地球のあなたと電波交信
僕たちが住んでるカセイの外には、チキュウという別の惑星があるらしい。
「先生、"すまほ"って何ですか?」
いつも僕にチキュウの色々な事を教えてくれるお爺さんがいる。
僕はそのお爺さんを尊敬を込めて"先生"と呼んでいる。
「スマホというのは、なんというか。地球で使われてる通信機器のことなんじゃ」
「ツウシンキキ?」
「簡単に言うと、遠くに離れていてもお話ができる魔法の板じゃよ」
「わぁ、すごい!! それって、カセイとチキュウでもできる?」
「......ああ、できるよ。きっとな」
そんな魔法の板があるなんて!!
欲しい!!
「ねえ先生!! "すまほ"ってカセイにはないの?」
「残念ながら無いのう。もう使えなくなってしまったスマホなら、ここにあるんじゃがな」
そう言って、先生はポケットから黒くて薄い板を取り出した。
「それが、すまほ? そんな小さいので本当にチキュウの人と話せるの?」
「今は無理じゃが、昔は話せた。そのおかげで、儂は命を救われたからのう。
そうじゃ、良かったらこれ、貰ってくれんかのう?」
「え、いいの!?」
「もう使えないんじゃが」
「欲しい!! ちょうだい!!」
僕は先生の方に体を全部乗り出して、すまほを欲しがった。
そんな僕の反応に先生はホホホと笑いながら、"すまほ"をくれたんだ。
「うーん。先生の言う通り、もう話せないのかなあ」
僕は早速"すまほ"を家に持って帰って、じっと観察することにした。
振っても軽く叩いても、"すまほ"は何の反応も示さない。
「チキュウのひとー、きこえますかー?」
呼びかけてみても決して返事は帰って来ない。もう諦めようかと思った矢先、ザーッと濁った音が"すまほ"から聞こえた。
その後"すまほ"がぴかりと光ったかと思えば、声が聞こえた。
『ーーーて、だれか、ーーーて』
「っ!? チキュウの人ですか!?」
『ーーーいるのかい? ーーーだれだ?』
「ぼく、カセイに住んでるダンパって言います!! あなたはチキュウに住んでるんですよね?」
『カセイーーー? 君ーーーイにいるのかい?』
段々と聞こえてくる声がはっきりしてきた。
若い男の人の声だ。
「あの!! お兄さんにチキュウについて聞きたいんです!!」
『地球について? 君は元々地球にいたんじゃないのかい?』
「? いや、僕は生まれてからずっと火星にいるけど」
『ずっと火星に? 君は火星人なのかい? いやでも言葉が通じているし。......ねえ君、今は何年だい?」
「何年って、3024年だけど」
『......そういうことか。宇宙に時間という概念は無い。何かの拍子で未来と繋がってしまってもおかしくはない』
うーん、何だかチキュウの人が言っていることはよく分からない。
よし、もう聞きたいこと聞いちゃえ!!
「あの、ぼくはいつかチキュウに行ってみたいんです!! でもみんなチキュウはもう無くなったって言うんだ」
『地球が、なくなった?』
「でもね、先生だけはチキュウは絶対あるって言ってくれて。だから、チキュウの人に聞きたいんだ!!」
僕は大きく息を吸って、大きな声で"すまほ"に向かって叫んだ。
「ぼくはチキュウにいけますか!?」
『......うん、約束するよ。君は、チキュウに行ける』






