第20話 出力強化 〜火力上昇への挑戦〜
「では今日は、火力の強さを少しずつ上げる練習をしてみましょう」
ラネアの穏やかな声が、静かな訓練場に響いた。
レンの指先では、すでに小さな火種が安定して灯っている。
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「火を大きくするには、火種に送り込む魔力の量を増やしていきますわ。
でも、急にたくさん流し込むと火が暴れてしまいますの。少しずつ、そっと、ですわ」
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(なるほど。出力を上げるのも、やはりバランスか)
レンは理屈を整理しながら、火種をじっと見つめた。
火力とは、エネルギー供給量の増減。だが、熱が上がりすぎれば燃焼も乱れ、暴発に繋がる。
クロエが冷静に補足する。
《現在出力:基準値の100%。供給増加準備完了》
「クロエ、少しずつ段階的に補助してくれ。出力を5%ずつ上げて様子を見よう」
《了解。出力 105%》
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火種がわずかに大きくなる。
橙色の光が濃く、強くなった。
(成功だ……)
安定を確認し、さらに5%追加。
《出力 110%》
火はさらに大きく。だが、その輪郭がわずかに揺らぎ始める。
《出力変動 ±8%。微細振動発生》
「クロエ、一旦ここで維持だ」
《安定維持モード移行》
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ラネアがそっと微笑む。
「とても順調ですわ、レンさん。
強くしようと欲張りすぎず、少しずつ育てる気持ちが大切なんですの」
「……育てる、か」
レンは静かに頷いた。
(火種は、ただ出力を上げればいいわけじゃない。
小さな火を守りながら、必要な分だけ少しずつ育てる――それが火力制御の本質なのか)
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科学的な数値制御と、魔法の感覚的バランス。
その両方を行き来しながら、レンは着実に新たな制御技術を身につけ始めていた。
そして――
(この制御理論は、きっと他の魔法にも応用できる。
水も、風も、土も――全て、エネルギー変換と供給の調整だ)
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科学者としての探究心が、再び静かに燃え始めるのだった。




