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第15話 魔力圧縮訓練 〜AIが沈黙する瞬間〜

火種を灯す初挑戦は、あっけなく失敗に終わった。

指先は温まるものの、発火には至らない。


**


「レンさん、焦らなくて大丈夫ですわ。魔法は感覚が大切ですから」


ラネアは優しく微笑む。

だが、レンの表情は硬いままだった。


「……感覚、ですか」


**


科学者としての思考が、自然と頭を支配する。

火がつかないのは、発火に必要なエネルギー密度が不足しているから――そこまではわかる。


(つまり、魔力の流れをもっと局所に集中させればいい。

流量そのものは維持し、出口面積を絞る……理屈は単純だ。だが――)


**


《魔力圧縮理論モデル作成不能。人体内部における魔力流路形成の詳細解析は現状不可能です》


クロエの冷静すぎる報告が突き刺さる。


(……だろうな)


未知の法則に支配された魔力。

流せば流れる。だが、それを「細く絞る」とは一体どういう操作なのか――


物理的な管があるわけでも、ポンプ圧力を高められるわけでもない。

理屈があまりに曖昧すぎる。


**


「感覚で……集中させる……?」


繰り返し自分に問いかけるように、レンは何度も魔力を流し続けた。


少しずつ、意識を指先へ絞る。

だが、集中するたびに流れはぶれて分散し、熱量も思うように上がらない。


**


(科学的に考えれば考えるほど……かえってできなくなる)


レンは無意識に苦笑した。


科学という強みが、ここでは呪縛になっていた。


**


クロエが静かに補助報告を続ける。


《流量安定。集中率3%。目標値に未達。》


「……わかってるさ」


圧縮のイメージが掴めない。

指先に集めようと意識すればするほど、魔力は勝手に広がっていく。


(これは……未知の分野だ。科学では説明できない世界……)


**


だが、諦める気はなかった。


(だからこそ挑む価値がある)


**


「もう一度……やる」


レンは静かに魔力を流し直した。

科学理論の思考を一度脇に置き、ただ集中する――"火が生まれる一点を描く" それだけを考えて。


試行錯誤の訓練は、なおしばらく続いていくのだった。

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