表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デミデビル  作者: 小夜
5/8

デミデビル4

高校生になった黒崎凛くろさきりん

早くに両親を亡くし、親戚でもあり、親代わりの瑠奈るなと暮らしている。


高校の生活にも慣れてきた6月のある日。休日の朝にふと目覚めると、隣で見知らぬ男が寝ていた。

悲鳴を上げて瑠奈を呼んだが、瑠奈から、凛自身が悪魔の末裔であることを知る。

さらに今後はユークと呼ばれるその男を、凛の護衛にするという。

ユークは瑠奈と昔からの知り合いらしいが・・・・。


家中に響いた叫び声は人を起こすのに十分だった。


その場で立ち尽くした私と、もぞもぞと動く人物。

「………う、っせえな」


頭を抱えて出てきたそいつは見たこともない長髪の男。体調が優れないのか、顔色が悪い。


バタバタと階段を駆け上がる音が鳴り、私の部屋のドアが勢いよく開けられた。


「なになになに⁈ 大声出して!」


「なんで知らん男が私のベットに居るの!」


私がギャーギャーわめいたことで頭を押さえ、さらにしかめっ面になる。


「二日酔いに大声は止めてくれ……」


よくよく見ると、顔が整っている。ただ全くと言っていいほど見覚えがない。



「あー…、姿が違うからか」

男が小さくつぶやく。何と言ったか聞き取れなかったが、瑠奈が私と男の間に入った。


「簡単に説明すると、こいつはアタシの仲間兼、幼馴染の悠だよ」


「???」


悠とは明らかに顔と髪、そして何と言っても雰囲気が違う。


爽やか系学生の悠。一重で笑顔が多く話しかけやすい。茶髪混じりの短いくせっ毛。


男女問わず万人受けするような愛嬌があった。



一方、大人の色気が凄い成人男。綺麗な二重と切れ長の目でかなりの美形だが近寄りがたい。黒くて長いストレート髪。無愛想な表情は他人を見下しているように見える。


どこが同一人物?


「詳しく話すからリビングおいで」



瑠奈は男にりんごジュース、私にアイスコーヒーを用意してくれていた。


「改めて紹介するよ、こいつはユーク。悪魔だ」


ユークという男は瑠奈の隣に座り、両手でカップを持ってジュースをちびちびと飲んでいる。



私は反対側にまわり込んで座る。片手でグラスを鷲掴んで一気に飲み干した。


口元から溢れそうな水分を手の甲で乱暴に拭う。


「あくま。…続けて」



「ひと言で悪魔と言っても、大きく分けて2種類ある。ひとつは人間と共存を望む皆魔(かいま)。基本的に皆魔は人間に干渉しない。一方、人肉を喰らう蝕魔(しょくま)。とはいえ、これは理想であって、現実は判別が難しいのさ」



ただの高校生として生きてきた私には突拍子もない話。


だが、不思議と落ち着いて聞いていられる。他人事だから?



「皆魔の中でも人間を愛し、裏切り者と(しいた)げられた一族。彼らは悪魔でありながら同族を殺せる力を持つ」



理解させる、というより、ただ知識を披露しているだけのよう。



そういえば瑠奈との出会いは私が小学生の頃。6年前だったか。


母方の親戚で30歳過ぎのはず。だが私が知る限り、彼女は歳を()()()()()()



「一族の末裔をあらゆる危機から護るためにアタシたちが居る」

瑠奈が頬杖をついて私を見る。


「凛ーーあんたをね」

「私?」



*****



悪魔と言えば、人肉を食らうだとか、魂と引き換えに願いを叶えてくれる怪物のイメージがある。


少なくとも、目の前の瑠奈は悪魔のイメージにありがちな角や翼はないし、人間と同じ食事。



「私に危機が?」


「あんたは16になって覚醒段階に入ったんだよ。この時期は無防備で、特に狙われやすい」


何を言ってるのか意味が分からない。私をおちょくっているとか?

そう思うと笑えてくる。



「そう。・・・・おとぎ話はこれで終わり?」


「分からなくてもいい。ただし、これから護衛として必ずユークを連れてくこと」


「はいはい」


喉が乾いて仕方ない。結露で濡れた紙パックからコーヒーを注ぐ。

一気に流し込み、グラスをシンクに置いた。


そのままリビングを後にしようと扉のドアノブに手を掛けた瞬間。



「空いてる部屋使いな」



ユークという男に放った瑠奈の爆弾発言。


悠になりすましていたとは言え、夜這いしてきた初対面の男とひとつ屋根の下?


「私の部屋には絶対入るなってそいつに言っといて!」

バタン、と聞こえるくらいの音を立てて、扉を力任せに閉める。


平穏に過ごせる気がしない…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ