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【義妹か】どちらかが時間停止能力者(スケベ)のようだ【幼馴染か】  作者: 訳者ヒロト


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第34話

 俺は中庭にやってきた。西日を受けて百葉箱のような木箱が長い影を落としている。


 その箱の上。やはりあいつは立っていた。


 うちの制服を着たロリっ娘だ。ふんぞり返って俺を見下ろしてくる。


「遅かったのお。待ちくたびれて天罰を下すところだったぞ」


「……二人がなぜ倒れたか知ってるんだろ? お前のせいなのか? ――説明しろ」


 俺の声は自分でも驚くほど低く冷たかった。しかし少女に怯える様子はない。


「二人は代償を支払った。それだけじゃ」


 焦らすような口ぶりに思わず声が荒くなってしまう。


「代償ってなんだよ!?」


 少女はにやりと笑った。


「時間停止の代償となるのは当然、時間だ。二人は今まで止めてきた分の時間に応じて眠って過ごすことになる」


 悪寒が背筋を襲って首筋の毛を逆立てる。


 今まで止めてきた分の時間。それは一体どれほどのものだろうか。今日だけでも両の手の指以上発動している。昨日はもっとだ。積み重ねればそれは――


「まあ、そんなに長くない」


 少女はなんでもないことのように言う。


「わらわの感覚で言えば一瞬じゃ。能力が二人分なので二乗倍して……一年に満たないくらいだな」


「待て待て、二乗倍って、おかしいだろ。勝手に二乗倍するんじゃねえ」


 一年に満たないくらい。その期間を寝たきりになるというのは学生にとっては致命的だ。留年は確定する。友だちからすべて一年遅れていく。シオンはスマホ容量いっぱいにするくらいに行事ごとの写真を撮るし、気の早いカエデはもう修学旅行先を調べ始めているというのに……


 俺を助けたとかそんな理由で二人からそれが奪われるなんて……だめだ。


 少女は試すような視線を投げてくる。


「卒業、あるいは退学でも代償は消える。わらわはこの五月雨学園の神様であるからして、能力も代償も制服を着る間だけ。心配は不要だ」


「不要だ、じゃねえよ……」


 俺の声は震えていた。


「あいつらにはこれから楽しい学校生活が待ってるんだ。それを邪魔させはしねえ」


 少女がすっと目を細め、神秘的威圧感を纏う。


「どうすると? 五月雨コウ。五月雨の名を冠し、しかし血を引かぬ子よ。わらわは血縁には甘いが余所者には容赦ないぞ」


 見られるだけで肌が粟立ち逃げ出したくなるような重圧。この感覚は二度目だ。


 前に伝えられたのは「神頼みには生贄が必要だ」ということ。


 そして今回も――


「俺が代償を引き受ける。寝たきりでもなんでもいい。だからあいつらは……目覚めさせてくれ」


 二人のいない学校なんて意味がない。


 少女は求めていたものを得たとばかりに満足気でにやりと笑う。


「良い答えだ。しかし可愛いシオンたんはそれを望まないだろうなあ。今度はあの子が犠牲になりにくるかもしれんし……どうしたものか」


 少女はぽんと手を打った。


「寿命でも削るか。うんうん、それがいいな。文句は言わせぬぞ」


「言わねえよ」


 寿命が削るなんて現実味がない話だ。二人が楽しく青春を送れるなら安いもん。心の底からそう思える。


「よろしい。しっかり貰い受けた」


 少女は仁王立ちのままだが、すでに徴収は終わったらしい。実感はないが……すぐに死なないならそれで充分だ。二人から告白の返事をもらうことができたら、そこで死んだっていいと思える。


 少女はぺろりと唇を舐めて、若干弾んだような声で話す。


「少々話を変えて――お主が五月雨の名を持つ以上、お主が望むなら能力を与えてやろう」


「え……」


 驚きで体が動かなくなる。能力を貰えるなんて……想像もしていなかった。


「望むか? ただし誰にもバレてはいけない。バレれば代償を払ってもらう」


 そんなの答えは決まっている。


「ください! とびきり強くてかっこいいやつをください!」


 そうだろ。二人が時間停止能力者で俺だけ何もないなんて不公平だ。学生のうちの能力を使って一生分の金を稼いでやる。


 少女は笑みをいっそう深める。


「能力はお主に最もふさわしいものになる。気張るがよいぞ」


 少女はふわりと跳び、重力を感じさせない軌道と速度で俺のもとに降りてくる。そして宙に浮いたまま静止し、俺の額に指で触れた。


 バチバチと電流が流れる。視界が真っ白に染まって、炎のように熱い何かが体の中の駆け巡った。作り替えられていく。


 それは一瞬だった。それでも脳に焼き付くほど強烈な体験。


 膝から崩れ落ちて肩で息を吸い込む。


 跪いたようになる俺の前で――少女は腹を抱えて大笑いを始めた。


「かっはっはっは! お主って最高に笑える! あまりに滑稽じゃ!」


「はあ? 何言ってんだよ。俺の能力はなんだ。重力操作とか召喚獣とかそういう系で頼むぞ」


 少女は笑うあまりに目尻から溢れた涙を拭い取る。


「お主の能力は――」


 息を呑む。俺の能力はいったい何だ。


「――スーパー絶倫確定孕ませである」


「は?」


 理解ができなかった。


 スーパー絶倫? 確定孕ませ? それはいったい……なんなんだ?


「女好きでクズなお主にぴったりだな。ゴムも貫通して孕ませる最強無敵の能力じゃ。世の男はこぞって羨むだろう」


 ゴムを貫通……?


 戸惑うあまりに喉が渇いて言葉が出てこない。スーパー絶倫はまだいい。むしろいい。しかしゴムを貫通して確定で孕ませるなんてのは……


 俺の口から出てきたセリフはあまりにみっともなかった。


「二人とセックスできねえよ……」


「なぜだ。愛するなら子を産ませればよいだろう。好きなだけポコポコポコポコ、泡のように五月雨家の血筋を産み増やすのだ」


「学生のうちはさすがにちょっと……」


 冷や汗が背中を伝っていく。学生のうちに妊娠させるのは俺的にはナシだ。俺はまだ父親になる準備ができていない。


 二人としこたまセックスしたい。生意気な二人を分からせたい。時間停止中に散々弄んでくれた復讐をしてやりたいが……


 どうやらしばらくお預けらしい。


 理解すると怒りが湧いてくる。


 俺は吠えた。


「なんで俺だけこんなふざけた能力なんだ! 能力ってより呪いじゃねえか! やり直せ!」


 少女は笑う。


「これがお主にふさわしいというだけ。笑えるなまったく。――また会おうぞ」


 出会いも唐突だが別れも唐突だった。耳に残る薄い笑いを残し、少女の体はゆっくりと薄くなって見えなくなっていく。


 中庭にぽつんと一人立つ俺。


 呟く。


「まあたった二年くらいの辛抱だ。卒業するまで我慢すればいい……」


 言い聞かせて心を上向きにする。


 そう。俺はこれから二人と最高に楽しい青春を送るのだ。


 エロい何かがなくたって、二人といる時間は楽しい。落ち着くし、笑えるし、心が温かくなる。愛してるのだ。セックスなんて我慢できる。


「まあ、セックス未満のお遊びを少し楽しむことはあるかもしれないけど……」


 妄想が膨らんでいく。


 セックスできないということは、二人にしっかり説明すれば分かってくれるはずだ。寿命を犠牲にした云々を話すと怒りそうだから隠しておいて、ふざけた能力をもらったという点だけ話すことにしよう。


 そうと決まれば早速――


 俺の足は部室へと向かう。二人はもう起きているだろうか。早く無事な顔を見せて安心させてくれ――


 ふと、頭の中に声が響いた。


「えーゴホン。馬鹿なお主にもう一度教えておくが、能力はバレてはいけない。本来なら代償は発動してのお楽しみだが、特別サービスで教えてやる。お主の代償は――チンポコ爆散である」


「は?」


「能力は最強のチンポ。代償はそれを永遠に失うこと。天秤は釣り合っておるな」


 少女の声はそこで消えた。


 俺は腰についている相棒の存在を確かめる。神に作り変えられた俺のマジカルチンポはいつもと変わらぬ様子でじっとしていた。


 こいつが爆散するなんて……


 絶対に避けなくてはいけない。


 能力は卒業するまでz卒業したあとは二人とやりまくるのだ。それまで絶対に死守してみせる!


 俺は決意した。


 能力を二人に話すことはできない。二人とはセックスしない。たとえどんなことがあろうとも――



▼△▼



 部室に戻る。扉を開けるとそこには――


 いつも通りのカエデとシオンがパイプ椅子に座っていた。心配そうな表情のアキもいる。


 俺が入ってくるなりアキはほっと息を吐いて胸を撫で、二人は満開の笑顔になる。


 頬を膨らませたシオンが言う。


「もう! どこに行ってたの? 寝ちゃったわたしたちを放っておいて」


 俺は頭を掻いて笑ってみせる。


「トイレに行ってたんだよ。我慢できなくてさ。それより、体は大丈夫なのか?」


 シオンはカエデと目を合わせてにこりと笑った。


「うん。なんともないみたい。たぶん神様がくれた天罰(・・)なんだけど、思ったよりしょぼかったね」


 まったく呑気なやつだ。俺が体を張ったことも知らずに……だけどそれでいい。シオンの笑顔のためなら、俺の寿命なんていくらでもくれてやる。


 しかしカエデは不安を表情に滲ませていた。すぐに俺のそばにやってきて囁く。


「トイレなんて嘘でしょ。どこに行ってたの? もしかして、またあなたが……?」


 まずい。


 カエデの瞳の中に映る俺の顔はめちゃくちゃに引きつっている。


 この幼馴染は勘が良すぎる。俺は秘密を隠し通せるだろうか。


「ねえ、説明してちょうだい。嘘なんてすぐに分かるんだから。催眠の時もそうだったし……」


 黒い瞳がゆらゆら揺れて心配そうに見つめてくる。


「もしかしてコウが……」


 クソッ! 俺は心の中で盛大に毒付き、どうにかはぐらかす方法を考える。


 そして――


「カエデ! 愛してるッ!」


 思いきり抱きしめた。カエデの綺麗な顔が驚きに染まって、すぐに嬉しそうにほころぶ。ちょろい女だ。


「ありがとう……」


「シオン! 愛してる! お前も来い!」


「はーい! 二人とも――大好きっ!」


 テーブルを飛び越える勢いでシオンが抱きついて来て、俺をカエデごとまとめて抱きしめた。ぐりぐりと頭の先を押し付けて来て、俺たち三人は額をぶつけながら見つめ合う。


 アキが気まずそうに「お先に失礼!」と叫んで部室を走って出て行った。


「まだ返事を聞かせてもらってないから、もう一度言う。――二人とも愛してる。このさきもずっと三人でいたい。だから二人まとめて――俺の彼女になってくれ」


 カエデとシオンは涙で目を潤ませて、頷き合った。声を合わせて言う。


「「はいっ!」」


 俺は二人をもう一度強く抱きしめた。


 これが最高のカタチだと証明しないといけない。カエデの親もうちの親も納得させないといけない。俺は二人と一生を共にしていくつもりだ。


 それには今のクズな俺のままではいけない。変わらないと。


「俺を選んでくれたこと、絶対に後悔させないから」


 二人は微笑む。


 そして――


 “あの感覚”。


 時間停止だ。二人は性懲りもなくまた使ったらしい。


 まばたきを繰り返す俺を挟む二人は――下着姿になっていた。


 視界が肌色で覆い潰されていく。女の甘い匂いが鼻から入って脳を溶かす。二人はあまりに魅力的だった。


 二人の指先が俺の指を絡め取ってがっちりと握り込み、それでも片手を余らせている二人の手は俺の股間を上から撫で回して――


 カエデが言う。


「もう我慢できないの。ずっと動かないコウ相手にご奉仕してばっかりで……そろそろ交代じゃない?」


 シオンが言う。


「どっちが先にするか、どうやって決めよう。これは世界を二分する問題だよ」


 カエデが言う。


「……コウに手で弄ってもらって、先に達した方が負け。これが公平でしょう」


 シオンが言う。


「いいね。カエデちゃんはよわよわだから、コウくんの童貞は貰ったも同然だ」


 俺はなんとか声を絞りだした。


「ちょ、ちょっと待ってくれない?」

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