第13話 魔法発動への挑戦 〜適性診断と新たな一歩〜
「レンさん、そろそろ適性の確認をしておきましょうか」
訓練を続ける中、ラネアがそう提案してきた。
「適性……?」
「はい。魔法の属性適性と、魔力量の測定です。どちらも今後の訓練方針を決める上で重要ですわ」
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教会の奥にある小部屋へ案内されると、そこには透明な球状の魔道具が置かれていた。
中央には淡い光を放つ結晶が静かに浮かんでいる。
「これが属性判定結晶です。手をかざして魔力を流し込んでください」
ラネアが説明するのを聞きながら、クロエが静かに報告する。
《内部構造に結晶反応体を確認。光学波長への可視変換機能と推定。》
《ただし、属性分類理論については学習データ不足のため解析不能です》
レンは軽く息を整え、これまでの訓練で掴みかけた魔力をそっと流し込んだ。
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結晶がゆっくりと光り始める。
赤、青、緑、黄、紫──
次々と色が変化していき、最後には柔らかな白光に収束して止まった。
ラネアは目を見開き、わずかに驚きの声を漏らす。
「……全属性適性ですね! これは本当に珍しいですわ」
クロエは淡々と続ける。
《発光色の変化を観測。複数波長域すべてで活性反応を検出しました。》
《ただし、各波長の属性分類基準は不明。詳細評価は保留中です》
(つまり――反応は観測できるが、意味はわからない、か)
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続いて魔力量の測定へ移る。
別の小型結晶に手を当て、同様に魔力を流し込む。
数値が表示されると、ラネアは優しく微笑んだ。
「魔力量は平均よりやや少なめですね。けれど、訓練を進めるには十分な量ですわ」
クロエも報告を付け加える。
《体内エネルギー循環流量:測定完了。》
《現地基準との比較評価は、学習データ不足のため判定不能です》
レンは静かに頷く。
「出力が低いなら、効率を上げればいい。制御と最適化次第で、いくらでも方法はあるさ」
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新たな研究課題がまた一つ、頭の中に積み上がっていく。
その思考が止まる気配はなかった。
ラネアが穏やかに告げる。
「では、次回からはいよいよ魔法の発動訓練ですね」
「――お願いします」
こうして、レンは次なる挑戦――初めての魔法発動へと踏み出していくのだった。