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第14話 火魔法初挑戦 〜最初の失敗〜

「それでは、今日からいよいよ魔法の発動練習に入りましょう」


ラネアの穏やかな声に、レンは緊張と期待の混ざった面持ちで頷いた。

これまでの魔力感知と操作訓練を経て、ついに次の段階に進む。


**


「まずは火種発生から始めます。火は生活の中でも最も基本的で、訓練にも適していますわ」


ラネアはゆっくりと手を前に差し出し、魔力を指先に集中させる。

すると、ふわりと柔らかな火の玉が浮かび上がった。


「……やはり、理屈がわからない」


レンは眉をひそめながら、その火種をじっと見つめた。

燃焼は酸素と可燃物があって初めて成り立つはず。

だが、ラネアはただ魔力を流しただけで火を生み出している。


**


クロエが淡々と報告する。


《発光体発生確認。局所温度上昇検出。熱反応による微小燃焼現象と推定。》


「やはり魔力が熱エネルギーに変換されている……が、それだけじゃ火にはならない」


レンは内心で理論を組み立て始める。

(空気中の微粒子が着火点になっている? それとも魔力が可燃性物質を直接作り出しているのか?)


**


「さあ、レンさんも試してみましょう。魔力を指先に流し、『火を灯す』とイメージしてください」


ラネアの優しい声に従い、レンは呼吸を整えた。


(魔力を流す……火を灯す……)


クロエが補助を開始する。


《魔力循環安定化中。流量制御補助開始。変換誘導準備完了。》


レンは集中し、魔力を腹部から指先へと移動させる。


――しかし、指先に生じたのはわずかな温もりだけだった。


**


「……出ない」


「焦らなくて大丈夫ですよ。最初からうまくいく方が珍しいんです」


ラネアは微笑んで励ます。


**


レンは何度か試みるが、結果は変わらない。

火が灯るどころか、指先はほんのり温まるだけだった。


クロエが静かに報告する。


《出力不足。熱量変換が燃焼発火条件に達していません。》


(条件……熱量が足りない? あるいは着火物質が不足?)


(やはり、ただ漠然と「火を灯せ」と言われても、俺の脳は納得しきれない。

現象そのものの仕組みを理解しないと、イメージが曖昧になる――)


**


ラネアが優しく声をかける。


「大丈夫ですわ、レンさん。こうして少しずつ感覚を掴んでいくものです。焦らず続けましょう」


「……はい。もう少し試してみます」


**


こうして、レンの「火魔法」習得は最初の壁にぶつかりながらも、ゆっくりと始まっていくのだった。

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