第35話
俺は幼馴染と付き合っていて、義妹とも付き合っている。
二人とも俺のカノジョ。可愛くて綺麗で優しくて、最高の女の子だ。俺にはもったいないといえる。
そして驚くなかれ――俺と義妹の親は滅多に家に帰ってこず、ほとんど二人きり。そして幼馴染も我が家に入り浸っている。
条件は完璧に揃っている。普通ならヤリまくってておかしくない、というか間違いなくそうなるだろう。実際友人たちにはそう思われているかも。
しかし俺たちはまだ一線を越えていなかった。
事情があるのだ。
俺は高校在学中はセックスをできない体になっていて、そのわけを二人に話すこともできない。
しかし二人はそんなことを知らないので、ところかまわず誘惑してくる。困った奴らだ。
二人はどうしても俺とセックスがしたいらしい。
しかし俺はなにがあってもしてはいけない。
俺たちの攻防は早朝から始まる――
▼△▼
目覚める。
珍しいことに俺はベッドの上で意識を覚醒させた。今日は確か……月曜日のはず。学校に行かなくてはいけない。
体の上にはのしかかるように制服姿のカエデがいて、頬をほんのり赤く染めて身をくねらせている。
「おはよう」
「ふああ~、おはよ」
「あら、珍しい。挨拶を返してくるなんて」
カエデは俺の頬にそっと口づけを落とした。そのまま顔を寄せて胸元に鼻先をこすりつけてくる。甘えたいようだ。
俺は欲望のままカエデを布団の中に引きずり込み、がばりと覆って隠した。暗闇の中で見つめ合う。
「一緒に二度寝するぞ」
「えぇ……」
困ったような呟きを漏らすカエデをぎゅっと抱きしめてその温もりを感じながら、俺は目を閉じた。こうしていると落ち着く。
「ほんとに?」
「……ほんとじゃない。二度寝して、昼までいちゃいちゃだらだらして、一緒にゆっくりご飯を食べて、散歩に行ったりしたいけど…………学校に行かなくちゃ」
「そうね」
「でもあと五分だけ」
優しい手が俺の頬をくすぐる。
「しょうがないわね」
ほっそりとした指先が俺の寝間着の上を這いまわって――カエデの瞳が怪しく輝く。ぺろりと舌なめずりをした。
「あの、カエデさん? なにをするおつもりで?」
唐突な"あの感覚"。時間停止だ。
気づけば俺の両手首足首はベッドに縛り付けられ、白いシーツの上で無様な大の字を晒していた。
「クソッ! おい! 朝イチでどういうつもりだ!?」
「なによ、こんなに大きくさせてるくせに」
「やめろ! 離せ!」
「今日こそは許さないから。ふざけた言い訳を抜かすのはやめること――お腹が痛いとか、ちんこが乗り気じゃないとか、そんなの聞き飽きたから」
鋭く冷たい声音。カエデは制服を絶妙にはだけさせた蠱惑的な姿で俺を誘惑する。
「ま、まて。コンドームをつけたとしても避妊は確実じゃない。俺たちにはまだ早いと思うんだ」
カエデは首を横に振った。
「コウは嘘をついてる。それが本当の理由じゃないわ。本当はやりたくて仕方がないくせに、何かを隠してる――」
この幼馴染に嘘はつけない。隠し事はできないのだ。しかし秘密と貞操は守らなくてはいけない。俺とカエデの幸せな今後のために――
カエデが「えいっ」と叫んで俺のズボンをパンツごと引き下げた。俺の自慢の絶倫チンポコが戦闘状態で姿を現す。
「ここはこんなに素直なくせに!」
ふざけたセリフを発し、カエデは口を大きく開いた。
「本当の理由を話さないなら覚悟しなさい――ッ!」
そのあとは言葉では表現できないほど気持ちよく、そして苦しい時間が続いた。カエデは意地悪である。もちろん五分以上かかってしまった。
▼▽▲
学校での休み時間。
トイレからの帰り道、濡れた手をハンカチで拭きながら廊下を歩いていたのだが……
"あの感覚"。時間停止だ。
俺は瞬間移動していた。廊下ではなく、トイレの個室の中にいる。しかも女子トイレだ。薄い壁の向こうで女子たちがおしゃべりしながら入ってきたり出ていったり。
クソッ! 最悪だ。
この強引なやり口は……シオンである。
彼女は俺の後ろにいた。大きな胸を押し付けるように抱き着いてくる。両手は少しずつ下の方へ。
「声をだしちゃダメだからね」
耳元でささやかれるとぞくぞくと体が震える。
「これ、昨日コウくんが見てたエッチな動画の再現だから。どう? 興奮する?」
最悪だ……なんでそのことを知られてるんだ。時間停止能力者が相手ではやはりプライバシーなんてものは存在しないらしい。
シオンはすでに下着姿になっていた。お気に入りの黒い下着だ。俺の手を取り、導くようにその滑らかな手触りのパンツへ――
「えっち、しようよ。わたしね、ピルも飲んでるんだよ」
こいつは日に何度もこうして俺を誘惑してくる。
「高校生のうちにシておかないと絶対後悔するって。ね?」
その誘惑は強烈だ。ついつい応じてしまいそうになる。
しかし、こいつはクソ雑魚なので問題ない。
振り向き、あごを持ち上げ、目を丸くしているシオンの瑞々しい唇に吸い付いて舌をねじ込む。
前触れのない激しいディープキス。舌を散々に嬲ってやればシオンはすぐに涙目になって体をふりふり、手は俺を突き放そうとするが弱々しくて抵抗にはなっていない。
あっという間に顔をとろけさせたシオンはよだれを垂らしながら便座の上に座り込み、上目遣いになって俺を見つめる。
「ちょっと……急に……やめてよ……」
なんだこいつは。俺が普段お前たちの能力でどれだけ好き勝手されていると思っているのか。
「声を出すなよ」
俺はシオンの熱を帯びた耳たぶにかじりつくようにして囁く。
「指でしてやる。休み時間の間でイクのを我慢出来たら、セックスしてやる。いいな?」
シオンはこくこくと首を振って言う。
「絶対、負けない――」
だが問題ない。こいつはクソ雑魚だ。
そして俺の指技は日々磨きがかかりすでに神の領域へ至り始めている。シオンに勝ち目なんて万に一つもないのだ。
その柔らかな太ももに触れる。すべすべで、むっちりと肉付きが良くて、指を押し込んだだけ跳ね返してくるような弾力がある。大好きな太ももだ。
「ぁ……ん」
ただ太ももに触れただけなのに、快感を予期し渇望するシオンの体は火照り始める。俺の技は進化しているのに、シオンの体は日ごとに弱くなるのだ。負けるはずがなかった。
「何回イクかしっかり数えとけよ、このむっつりド変態女め――」
十分後には白目をむいて口をだらしなく開き、舌を仕舞えなくなっているシオンがそこにいた。女子トイレはすでに静かになっていて、チャイムが鳴る。授業開始だ。
「シオン、行かないと。授業始まったって」
「む、むりぃ……」
▼△▼
授業中。
英語の授業だ。あくびを噛み殺しながらパラパラ教科書をめくり、一年生のうちにやった内容を見返してみるが、ぜんぜん理解できない。
先生が朗読している内容も呪文にしか聞こえない。だめだ、眠たくなってきた。しかし眠るわけにはいかなかった。英語の担当は鬼の山田だ。
ふと、"あの感覚"。時間停止だ。
異変はすぐに分かった。
俺のチンコが――射精寸前で寸止めされている。神によって魔改造された相棒はズボンを引き裂かんばかりに上を向き、どくどくと涙を流していた。
許せねえ。許せねえよこんなの。
ノートの上には文字がある。
――おねだりして♡
「ふざけんじゃねえ!」
俺は叫び、立ち上がった。
「時間停止して俺のチンコにいたずらするな!」
そんなのずるいだろ! 俺の能力はクソしょうもない呪いなのに、なんで二人だけ時間停止なんて能力なんだよ!
「今回のは――いったいどっちだ!?」
左右から聞こえてくるクスクス笑い。
右を見る。カエデと目が合って、唇の動きだけで「シオンがやったの。私は止めたけど」と伝えてくる。
左を見る。シオンと目があって、唇の動きだけで「カエデちゃんがやりました。二回も」と伝えてくる。
こいつらは本当に学ばないらしい。
「覚えてろよッ!」
そして”あの感覚”。
俺はへなへなと崩れ落ち、相棒もすっかり小さくなっている。ノートの上には新しい文字――「ごちそうさま♡」とだけ。
大きく息を吐きだした。鬼の山田がこっちを睨んでいる。
やってしまった……
しかしもとはと言えば二人が悪いのだ。俺になんの非があろうか。俺に責任なんてない。
「先生、違うんです。時間停止能力は実在するんです。何回も言い争ってますけど……ほんとなんです!」
これが俺の日常だ。攻防は深夜まで続く。
まだ二年生も始まったばかり。あと約二年もこんな生活が続くと思うと血管がちぎれそうだが、耐えなくてはいけない。
でも大丈夫だ。耐えられる。なぜって二人を大好きだから。二人との幸せな将来のためならばなんだってできる気がする。
改めて俺の幼馴染と義妹を紹介するならば。
最高にかわいくて、最高に優しくて、俺のことを愛してくれて、ちょっとだけスケベ。
そしてなにより――時間停止能力者だ。
【義妹か】どちらかが時間停止能力者のようだ【幼馴染か】
完結




