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第38話 神様達の学生体験

「さて、これからどうするか」

 僕が考えているとフウが何かを見つけて指差した。

「お兄様あれって学校ですよね?」

「高校だな」

「私行ってみたい」

「はあ?」

(ダメですよ、若者達の学舎に猛獣を放つのと同じですよ)

『若い命がいくつも失われるだろうな』

(それに命知らずの冒険者じゃないんですよ。いくら蘇生魔法をかけたってトラウマになりますよ)

『冒険者ならいくら殺してもいいわけじゃねえけどな』

(あれ、主様にしてはまともな倫理観)


「お兄様達が何を考えているのかわかりますよ。私が人間達に迷惑をかけると思っているのでしょう?」

「いや。迷惑をかけるというか……」

「でも流石に私もこちらの世界では大人しくしてますよ」

(さっき資産家の屋敷を襲ったって白状してましたよね……)


「うーん、しかし考えてみるとフウが人間の常識を学ぶいい機会になるかもしれない」

「お兄様もね」

「僕は十分人間の常識を知っている」

(言うほどかな?)

『知った上で背いているのさ』

(主様に必要なのは常識じゃなくて道徳ですね)


「よし、わかった。簡易的な封印魔法を六重にかけるという条件で許そう」

「六重もかけたらそれはもう簡易的ではないのでは?」

 ぼやくフウは無視して僕は封印魔法で彼女を縛った。

「それじゃあ次に制服ですね。お兄様早く出してください」

「それくらい自分でやれ」

 僕が魔法を使うと服が潜入する高校の制服に変わる。

「というか制服着なくても姿消せばいいだろ」

「はあー、これだからお兄様はお兄様なんですよ」

「お兄様は蔑称じゃねえ」


 僕達が話している横でメイも僕と同じ魔法を使って制服に着替えている。

(似合ってます?)

『メイはこっちの世界では見えないようにしてるから意味ないぞ』

(いいじゃないですか。気分ですよ、気分)

 僕とメイが着替えを終えて後はフウだけなのだが何故か面倒くさそうにしている。

「近くの服屋からもらってきた方が早いんですけどね」

(どう考えても魔法使った方が早いですよ)

 フウは渋々魔法で制服に着替えた。

「似合ってますか?」

「なんで女はどいつもこいつも似合ってるか訊くんだ」

(主様も訊いていいんですよ)

『似合ってるか?』

(ぷっ、ぜーんぜん)

 僕が尋ねるとメイは吹き出して笑った。

『もう訊かない』

「お兄様とっても似合ってますね」

「……褒めても封印は解かないぞ」

「ちっ」


「次に周囲の人間に僕達がいても不審に思われないようになる魔法をかける。制服着ていれば魔法がなくてもそこまで不審には思われないだろうけどな」

(いや、フウ様と主様は行動が不審だから必要ですよ)

『僕を巻き込むな』

 魔法をかけ終えるとフウが校門をくぐった。

「それじゃあ早速遊びに行きましょう」



 生徒用の下駄箱から校舎の中に入っていく。

「なんか想像よりも静かですね」

「授業中っぽいな」


 人の気配を頼りに歩いていくと教室があった。予想通り授業中のようだ。ドアを開けて教室の中に入るが生徒も教師も僕らには気づかない。

(後ろに立って授業を見てると参観日みたいですね)

『確かに授業を受けているという気がしないな』


「お兄様と一緒に授業受けてみたいですね。ちょっと二人分の奪ってきます」

「やめろ、バカ」

 僕は急いで机と椅子を二つずつ魔法で作り出した。

「ここに座れ」

 そう言ってフウを窓際に座らせた。


『しかし授業といっても人間の知識だけなら本を読んで知ってるからな』

(学ぶようなことないですよね)

 黒板に書かれている内容を見るに今は数学の時間のようだ。丁度問題集の問題を書いて誰かに解かせようとしている。

「それじゃあこの問題を……」

 フウが真っ直ぐ手を挙げた。

「それじゃあ風華さん、前に出て答えを書いて」

(何で指されてるんですか)

『僕の魔法があまりに絶妙だからだ』


 フウに出されたのは絶対値のついた二次方程式の解の個数を答える問題だ。フウはすぐに答えを黒板に書いていく。

『正解だな』

(頭はいいんですね)

『頭はいいのに何故か脳筋なんだ。どうしてなんだろうなぁ』

 教師から正解だと褒められてフウが席に帰ってくる。

「何ですか? 人の顔ジロジロ見て」

「いや、よくできたなって」

「私、一応この世界の知識を得るために本だけは読んでおいたんです」

 フウはドヤ顔でそう言った。



 三人とも知識自体は仕入れているので授業の内容に目新しいものはなかった。そのため飽きるのも早かった。

「お兄様他のところにも行ってみません?」

「そろそろ言うと思った」

 僕とフウは揃って席を立った。

『この机と椅子は寄付してやるか』

(処分するのが面倒なのもわかりますけど数が増えてるのは騒ぎになりそうですよ)

『わかったよ。ちゃんと消す』

 しっかりと使った机と椅子を消してから教室を出た。

『面倒だな、人間社会ってのも。増えているならいいじゃないか』



「次はどこ行きましょうか。あ、外で何かやってますよ」

 窓から男子生徒達がグラウンドでサッカーをやっているのが見える。

「行ってみましょう」

 フウはそう言って窓から飛び降りた。

(アグレッシブですね。そこは高校生的というか)

『高校生は窓から飛び出さないだろ。高校生より幼いぞ』


 離れるわけにはいかないから僕も窓からフウを追いかける。グラウンドについた時にはフウはすでに体操服に着替えていた。

「ボールくださーい」

 早速フウはボールを奪いに行った。

(何で女子がいるんだとはならないんですね。流石主様の魔法)

『こんな時に褒められてもな。嫌味みたいに聞こえる』

(嫌味ですからね)


 フウはいつの間にかボールをゴール前に運んでいる。僕は嫌な予感がしてフウに注意した。

「加減しろよ。お前が本気で蹴ったら殺しちゃうからな」

「え?」

 僕の一言でフウはボールを蹴り損ねて人が死なない程度の威力のシュートになった。そのシュートはキーパーに取られてしまう。

「ゴールの前にいる人邪魔ですね。始末しておきます」

(過激!)

「フーリガンみたいな発想やめろ」

(スポーツマンシップのかけらもないフウ様にスポーツは向いてないですね)

『ああ、サッカーがボクシングに変わる前にここを去ろう』

(ボクシングに怒られますよ)

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