第25話 昼、DIOと〇〇〇
午前中だけで俺は何度も獣のように興奮し、何度もDIOに救われた。
回数はよく覚えていない。5回までははっきりと数えていたが、そのあと3連続があってもうわけわからなくなった。
今は昼休み。
俺はたった一人文芸部室で、購買のパンをかじっている。
いつもなら誰かと飯を食っているところだが、今の俺は何気ないことでもビンビンになってしまうのだ。だから刺激がなにもない屋上で寂しく空を眺めているというわけ。
まったく厄介な催眠だ。DIOがいなかったら性犯罪で少年院行き確定だろう。
「てか、なんで学校来たんだ俺は」
休めばよかった。
あくびが漏れる。窓から降り注ぐ春の日差しがぽかぽかと温かい。こんな日はカエデかシオンを連れて公園に散歩でも行きたいところだ。
だが無念。今の俺は性の獣。呑気に外出などできるはずもない。
早退して家に帰るにしても、女子高生で溢れた廊下を歩くのは危険だ。昼休みが終わるまではここで時間を潰すとしよう。
スマホを取り出して――おっと危ない。不意に可愛い女の子の謎ダンスでも目にしようものなら衝動解放だ。スマホはやめておこう。
部室内の棚を見回して、俺にも読めそうな本があるか探したが……
ナントカ全集とかばかりで読む気がおきない。だめだ。こうなったからにはうつらうつらと眠るしかないな。
3つ並べたパイプ椅子に寝転がってぼんやりしていると。
唐突な"あの感覚"。
腹の上にパサリとノートが落ちてきた。それから鉛筆も。
まだ開封されたばかりの綺麗なノートだ。
開けば……
――お話し相手になってあげる。
DIOだ。暇を持て余す俺を見かねてこんなことをしてくれるとは……いいやつである。
一日中気になっていることがある。いい機会なのでそれを聞いてみよう。
――時間停止中に何してるのか教えてくれよ。
思えば、DIOとこんなふうに雑談をするのは初めてではないだろうか。
――何って、あなたを助けてるでしょ。
――俺の体に何してるかだよ。
――そんなの教えたら興奮しちゃうじゃん。
――かまわん。そうなったら頼んだ。
俺だけ時間停止して何が起こってるか知覚できないって、すごく損した気分だったんだ。短い一生のうち射精ってのは無限にできるもんじゃない、なら一回一回を大切にしたいだろ? なのにその快感を感じられないなんて。しかも女にしてもらってるのにだ。
時間停止中にどんなことをされたのかを教えられる…… 清楚系女子だったら絶望するところだが、あいにく俺は俺。なんでもウェルカムだ。それに相手はDIOだし。
――まずキスします。
――うん。
――それから服を脱がせてあげて、手でする、って感じ。まああと口とか、他にもいろいろ。
俺は跳び上がった。他にもいろいろ!? いろいろってなんだ。いったい何をした。
なんとか平静を取り繕って書き込む。
――うん。それで?
――終わったら、まだ元気があるか確かめて、もう一回ならもう一回、おしまいならキスしておしまい。
「おお……」
なんという征服感。イタズラされているのは俺の方なのに、こうして文章に書き起こさせると一気にセクハラしている気分になる。
――キスが好きなんだな。
――そうですけど。
――バレたくないなら目隠しとかしてもいいから、シてる最中に時を進めてほしいんだけど。
そしたら俺も快感を得ることができる。俺も感じたい。そっちばっかり……時間停止なんてずるい!
――どうしよっかな。人前じゃできないし。
――今からでいいだろ。
――え? 催眠でおかしくなるから鎮めてるのであって、普通の時にしたら普通のえっちじゃん。
――普通のえっち、したい。
“あの瞬間”がやってきて、俺は目隠しをされていた。真っ暗で何も見えない。
でも、目の前に人間がいるのを感じる。華やかな匂いもする。女だ。
「DIO…… ようやく会えたな」
「…………」
話すつもりはないらしい。声を聞いたら分かるからな。
衣擦れの音がして、彼女が近づいてくる。俺はじっと座ってそれを待った。
唇が触れ合う。
ねっとりと絡みついてくるようなキス。舌が口内に入ってきて、俺の舌をちろちろつついて煽る。
手を伸ばす。引き寄せられるように、俺の両手はDIOのおっぱいを捉えた。
「んぅ……」
揉む。この弾力……このボリューム感……どっちだ!?
分からない。カエデのものだろうか、シオンのものだろうか。どちらのもののようにも思えるし、どちらでもないようにも思える。
悔しい。幼馴染と義妹なのに、俺はおっぱいを区別することもできないのか! 日頃から揉み比べておくべきだったのだ……
キスしながら、おっぱいを揉む。
当然俺のムスコは臨戦状態に突入した。
この女に子種を注ぎ込むことしか考えられなくなる。抱きしめたい。目隠しなどはぎ取って見つめ合いたい。
まずい……
催眠に思考を乗っ取られる……
俺はパイプ椅子を突き飛ばしてDIOをテーブルの上に押し倒し、抱きしめて全身でその熱を感じ――
そして“あの感覚”。
目隠しは外されていた。
DIOもいない。
性欲は消えて、充足感だけがある。
テーブルの上に開かれたノートがあって、そこには新たな文字が書かれている。
――こうなっちゃうじゃん。
俺は鉛筆を取って書き込んだ。
――なんで時間停止するんだよ。
――催眠がかかってるあなたにハジメテを奪われたくないから。
真っ直ぐな言葉に顔が熱くなる。DIOは正常な俺と愛し合いたいと言ってくれているのだ。
――催眠を解かないとだ。
――エッチするために?
――そう。エッチするために。
――ふふ。
冗談、なのだろうか。それとも俺は本気なのか。自分でもよく分からない。
催眠を解くといっても、方法が分からない。もう一度あの催眠術師と話す必要があるだろうか。素直に教えてくれるとも思えないが。
また”あの感覚”があって、ノートに文字が増えている。
――催眠の解き方、心当たりがあるよ。
――まじか。
――今日の放課後ためしてみよっか。
さすがDIO。
――愛してるぜ。
――はいはい。どんな解き方かは、楽しみにしててね。
チャイムが鳴った。生徒たちが慌ただしく教室へ帰っていく足音がする。それがおさまるのを待って、俺は部室を出た。
五限と六限はサボると決めた。もう帰ろう。家にいれば女子生徒で興奮することもないのだから。




