第26話 風魔法挑戦 〜温度差が生む空気の流れ〜
水魔法の安定化訓練も順調に進み、いよいよ次なる属性に挑む時が来た。
ラネアが微笑みながら告げる。
「さあ、今度は風魔法ですわ」
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レンは内心、少しほっとしていた。
(正直、水魔法より取り組みやすそうだ……)
水蒸気を凝集させる水魔法とは違い、風は空気の流れそのもの。
すでに火魔法や水魔法で「熱と空気の性質」をある程度理解している今のレンにとっては、ある種の延長線上にあった。
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クロエが静かに補足する。
《風は空気圧の移動現象です。熱源操作により圧力差を誘導する方法が有効と推定します》
(つまり、温度差で空気の流れを作り出せばいいわけだな)
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訓練場所は野原に移していた。
開けた場所の方が空気の動きを感じ取りやすい。
レンはゆっくりと魔力を流し始めた。
火魔法で学んだ要領で、手のひら付近の空気をわずかに加熱する。
すると温められた空気がゆるやかに上昇していく感覚が生まれた。
(ここまでは火魔法の延長。問題は――)
今度は逆に、上昇した空気の隙間に周囲の冷たい空気が流れ込むイメージを重ねる。
自然な流れを誘導するように、静かに空間のバランスを整えていく。
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ふわり、と微かな風が指先から生まれた。
ラネアがぱちぱちと拍手する。
「まあ、上手ですわ! 一発成功ですのね」
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クロエが即座に計測する。
《風速:0.6m/s、方向安定。消費魔力量少量、制御安定》
(……やはり、火と水の積み重ねが役に立ってる)
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「風は、無理に押し出すのではなく、流れを作る感覚が大切ですわ。
空気は自ら動こうとしますの。その道を整えてあげれば自然に流れますわ」
ラネアの感覚的な説明に、レンも頷いた。
(結局、全部『流れ』なんだな……)
魔力の流れ、熱の流れ、空気の流れ――
全てが連鎖し合ってひとつの現象を生み出している。
科学の目で見れば、魔法の裏側にある法則は確かに存在していた。




