表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/74

第11話 魔力検知 〜クロエの初成功〜

もう一度やってみましょう」


ラネアの穏やかな声に促され、レンはゆっくりと目を閉じた。

呼吸を整え、意識を体の内側――魔力核コアと呼ばれる場所へと向ける。


(……感じろ。俺の中に流れているはずの、魔力を――)


だが、やはり何も感じない。

身体の中心は静まり返ったまま、ただ虚無のように広がっていく。


**


「大丈夫です。焦らず続けましょう」


ラネアは優しく微笑んで励ましてくれるが、レンの内心は少しずつ重くなっていた。


その横で、クロエは淡々とレンの体内をスキャンし続けていた。


《スキャン開始……検出失敗。》

《エネルギー循環パターン不一致。》

《波長補正試行……失敗。》

《生体信号同期試行……失敗。》


何度も、何度も、失敗の報告が重ねられていく。


(やはり……ダメなのか?)


**


別の日の訓練でも状況は変わらなかった。

レンは繰り返し魔力感知の練習を続ける。

だが、自身の魔力を感じ取ることは依然できなかった。


クロエもまた、異なるアルゴリズムを次々と試していた。


《振動共鳴スキャン……失敗。》

《電磁場干渉解析……失敗。》

《波動干渉理論適用……失敗。》


レンの内心にも、少しずつ諦めの色が滲み始める。


(……地球人の俺には、やっぱり魔力は存在しないのかもしれない)


**


それでも訓練は続く。


さらに数日が経過したある日――


レンがいつものように集中していたその時、クロエの声が変わった。


《……再解析を行います。》


レンの心臓がわずかに跳ねる。


《これまでの失敗データ全てを統合し、新たな補正アルゴリズムを試行中……》


短い沈黙が続いた。

その間にもレンはひたすら集中し続ける。


そして――


《……未知なるエネルギー循環パターンを検出しました。》


「――!」


クロエが静かに続けた。


《レン様の体内に、他個体と同様の微弱なエネルギー循環を確認しました。

魔力と思われる内部エネルギーが存在しています。》


レンは目を開け、ゆっくりと息を吐いた。

胸の奥にじわりと広がる安堵と高揚感。


(……あったんだ、俺の中にも)


クロエが少し控えめに付け加えた。


《……解析に時間がかかり、申し訳ありません》


レンは小さく笑った。


「いいさ、クロエ。よく頑張った」


ようやく、最初の一歩が踏み出せたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ