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【義妹か】どちらかが時間停止能力者(スケベ)のようだ【幼馴染か】  作者: 訳者ヒロト


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第32話

 文芸部部室。


 日当たりが悪く、照明をつけなければ夜のように薄暗い。


 俺はそこに一人で座っている。


 手の中にあるのはブラックライト。そしてブラックライトで発光する口紅。


 俺はこの口紅を一日中つけていた。DIOとキスしたときも。きっと移っているはずだ。


 そしてこのライトで……


 ボタンを押し込む。紫色の光が筋となって部室を照らした。


「いけるはず」


 もう一度ボタンを押せば部屋は夕闇に逆戻りだ。


 大きく息を吐き出す。二人はもうすぐにやってくるはずだ。


 DIOはどちらか。まずそこを明らかにしなければ先へは進めない。


 頭の中に浮かんでくるのはここ最近のDIOの行動だ。


 かなり前から助けてくれていたのだろうが、俺がその存在に気付いたのは英語の実力試験。


 そして俺の制服を脱がした件。


 アキと俺のパンツを手品みたいに消したり出したり、そしてシオンのパンツをくれた。


 俺をパンイチにしたこともあった。


 催眠にかかった俺の興奮を何度も鎮めてくれた。


 溢れそうになったカレーを救ってくれた。


 他にも細かいことたくさんある。先生の問いに答えられない俺を助けてくれたり、忘れ物を届けてくれたり。


 思い返してみてもカエデかシオンか推測はできないが……


 答えはすぐだ。


 扉が開いた。


 神妙な面持ちのカエデと朗らかな笑顔のシオンが入ってくる。


「暗くない? 電気どこ?」


「つけなくていい。節約だ」


「普段からここでサボってお茶沸かしてるくせに、何が節約なのかしら」


「まあ座れよ」


 手で着席を促せば、二人は素直に座ってくれた。テーブルを囲んでパイプ椅子に腰を下ろす。


 シオンが部屋の中を見渡しながら口を開いた。


「なんでこの部屋なの? 家でいいじゃん」


「…………」


 痛いところを突かれてしまった。暗くないといけないのだ。ブラックライトのことを悟られては確認する前に奪われる可能性がある。バレてはいけない。


「俺は文芸部室が好きなんだ。本の匂いがして居心地がいいだろ」


 カエデが目を細めた。


「漫画とラノベ以外読んだことないでしょ」


「……まあ、お茶でも飲むか? 職員室からくすねてきたやつだから意外と悪くないぞ」


 二人は目を合わせて頷いた。俺は若干緊張して震える腕で茶を注ぐ。


「コウくんがお茶を淹れてくれるなんて、久しぶりかも」


「パックだから俺が淹れると百倍うまくなるぞ。――さて」


 二人の顔を交互に見る。雰囲気が変わったのを察したのか、頬が引き締まった。シオンもいつになく真面目な顔だ。二人は手を繋いでいるようだった。


「大事な話だ。昨夜話した通り、俺は今のままじゃいけないと思ってる」


「はい」

「うん」


 カエデが落ち着いた声音で言った。


「私たちも昨晩二人で話したの。コウの考えは理解してるつもり」


「わたしも。だから――どんな選択をしても受け入れるよ」


 胸が熱くなる。二人とは長い時間を過ごしてきた。ついに変わるときがきたのだ。


 ただし……


「その前にDIOがどちらかはっきりさせないと」


 カエデは表情を曇らせて、シオンは若干口ごもって話し始めた。


「それは……必要ないんじゃない?」


「ある。そもそも時間停止能力なんてわけわかんねえファンタジーのことを説明してもらう。まともな力じゃないだろ」


「…………」

「…………」


「それに時間停止中に俺の体にどこまでシたのかはっきりさせないと、俺は一生悶々とした日々を過ごすことになる」


「悶々としてればいいじゃない」


 カエデがぞくりとするような目つきで言い放った。性的な《・・・》ではなくて、恐怖的方向性でのぞくり(・・・)だ。


 シオンはえへへとにやついている。


「コウくんはDIOを選ぶつもりなの?」


「そうとは決まってない。ただ、選ぶうえで秘密はなくしておきいだけ」


「でもわたしたちは教えられないよ」


「かまわん」


 俺は立ち上がって机を叩き、意志を示す。


「とにかく! お前らは話を聞いてるだけでいい。俺はすでに確証を得ている。どちらがDIOか、もう分かってるも同然だ」


「そんなはずないわ」


「どうせはったりでしょ? それかあてずっぽう」


「目を閉じろ」


 二人は顔を見合わせた。


「なんで?」


「いいから閉じろ」


「もしかして肩を叩いて発表するみたいな感じ?」


「いいから閉じろ」


「はーい」


 二人は目を閉じた。どっちも可愛くて大好きな顔だ。今のうちによく観察しておこう。


 大好きな幼馴染。大好きな義妹。


 そして少しスケベなDIO。


 DIOはキス魔だ。六限の授業でキスされてからまだ一時間も経っていない。痕跡は消えていないはず。


 もしカエデがDIOだったら。もしシオンがDIOだったら。色んな可能性が脳裏をよぎるが、今は考えてはいけない。


 懐から静かにブラックライトを取り出した。二人の口元を照らし出す。


「は……?」


 理解できなかった。


 薄闇の中。

 カエデの唇は――輝いていた。

 シオンの唇も――輝いていた。


 ここまでのDIOの行動とか、二人の振る舞いとか、色んなものが頭の中を巡りに巡って、一つの可能性に辿り着いた。


「二人ともがDIOなのか……?」


 カエデとシオンは目を開いた。眩しそうにブラックライトの光を避けて、二人で目を見合わせ、言った。


「バレちゃった」

「ブラックライトなんて……」

「カエデちゃんがキスしまくるからだ」

「あなたの方がしてたわ」

「…………」

「とにかく」


 二人で一つの能力。

 二人合わせてDIO。


 そう言った。

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