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孤高の彼女  作者: 赤虎
6/45

再来

1


「手続上は問題ないし、同じ名前にすることも可能だ。しかし、こんな偶然が2回も起こるのか?」

「僕にも分からない」


僕は友人の弁護士に紗希の新たな籍に関してあれこれと問い質していた。詩織が交通事故で死んで1ヶ月後に同じ年頃の女の子が現れた。そして、紗希が死んでから今度は3ヶ月後に紗希と同じ年頃の女の子が現れた。友人が訝しがるのも当然だ。


「確かに・・・まぁ、とにかく警察に行って、身元不明者として確定させるんだな。そうそう、今迄の記憶は無いんだろ?」

「・・・本人は無いと言っている」

「じゃ、身元不明者として確定する迄そんなに時間かからないだろうな」

「また全生活史健忘か・・・」

「えっ?」

「いや、14年前に紗希が家に来た時、やはり全生活史健忘だったから」

「でもな、紗希ちゃんは4歳だったから早期に順応できたけど、今回は大変だぞ。18歳で義務教育の知識が無いんだから・・・」

「分かっている。でも本人のためにも、大学は卒業させたいんだ」

「そうか・・・頑張れよ!法的なことで問題が生じたら何時でも連絡してくれ。俺とお前の仲だからな」

「ありがとう、じゃ、これで・・・」


警察署で調べてもらった結果、捜索願に該当者は無かった。医師の診断結果も全生活史健忘となり、紗希は晴れて身元不明者の地位を得た。僕はすんなり紗希の身元引受人になることができた。後は紗希の戸籍を作るだけだ。


2


1年後、紗希は高等学校卒業程度認定試験に合格し、その年度に難なく僕と同じ大学の獣医学科にも合格した。結果的に、一浪と同じタイミングで大学に入学したことになる。


「私、バイトでモデルするから!」


合格発表後、紗希は突然宣言した。


「はぁ?何でモデル?」

「だって、開業するにも猫シェルター造るにもお金が必要じゃん。原宿とか歩いていれば絶対向こうから寄ってくるよ。それに、話題性あると思うんだよね、現役の獣医学科生のモデルって」

「そんな簡単にいくか?学業と両立できるのか?」

「必ず両立させるよ。獣医師免許は最短で取りたいからね!」


と笑いながら話していた紗希は都内を徘徊した結果、1日で十数件のスカウトを得て帰ってきた。


「ウソだろ・・・」

「どう?ちょろいもんでしょ」

「・・・あのさ、これから先は三島を代理にしてくれないか?」

「三島さんって?・・・ああ、あの弁護士の!」

「そう、紗希は未成年だし、契約はきちんとしておかないとな」

「そうだね・・・おかしなとこと変な契約したら元も子もないからね」


その後、紗希がスカウトを30件以上得たところで三島が精査し6社に絞り、もっとも堅実でギャラの良かった某事務所と契約した。紗希の目論見は成功し、大学入学早々にモデルデビューすることになった。ただし、土日だけの活動ということで・・・


「三浦がさ、弁護士料いらないって」


三浦は紗希の弁護士料を辞退してきた。


「えっ、どうして?」

「今回の一件で、複数の事務所と新規に顧問弁護士契約が取れたんだって。だから紗希との契約は只でいいそうだ」

「何だか悪いよ、それ」

「本人が只でいいと言っているんだからいいじゃないか。それと、紗希の事務所からも顧問弁護士契約の依頼があったそうだけど、これは断ったそうだ」

「どうして?」

「事務所の顧問弁護士になってしまうと、紗希と事務所がトラブった時に紗希を守れなくなるとか言っていたな」

「律儀なんだね、三浦さんって・・・」

「高校の時から変わっていないからな、この点は。だから。信頼されるんだ、奴は」

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