スカウト
1
GW後、私達は淡々と日々の課題をこなしていた。大学入学時には飛び級なんて考えもしなかったのに、2年生が終わった段階で私も紗希も3年生の必須科目を8割取得。夢が現実になりつつある。だから、日々の講義も面白い。面白いから勉強も進む。これは閾を超えた者だけが享受できる特権だろう。だけど、ハプニングは起こるものだ・・・
「着信してるよ、ハチ」
「えっ、ああ・・・」
「どうして分かるんですか?」
「聞こえないの?」
「全然・・・」
奈那、人間には聞こえないんだよ・・・
「何これ!」
「どうした?」
「不審な男2人が私を探しているって・・・」
「ストーカーですか?」
「分らない・・・気持ち悪いね・・・」
「あの・・・八屋さんですか?」
不審な男2人が現れた!
「突然すみません。私、アディダスの宣伝を統括している杉山と申します」
その男は名刺とIDカード私に提示した。本物らしい。
「実は、手前共はスポーツウエア、特にジャージの更なる普及を目指しています。昨年のミスコンで八屋さんはジャージを着用し優勝なされた。八屋さんこそ手前共のイメージガールに相応しいので、是非、専属モデルになっていただきたいと・・・」
「先輩!凄いじゃないですか!」
「でも私、3年になって学業が忙しいですから・・・」
「そこを何とかお願いできませんか?」
「ちょっといいですか?」
「貴方は?」
「この子の保護者です」
「はぁ?」
何を言い出すんだ、紗希は!
「この子、単位落しまくって成績ボロボロなんですよ。だから、モデルなんて絶対無理です。ただ、この子に似たトップモデルなら知っていますよ。今、そのモデルと契約できれば、如月エリカがおまけで付いて来ますけど?」
「如月エリカってあの一流モデルの?」
「違います」
「えっ?」
「超一流モデルです」
紗希・・・
「・・・何故貴方がそのようなことを?」
「私、その事務所でバイトしているんです。だから内情を詳しく知っていますから」
「では、八屋さん似たトップモデルって誰です?」
「分らないんですか?草壁ひとみですよ」
「・・・あっ!そうか!」
「そうです。だから、事務所と交渉されてはいかがですか?」
「そうですね!ありがとうございます!如月エリカがセットであれば、手前共も申し分ありません!」
「じゃ、そういうことで・・・」
「失礼します!」
2人の男は去っていった。
「菊地先輩!何時からエリカ様の事務所でバイトしていたんですか!」
「ウソ」
「えっ?」
「全部ウソ。あいつ等を追い返すためにね」
「何だぁ~!」
紗希・・・追い返してくれてありがとう・・・でも、これからどーすんのよ!
2
撮影日・・・今日は新規の顧客だとのこと。最近、新規契約の出版社が多いからその類だと考えていたら、スタジオに三島弁護士が来ている。三島弁護士は曽根さんと一緒にミーティングスペースで何やら打合せをしていた。例の杉山さんと一緒に!
「ひとみ!こっち!エリカもね!」
スタイリストのお姉さんが呼んでいる。私達は楽屋に入った。
「何ですか、これ!」
「今日はジャージ特集!」
今日はジャージの撮影ですか?ジャージ女・・・以前、奈那達に言われた言葉が脳裏をよぎった。撮影自体は難なく終わったが、撮影終了後、三島弁護士が驚愕的事実を私達に教えてくれた。
「先方は専属契約にしたいそうだから、ギャラを通常の4倍で吹っ掛けたらその金額で契約できたよ。如月エリカと草壁ひとみを独占したかったんだね」
え~と、紗希のギャラ、つまり私のギャラは既に1回の撮影で30万円になっている。その4倍ってことは1回の撮影で120万円!いいんですかね、これで・・・何か間違っているような気が・・・でも、以前菊地教授が言っていた商品価値ってこういうことかも。
「思ったとおりだ」
「えっ?」
「紗希ちゃんもなかなかの策士だね。相手が飛び付くことを考慮してウソ付くなんて」
「自分の商品価値を最大限活かさないと」
「そうだね・・・これでアディダスの独り勝ちになるかもしれないね」
実際そうなった。短期間でアディダスがジャージのシェアを独占する状態になり、莫大な利益を得ることになった。三島弁護士は
「御免、最低でも10倍吹っ掛ければよかった・・・」
とのこと・・・




