遅刻はやっぱり許されなかったよ……
ある会社員の愚痴からでたようなお話。
かなり内容を簡略化しました。
遅刻というか、納期のお話ですけどね。
競合というものが資本主義社会にはある。
どうしたってそうなる。独占するのが許されたり、不正な手段や取り引きが許されるなら話は別だろうが……
そしてぼくの勤める会社にも競合相手がいるのだ。
競合商品を生み出しながら、互いの製品で殴り合う関係。
あるときは商品の性能を向上させ。
またあるときは商品の価格を下げて対抗する。
まるでレスリングで相手の足を取るために、じりじりとにらみ合いながら腰を低く下げ、頭をぶつけ合っているみたいな感覚。
顔と顔をつき合わせながら、それでも相手にはにこやかに対応しつつ、腹の中では握り拳を固めている。
会社勤めは大変だ。
遅刻なんか許されない。
会議に遅れるだけでも叱責される。
納期に遅れたりしたらクビを言い渡されるかもしれない。──そんな緊張感。
別段うちの会社の上司が厳しいわけでもない。どこの会社だって似たようなものだろう。
そんなある日、ある有名な弁論家が「遅刻しても成果が出せるなら問題ない」みたいなことを言ったらしい。
……そんなのは嘘だ。
いや、理屈ではなんとでも言える。
それだけの話だ。
ぼくは競合相手のある商品の新しい製品の開発に従事した。
同僚の力も借りて、新しい、画期的な商品の設計を考え出した。
しかしコストパフォーマンスが悪く、製品を作るための材料もなかなか集まらない。
「納期には間に合わせます」
ぼくは上司にそい答えていた。
ほかにどうしようがある。そう言うしかないだろう。
ところがである。
材料が集まっても製品が作れなかったのだ
商品を作る機械の発注もしていたが、それが誤作動を起こし、修正するのに時間がかかってしまったからだ。
だけど大丈夫。
商品には自信がある!
納期は数週間遅れることになってしまったが、なんとか望む商品を作って届けることができた。
そこで、商品を納品するお店に行き、納品が遅れたことを謝罪した。──そこで、その店の担当者からこんなことを言われてしまった。
「ねえ、○○さん。あなたにところの商品。新作って触れ込みだったけど、□□社さんから、そっくり同じ物が一月前に出てるんだけど」
「えっ、まさか!」
競合会社の新作商品。その内容は、自分たちの作った物とまったく同じ性能だったのだ。
違うのはデザインだけ。
たった一月の違い、それも納品が遅れただけで、我が社の製品は二番煎じだと言われるはめになってしまった。
遅刻は──遅れることは、言い訳ができない場合もある。
それを思い知った。
──遅刻はやっぱり許されなかったよ……
お読みいただきありがとうございます。
日本は時間に厳しいですね。外国は割と遅れても寛容な部分があります。
1時間の遅刻とか平気だとか、本当ですかね……