序章 魔王と創造主
もし悪魔の王が、人間として生まれ変わり、この存在全ての中で最も愛する存在と一緒にいるためだけに生きていると告げたら、あなたはどう思うだろうか?
知りたいかい? まあ、私が手に持っているこの手紙に書かれていることを話してあげるよ……え? 私のことは気にしないで。私の正体はもっと後になって明かされるから。
『ずっと昔、いや、存在も無存在もない時代に、ただ一つの存在があった。その存在はすべてを包含し、すべてはその中から生まれた。絶対的な存在、それは神だった。すべてのもの、すべての物語を創造したのは彼だ。しかし、それらを創造する前に、彼は一つの存在を創り出した。人間の形に具現化した彼は手を吹きかけ、その手を閉じてさらに吹きかけると、一人の子供が生まれた。
その子供を成長させるために、神は時間を創り出した。子供が数年成長すると、その子供が世界に一人だけであることに気づき、彼は今度は少女を創造した。
ハグキとリョウコ、それが彼らの名前だった。
二人にはそれぞれ役割が与えられた。少年は破壊も司る悪魔王であり、少女は創造者であった。それが、神が孤独な世界に選んだバランスだった。
少年の目は深紅、少女の目は海のような青、二人の髪は銀色に近い白い色だった。
神は光を創り、それに息を吹き込むことで天使たちが生まれ、少女のそばに寄り添った。一方で、彼は闇にも息を吹き込み、悪魔や大悪魔たちが生まれた。
世界は彼らの創造によって次第に広がり始め、時折揺れ動くことがあった。善と悪、存在と無存在が交錯する中で。
悪魔王ハグキは、神が彼を創ったように、一人の少女を創造した。彼女は妹として、マリーという名を与えられた。そして、彼らの姓は「ファイルスワー」だった。
一方で、神がハグキ。に同行させるために創造した存在たちは、倫子、隼人、喜稔という名前だった。しかし、リンコは自らの意思でハグキに仕えることを選び、彼の「パズル」として存在した。
この子供たちは幾度となく戦いを繰り返し、大人になっても勝敗はつかなかった。だが、ある日、その二人の間に深い感情が芽生えた。
神は新たな神々を創造した。それは「外の神々」と呼ばれ、小さな世界を監督する役割を与えられた。
やがて神は、誰も彼に直接干渉できないようにするためのものを創造した。それが「外界」と呼ばれるものであり、「高位世界」と呼ばれるもののさらに外側に存在した。
その中で、ハグキとリョウコは最初に「ニュータイム」という名の階層を作り上げた。それは、彼らが肉体的に20歳まで年を取ることができるための時間だった。
しかし、何の前触れもなく、リョウコは姿を消した。
手がかりは何もなく、突然、彼女は存在しなくなったかのようだった。
ハグキはそのことで動揺することはなく、彼女の天使たちも悲しむことなく、ただ彼女の玉座を守り続けた。彼らも彼女がどうなったかを知らなかったが、彼女が戻ってくることだけは確信していた。
ハグキは、玉座で考え続けた末、転生することを決意した。そしてリンコを呼び、そのことを秘密にするよう頼んだ。
ハグキが転生先として選んだのは、27歳の男性|ハクロウと26歳の女性佳澄という若い夫婦だった。
結局、これは世界のバランスを保つためのことだったのだ』
それが、この手紙に書かれているすべてだ。私は彼と同じように全てを捨ててこれを行う気はない。私の記憶も、全能の力も。だから、私のやり方でやらせてもらう。私の能力を通してここから見ていると、彼に名前が与えられたようだ。
「佐々木ミナミだと?」
彼には将来、2人の妹ができるようだ。来年には「佐々木美翔」が、その3年後には「佐々木茜」が生まれる。
さて、私の番のようだ。では、また会おう。この手紙は持っていくよ。
さようなら。
その手紙を読んだ人物は、文字通りそれを持ち去った。そして、日本の東京都渋谷区、ハグキはすでに生まれていた。それは、その人物が未来を見たかのようだった。
そして、彼女が言った通り、1年後には妹の美翔が生まれ、その2年後には茜が生まれた。こうして、この物語が始まった。