第27話 風魔法応用 〜制御ミスによる暴走〜
風魔法の基本原理を掴み、順調に練習を進めていたレン。
次なる課題は出力の調整だった。
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「それでは、少し強めの風を出せるように練習してみましょう」
ラネアが微笑みながら提案する。
「分かりました。あまり無理はしないようにやってみます」
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レンは慎重に魔力を流し始めた。
今までよりわずかに多く、けれど暴走しないように――
(よし、まずは周囲の空気を加熱……温度差を広げすぎないように……)
火魔法の経験を活かし、空気の温度をじわりと上げていく。
周囲との温度差が生まれ、ゆるやかな上昇気流が発生。
その流れに合わせて周囲の冷気が流れ込み、自然と風が生まれていく。
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ふわり、と心地よい風がレンの手のひらから流れ出した。
「お見事ですわ! とても安定してますのよ」
クロエが即座に報告する。
《風速:1.3m/s、制御安定、魔力量正常範囲》
(ふむ、ここまでは順調だな……)
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しかし、少し欲を出してみたくなった。
(もう少しだけ、温度差を広げればもっと風量が増えるはず……)
慎重に、ほんのわずか温度上昇幅を広げる。
すると――
――ゴォッ!
予想以上に強い突風が生まれ、ラネアのスカートが大きく舞い上がった。
「きゃっ!?」
「うわ、しまった!」
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クロエが警告を発する。
《温度差制御偏差発生。
局所圧力差拡大による乱流形成確認。安全値超過》
レンは慌てて魔力の流れを切った。
風はすぐに収まり、静けさが戻る。
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「……これは、今までと違いますわね」
「完全に制御ミスです。魔力量を増やしたわけじゃないのに、温度差が僅かにズレただけで暴走しかけた……」
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レンは反省しつつも、興味深そうに顎に手を当てた。
(風は力じゃなく、バランスだ……。
温度差の微調整がすべてを左右する。
これは実に面白い現象だな……!)
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クロエが静かに分析結果を続ける。
《今後は温度制御の精度向上が必要です。
高出力時ほど偏差補正が重要となります》
「だな。……これはまた面白い課題ができた」
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科学と魔法の融合は、失敗の中から新たな理論を生み出していく。
それこそが科学者レンの成長の証だった。




