〜
「では、次はいよいよ土魔法ですわ」
ラネアの言葉に、レンは静かに息を整えた。
これまでの火・水・風の習得で魔法の感覚も少しずつ掴めてきた。
だが、土魔法はどこか今までとは違うものになる――そんな予感があった。
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「土魔法は……どういう風に使うんですか?」
素直な疑問を投げかけるレンに、ラネアは微笑んで答えた。
「基本は、土を作り出すのですわ。
火で炎を生み、水で水を出し、風で流れを作るように――
土もまた、何もない場所に現れるのですのよ」
「……土も、"無"から生み出すんですか?」
「ええ。火や水と同じですわ」
ラネアは軽く手をかざす。
すると彼女の掌の前に、ふわりと茶色の土塊が現れ、ぽとりと地面に落ちた。
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(……本当に、"生まれた"。)
レンはしばし言葉を失った。
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クロエが静かに補足する。
《確認:周囲環境に依存せず、魔力のみで土粒子の物質生成が行われています》
「……つまり、空気中の成分を集めているわけでもない?」
《その形跡は検出できません。完全生成現象と推定》
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レンの中で、今まで積み上げてきた理論が静かに崩れていく感覚があった。
火は熱を生み出すエネルギー変換だと解釈できた。
水は空気中の水蒸気を凝結させていると思い込んでいた。
風は対流による流れの操作。
だが――土は違った。
そもそも、何も存在していない空間に、物質が生まれているのだ。
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(……これはもう、完全に創造じゃないか)
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「土の硬さや柔らかさを変えるのも、作り替えてるんですか?」
「もちろんですわ。
細かな粒子の結びつきを緩めれば柔らかく、強く結びつければ硬くなりますの。
火が炎から爆炎、煙、熱風と派生するように――土もまた変化するのですわ」
「……つまり、状態変化の制御、というわけですか」
「そうですわ。どの魔法も基本は同じ理屈ですのよ」
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レンは深く考え込んだ。
(俺は……最初から"誤解"してたのかもしれない)
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火も、水も、風も――
「自然にあるものを操っている」と思い込んでいた。
だが違う。
そもそも存在していないものを、魔力が作り出していたのだ。
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(これは……科学の延長じゃない。
超常現象そのものだ。)
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クロエが静かに告げる。
《魔法現象、現段階では「世界法則の直接改変作用」と分類。
既存科学体系の拡張理論構築が必要》
「……つまり、一度すべてを壊して、最初から理屈を組み直せってことか」
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レンはふっと息を吐き、わずかに笑った。
混乱しているはずなのに、どこか心は静かだった。
(――いいだろう。なら、その"新しい理屈"を探してやる)
科学者の挑戦は、ここから本当の意味で始まるのだった。
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